約束
普通の会社員、普通の家、普通の生活。
何不自由なく過ごしていた『僕』
会社の転勤が決まって長く住み着いていた家の大掃除をやっていると
大きなダンボールが押入れの隅から出てきた。
ーー何が入っているのか
もう、そのダンボールの中身すら覚えていなかった僕は自然とダンボールの蓋を開けていた。
入っていたのは学生時代の思い出の品たち
小学生の頃に書いた作文
中学生の頃に作った作品
高校生の時に使っていた携帯
懐かしさのあまり、僕は引越しの準備を忘れダンボールの中のものを次々に出しては見て懐かしむ。
ダンボールのそこに一枚の手紙が入っていた。
宛先は書かれていない。
送り主は『僕』
誰かに送ろうとしたラブレターか?
僕は僕の書いた手紙を広げる。
そこに書かれてあったのは、今日と同じ9月8日。
『君が僕を嫌いになっても、僕は君が好き』
『僕は自分の言葉を覆すような大人にはならない』
『離れたとしても、僕は僕の生き方を曲げることはしない』
乱暴に、でも言葉を選びながら書かれたその手紙を読んで僕は君のことを思い出す。
10年前の僕へ。
きっとこれから先、ありふれた毎日を過ごすだろうけど
君が決めたことは今も達成され続けているよ。