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β  作者: みち木遊
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β No.001

 こんにちは、みち木遊です。

 今回は僕が好きな特撮みたいなストーリーを意識して書かせていただきました。

 まだまだな文章能力ですが最後までお付き合い、お願いいたします。

  プロロ-グ


 古海ふるみ 宗司そうじはただの人間だ。

 日本や世界を旅し、拠点を持たず、各地でボランティア活動を行う変わり者なだけで、そういうもの以外は大して他とは変わりなかった。

 そんな彼が一年ぶりに日本に帰ってきて、東京を転々としていた時のことだった。

 日雇いのバイトの帰り、野宿できそうな場所を探していると、真っ黒な影が目の前に立っていた。

 まるで、地面から生えるようにその姿を現したその影は、彼の元に近づいて来る。

 そして、街灯の下にその影が照らされたとき、その影が人間ではないと気付いた。

 その姿は黒く、まるで昆虫の外骨格のように嫌なテカリがあり、口は横に開き、そこから粘液がぽたぽたと垂れていた。

 腕はカニのハサミのような形をしていた。

 その体から考えて、かなりの大きさだった。

 そんな姿をした怪物と形容すべき存在は、古海の元へ、急に走り出し、彼の心臓を巨大なハサミのような物体で彼のからだを貫いた。

 そして、すぐに、そのハサミを抜かれ、古海は血を流し、力なく倒れた。

 痛みで呻く事すら忘れ、うずくまっていると、その影が火花を上げて、吹っ飛ぶのを視界の端で見た。

 古海と、怪物の間に立つのは、全身に蔦を巻き付けたような姿の怪物が一体。

 その蔦の怪人はハサミの怪物の全身に巻き付いた蔦の一本を操り、貫き、引き裂いた。

 一瞬で起こったこの光景に理解もできず、視界が暗くなり始めるのを感じていると、蔦の怪人はこちらに歩み寄り、古海を抱き上げると、

 「お前は…、やはりか。お前は、生きろ」

 と、告げ、蔦の怪人は自分の片手の静脈に位置する部分を切り、血を流し始めた。

 そして、その血を古海の傷口に流し込んだ。

 すると、全身が一瞬にして焼けるように熱くなった。

 「…うぐっ、うあああああああああああ!?」

 あまりの熱さに体を弓なりに逸らしながら古海は叫んだ。

 蔦の怪物は彼のからだを地面にそっと置き、

 「我慢しろ、生きたいのなら」

 と告げて、どこかに行ってしまった。

 だが、古海にはそんなことにとやかく言う暇も余裕もなかった。

 全身青厚さは激痛に変わり、貫かれた傷口が蒸発するのではないかという句たらいに熱くなり、視界が赤くなる。

 自分に何が起こっているのかもわからず、ただ、蔦の怪物の言った、生きたいのなら我慢する、というのを実行するしかなかった。

 「うぐあぁぁあああああぁああああああ、おおおおおおおおぉぉぉぉおおおぉおおおッ!!」

 雄叫びにも似た叫び声をあげ、彼の意識は途絶えた。



  一話 「始まりと変身の初陣」


 ぺちぺち、ぺちぺち。

 誰かが古海の頬を叩いている、そんな感覚に彼は目を覚ました。

 いつの間にかに閉じていた瞼を開くとそこには一人の少女がいた。

 「あ、生きてた」

 少女は少し失礼なことを呟いた。

 (何かいきなり起こして、失礼なこと言うとか、最近の日本人の女の子は変なのが多いのかなぁ)

 などと、自分の居ない間に変わってしまった日本を憂いながら、

 「…君は?」

 と、とりあえず、状況を知る前に古海は旅で身に付いてしまった癖で少女の名前を尋ねた。

 「わ、私ですか?私は新田にいだエミと言います」

 驚いたように彼女はそう答えた。

 「そっか、エミちゃんね。俺は古海宗次、よろしく」

 古海はその場にガバッと上半身を起こし彼女に握手を求めると、

 「は、はい、よろしくお願いしま…す?」

 と、困惑気味に握手をしてくれた。

 古海は握手している手をぶんぶんと振っていると、頭に一つのことが浮かんだ。

 その瞬間、古海は振るのを辞め、あたりをきょろきょろと見回すと手を離す。

 (アレ、俺、なんで公園のベンチに寝てたんだ?)

 そう、彼は握手している最中に新田の後ろに見えた遊具に気付き、そこからあたりを見渡して、そんな疑問を浮かべたのだ。

 そして、古海は記憶を辿り、思い出し、その場から度跳ねるように、起き上がり、ベンチの前に立って、あたりを見回す。

 「そうだ、そううだよ!俺は怪物にあって、怪物に刺されて…」

 そういって、刺された腹をまさぐるように触ると、

 「…あれ?」

 傷がなかった。

 目視で探そうと服をめくっても服に大量の地でふちどりされている穴が開いているだけで傷痕一つも見つからなかった。

 だが、服に穴が開いているのは記憶が事実だという事を示している確かなモノだった。

 「どうしてだ…?」

 古海は顎に手を当て考える。

 確かに刺されて痛かった覚えもあるし、怪物に抱えられてそいつの血を傷口に流し込まれたことも、その後、アホみたいに体が熱くなったことも。

 それに、「我慢しろ、生きたいなら」、その声も覚えている。

 では、あれは何だったのか。

 カニみたいな化け物も蔦が巻きついた怪物も夢では無ければ何だったのか?

 「う~ん…、あ~?」

 唸りながら、考えるも答えが出ず、ため息を吐いた。

 (もう考えるのは一旦、やめにしよう)

 そう思い、古海はパシパシと両頬を叩き、グニっと、両頬をさらにつねった。

 「うっはー、いって―」

 そういって、背伸びをすると、新田の方に向き、

 「何かゴメンね、悪いんだけど、今の時間教えてくれない?」

 と、笑顔で聞いた。

 「…え、あっ、じ、時間ですか?……今は六時三十二分です」

 古海に困惑と不信感を覚えながら、新田は答えた。

 それはそうだ。

 古海の中では流れとしてある行動だが、それは古海の中での話であり、端から見ればただのヤバいやつなのだから。

 いきなり、怪物が何のと言い出し、飛び起き、あたりを見回し、考え出した挙句に、頬を叩いて、つねって、痛いと言って、笑顔で時間を訊いてくれば、もうそれはヤバい奴だろう。

 だが、旅のせいか、元々なのか、古海は穴の開いた血染めの服のまま、

 「ありがとね、エミちゃん」

 と言って、何も気にせず、去って行こうと歩き始めた。

 それに、新田は、

 「ちょいちょい、ちょい、ちょい待って」

 と、急いで古海の後を追い、彼の襟の後ろをつかみ足を止めさせた。

 「何すんだよ」

 古海は不機嫌そうに新田の顔を見る。

 「いや、何すんだ、じゃないでしょ。服、服を見て」

 そう古海は言われ、服を見ると、納得したようにうなずいて、

 「あ、そうか、血がついてるのはさすがにヤバいか」

 と、呑気な声で言って、服を脱いだ。

 そして、その場を立ち去ろうとした。

 「おい」

 その行動に、新田は肩を掴み止める。

 「今度はなんだよ」

 と、また不機嫌そうに新田の顔を見る。

 「あんたは変質者ですか?」

 と、怒りのこもった声でそういうと、また、古海は何かに築いたようにうなずいたが、何かを思い出したかのような仕草を見せるとしょんぼりとした顔で、

 「替えの服、日本でまだ買ってない」

 と、言った。

 「日本でって、…あ、外日本に帰国したばっかの人だったのか。それなら、スーツケースか何かに着替え入ってるはずでしょ?それ着て下さい」

 何となく古海が日本に帰ってきたばっかりの旅行者だという事を察し、そう言うと、

 「スーツケース?そんなものもってないよ。俺、家とかも持ってないし、そもそも必要ないし」

 と、キョトンと、当たり前のようにぶっ飛んだことを言った。

 「は?」

 新田は当然のようにぽかんと口を開けた。

 「俺、お金五千円くらいとその時に身に付けている服と…あ、これ、このポーチ!これしか持ってないよ」

 ベンチに枕替わりだろうか、頭に敷いて、そのままそこに放置したままだったボロボロのポーチをベンチに拾いに行って戻って、それを新田に見せた。

 彼のその表情は自信満々と言ったもので、むしろ清々しいほどだった。

 「マジですか…、ちょっとそこで待っててください、後、警察に見つからないで下さい」

 頭を抱えて、新田はため息を吐いてから、そう言い残し、その場から走ってどこから行ってしまった。

 「わかったよー…。んー、今の女の子はちょっと変わってるなぁー」

 と、誰が一番変わっているのやらと突っ込みたくなるような事を呟きながら、古海は警察に見つかるなと言われたと売りに、すぐそこにあった公衆便所に足を運んだ。

 

 数十分後。

 「古海さーん!」

 公園に戻って来た新田は古海を大声で呼んだ。

 近所迷惑もいいところだが、これは致し方の無い事だった。

 「はいよー」

 呑気極まりない声で、古海は公衆便所から顔を出すと、新田は猛ダッシュでそこに向かい、一つの紙袋を古海に差し出した。

 「これは?」

 古海の問いに、

 「上下洋服一式です」

 と答えた。

 古海は、それに驚き、袋の中を見ると、本当に新品のズボンとシャツが入っていたので、更に古海は驚いた。

 「まじかー、やった!」

 子供の用にはしゃぐ古海に新田は、

 「早く着てくださいっ!!」

 と怒鳴り、古海を公衆トイレに押し込んだ。

 そして、少し待つと、

 「どうかな」

 と、着替えた古海がが出てきた。

 「いいんじゃないんですか?」

 新田がそう答えると、

 「あ、そうだ、お金払うよ。元とドルと円があるけど、どれで返す?」

 と、それまたボロボロのポーチの中から財布を出した。

 (なんで、財布は言ったポーチをさっき忘れかけてたんだろう)

 と、さっきの行動を思い出して、思いながら、

 「別にお金とはいらないですよ。あと、日本は円でしか意味がないので、支払いをしようとするのであれば円でお願いします」

 と、笑って、財布を彼に押し返すように、お金を取り出させまいと手を止めた。

 「いいの?」

 古海はそう訊くと、

 「いいです」

 と返し、

 「じゃ、じゃあ、ありがとう」

 というと、

 「どういたしまして」

 と返した。

 それに、古海は、

 「変な子と思ってたけど、普通に礼儀正しい子なんだね」

 と言った。

 「誰が変な子ですか」

 さすがにそれは腹が立ったのか、古海にドスの利いた声で詰め寄った。

 それに古海はヤバいと思ったらしく、

 「ご、ゴメン」

 と謝った。

 新田は古海に悪気がなかったとという事が何となくわかり、嘆息した。

 「はぁ。…あ、そろそろ講義に行かなきゃ」

 新田はさっと腕時計を見て、そう言った。

 「もしかして、大学生とか?」

 古海が何となく聞くと、

 「はい、大学生なんです、私」

 と、新田は軽快な口調で返す。

 そして、新田は、

「そうだ、もしよければ、講義終わってからになりますけど、お話伺ってもいいですか?」

 と、何かを思いついたように、脈絡もなくそう訊いてきた。

 実際、新田自身も、いきなり思い付いたことを言っていたので、そこまでちゃんとした筋は通ってはいなかった。

 だが、

 「別にいいよ」

 と、古海は軽く二つ返事で了承した。

 (さすが初対面からの変人プリを発揮させた男だなぁ)

 と、変な納得を得て、新田は

 「それじゃ、三時半にまたこの公園に来るので、またここで会いましょう。絶対に守ってくださいね」

 と言って、駆け足で、そこを去った。

 その背中を見守りながら、古海は、

 「面白い子だなぁ」

 と、変わり者のシンパシーを感じていた。


 時間は過ぎて、午後三時半頃。

 「古海さーん」

 いつぞやとは違う感じで、新田は例の公園で古海を探していた。

 「はいよー」

 古海の返事が聞こえ、そこへ顔を向けると、

 小学生くらいの子供たちとサッカーをして遊んでいた。

 それにめっちゃくちゃ上手い。

 それは素人目からもわかるくらいだった。

 古海はリフティングしながら、新田の向かって、彼女の前に来た時に、後ろに目がついてるんじゃないかと思うくらいの正確さで、かかとで、子供たちの元に、誰一人に当たることなく地面に落とした。

 「…サッカー好きなんすね」

 「うん、よく旅先で、子供と遊ぶ奴だし」

 「そうですか…」

 適当な言葉を交わし、新井田は改める様に両手を合わせ、

 「それじゃ、ちょっと場所変えましょう?」

 と、古海の腕をつかみ、スタスタと歩き出した。

 「おわわ」

 と、情けない声を上げて、古海は、新田に連れて行かれるままだった。


 「すみません、こんなところまで連れてきちゃって」

 新田に連れられ、古海が連れて来られたのは公園から少し離れた呉服屋の二階にある和室だった。

 「ここって…」

 古海がここってどこなんだ、そう訊くより前に、

 「ここは私のバイト先の呉服屋の店長の自宅の一室です」

 と、なんとも『の』が多いわかりやすい答えを新田は返した。

 「店長さん大丈夫なの?」

 「店長さんは私に弱いんで貸してって、講義が終わってすぐに電話で聞いたら、二つ返事で貸してくれました」

 「店長さん、かわいそうじゃない?」

 「いいんですよ、店長なんで」

 古海の質問に、新田は強引な答えを示した。

 (店長さん、どんな人なんだろうか)

 古海はそう思い、店長と言われる人物に、不安と期待を抱いた。

 そんな古海の考えていることなど知らない新田は、畳に適当に座り、彼女の正面当たりを畳を古海を見ながらバンバンと叩き、「どうぞ」と言った。

 その雑極まりない誘導のされ方に古海はさすがに引いて、「じゃぁ、…失礼します」、と距離感を開けるように敬語で答え、叩いたところあたりに適当に座った。

 そして、訪れた謎の沈黙。

 話す内容はあるのに打ち出し方がわからない新田と、そもそもなんでこんなところにいるのかさえ理由がわからない古海の閉口は続く。

 下の呉服屋の店長と思わしき男の「いらっしゃーい」という間の抜けた声が聞こえる。

 一向に話が始まらない。

 そんなことを二人は思い始めていた。

 いつ、だれが、どんなことを言ってこの沈黙を打破するのか、その一点だけを二人は考えていた。

 言葉はなくとも、初対面の間であろうとも、それは同じだった。

 そして、それに耐えかね、口を開いたのは新田だった。

 「…あの、聞きたいことがあってお呼びしたんです。もしよければ答えていただけませんか?」

 そう言って、新田は息を吸い込み、

 「昨日、何かあったんですか?」

 と、聞いた。

 古海はただ頷き、答える。

 「怪物を見た。エミちゃんはなにか知ってる、俺が見た怪物の事?」

 そして、質問する。

 「かいぶつ、…怪物ですか。それはわからないですけど、古海さんが起きる前にすっごいイケメンがベンチの前に立ってて、私のことに気付いたら、『コイツを頼む』って言われました」

 その答えにはならないが新田は彼に関するであろう情報を提示した。

 「イケメンってことは、男だよなぁ…。知らないなぁ」

 むぅ、と思い当たる人物を探しながら、古海は唸った。

 「いや、今は無理なら別にいいんです、いきなり連れてきて聞いてるわけなんですから、さすがに今すぐって強要はしませんよ」

 そんな古海を見て、新田はそう言った。

 「…そっか」

 静かに古海はそう答えた。

 なんとも歯切れの悪い思考のの塞き止められ方をされ、完全に整理がついていない頭の中に彼は嫌悪感を覚えていた。

 切り替えればいい話なのだが、怪物の姿が頭に焼き付いて、切り替えることを阻んでいた。

 そして――、

 (男、か。何か関係があるといいな)

 そう思った。

 そんな時、新田は、

 「あの、古海さん。古海さんって、何者なんですか?」

 そもそもと言ったことを、古海にぶつけた。

 古海は、その質問に笑顔でこう答えた。

 「俺は旅人だよ。携帯も住所も持たないその日暮らしの旅人だ」

 それが、ある意味で、古海と新田の出会いとなったのだった。


 少し経ち、きょろきょろと古海はあたりを見回し始めた。

 「どうしたんですか?」

 新田は 挙動不審な古海に尋ねると、

 「いやー、そろそろ、寝床探さないとなぁって」

 と、古海の感覚でしか伝わらないことを言った。

 そもそも、一般的には寝床を探すというのはあまり耳にしない単語なのだ。

 そんな事を耳にして、普通のそれに現代の住居あって当たり前と豪語するような暮らしに慣れている人間であれば、訳が分からず固まるのが大体だろう。

 そのいい例が、新田だった。

 「え」

 古海のその言葉に唖然とし、思考が一旦、赤信号を出し、停止した。

 「あの、いま、何ておっしゃいました?」

 新田は、自分の耳を疑って、もう一度聞き返した。

 すると、古海はもう一度、

 「寝床を探そうかなぁーって」

 と、言った。

 その、新田は思い出した。

 古海は、住所不安定なその日暮らしの人間なのだと。

 「あー」

 新田は気付いたその途端、落胆した。

 (何でこの人と関わり持ったんだろう…)

 そんな後悔が頭をよぎる。

 最初は興味本位だった。

 体から血を流して気絶している男とそれをただ見守るように立ち尽くしていた男、それが何だったのか、そして、傷もないのに穴が開き、血で染められた服を着ている奇妙な男に何があったのか、タダそれが知りたかった。

 昔から世話焼きと心配症をこじらせたような性格で、怪我や道に迷っている人を見るとどうしても、関わりたくなってしまう癖のようなものがあった。

 そのお陰で、何度も誘拐されかけたこともあるし、見知らぬ人を勝手に家に上げて怪我の応急処置をしては親に怒られたという事もある。

 それに、何度も駅のホームで自殺志願者を止め、警察に表彰されている。

 そんな経歴の彼女は、ただ、それこそ、興味と心配、その二つの善意にも似た感情で、彼とかかわりを持ち、彼の話を聞き、しかるべき機関に連絡しようとこの家に上げたのが全ての経緯だった。

 だが、今考えてみれば、それは一時的な衝動のような気がしていた。

 だから、新田がため息を吐く。

 関わりをもってしまったが故に、彼女の世話焼きな部分が働いてしまったのだ。

 そして、彼女は言った。

 「買い物に付き合って下さい、そして、今日は家に泊まっていってください」

 ある意味、、その言葉は新田の古海への敵対心や疑いの感情がないという安心感の表れでもあったが、古海は、それを理解しているのか、いないのか、

 「え、いいの?女の子の部屋に男を上げるとかちょっと女の子としてヤバいんじゃないの?」

 一旦、煽りにも聞こえるがその口調はとても、不安そうに、新田のことを心配しだした。

 (まぁ、逢って少ししか経ってないけど、こういうところが好感が持てるんだろうなぁ…。でも、やっぱ何かむかつく言い方だな)

 と、彼女は口から出そうだった言葉を飲み込み、代わりに、

 「いいですよ、今日限りになりますけどね。困ってるんでしたら、ほっときませんよ」

 と、笑顔を返した。


 という事で古海と新田は買い物に商店街まで足を運んでいた。

 基本的に古海は新田の荷物持ちという役割で、それなりにモノを買っていた。

 すると、商店街の通りの出口あたりから、「きゃあああああ」という悲鳴と大勢の人々が走って、入り口側へと走っていた。

 新田はソレに、

 「古海さん、行きましょう」

 そう声を掛ける。

 古海はその声に反応して、新田にすべての荷物を持たせた。

 「えっ!?」

 新田は驚きに声を上げたが、古海はもはや走り出していて、後ろを少しだけ向いたと思えば、

 「エミちゃん、君は逃げたほうが良いから、先に行ってくれ、俺は後から逃げるから!!」

 と、言い残し走り去っていった。

 一人残された新田は、

 「えぇえええええええ!?」

 と叫び、入り口側へと振り返り、逃げ始めた。


 古海は悲鳴の方向へ、ただ走っていくとそこには見覚えがあるような、ないようなものがそこにはいた。

 それはカニのような身体の比に対してはかなり大きいハサミを持った甲殻類のような甲羅を体に張り付けた怪物だった。

 そして、古海はその姿を見て思い出す。

 「あれは、俺を刺した…、でも、蔦の怪物にやられたはず…」

 だが、そうはいっても目の前にいるのは正真正銘、古海を殺そうとした、それだった。

 それは逃げ遅れた人々を襲おうと追いかけているようにも見える。

 古海はそれならば、とその怪物に飛び掛かり、抱き着いた。

 「このッ…!」

 力量など恐怖など、もはや古海にはあまり気にならなかった。

 ただ、他人を守りたかった。

 だが、足止めにはなっても、そんなの一瞬だけだった。

 「グギャギャ、ッギャッギャ!」

 叫び声にも似た鳴き声を上げ、怪物は古海を振り払う。

 古海は二メートル近くの距離を勢いよく飛ばされ、勢い余ってさらに一メートルほど路上を転がった。

 「うぐっ…」

 全身に痛みが迸るが、古海はふたたび立ち上がり、今度は誰かが逃げる時にしてたであろう日傘を閉じ、

 「おおおおおおおおおおおっ!!」

 雄たけびを上げて、その怪物に助走を付けて、叩き付けた。

 バシン!!

 そんな大きな音が鳴り響いた。

 だが、怪物は足を止めて、古海の方に向くだけだった。

 それでもと、古海は何度も傘を叩き付ける。

 バシン、バシン、バシン、バシン…。

 怪物は、それにピクリとも反応せず、首をかしげるだけだった。

 古海は、もはや無我夢中だった。

 周りにはまだ逃げ送れた人たちがいる。

 早く逃げてくれと古海はただ願った。

 そして、苦し紛れに傘の先端で怪物の身体を刺すと。

 グサ・・・。

 そんな、静かな音が聞こえ、手ごたえを感じた。

 古海は傘の先端あたりを見ると、怪物の旗の関節の蛇腹になった部分に傘のされが刺さり、そこから紫色の液体が流れ出ていた。

 古海はソレに驚き、引き抜くと、怪物は後ろに下がりながら、傷口を抑え、こちらを睨み、

 「グゥラアアアアアアアッ!!」

 と、遠吠えのような鳴き声を上げて、古海に向かって、走り出た。

 古海は怪物から逃げようと走り出す。

 そして運よく、古海は鍵の掛かっていない自転車を見つけ、ソレに乗った。

 (ゴメン、ちゃんと自転車これ返すからね…)

 頭の中でそう謝罪しながら、怪物との生死を駆けた逃走劇が始まった。


 「はぁはぁ、クッ、まだ追いかけてくる…ッ」

 怪物との距離を測りながら、全力で古海は自転車を漕ぐ。

 だが、体力というのは思ったよりは持たないモノで、限界がその速度を落とす。

 その度に怪物との距離が近付き、とうとう、古海の身体が、怪物のハサミに摘ままれるように拘束され、自転車ごと体を吹き飛ばされた。

 「うわぁああああああぁあああああ!」

 そんな叫び声と共に宙を舞い、古海はどこかの高架下に飛ばされた。

 ゴロゴロと地面をまた転がり、全身に走る痛みに蹲る。

 声すらも出ない。

 ガチガチ、とすぐそこで怪物の足跡と思わしき足音が聞こえる。

 状況から考えて、古海は周りに人がいないことを察し、思った。

 (こんな簡単にで死んでいいのか…?)

 その瞬間、脳内に声が響いた。

 『戦いたいか?』

 その声が自分の声ではなく、知らない、冷たく、恐ろしい声だった。

 そして、その声が再び言う。

 『戦いたいか?』

 その声はさっきより少し大きくなっていた。

 そして、また。

 『戦いたいか?』

 その声はどんどん大きくなっている。

 そして、古海はその声にこたえるように叫んだ。

 死にたくないという死への恐怖と、こんなところで死にたくないという未練が彼の心に火をつけた。

 「戦ってやる!怪物が何だ、俺はこんなところで、倒れてられないんだあぁぁぁあああああっ!!」

 そして、どこから湧いたのかわからない力が体を起こし、立ち上がらせると、全身が真っ白に燃え上がった。

 その光なのか炎なのか、判断のつかない謎の白い光の中で古海はその姿を変えた。

 その姿は怪物と似ていたが、それこそ、人型と言っていいほど特徴がなかった。

 ただ、白い甲殻のような物を体に身に付けており、口は人のように開くが、その歯は悪魔のようにギザギザと鋭く光っていた。

 そして、手には以上に発達した爪があり、古海は光り終えた瞬間に自分の手を見て、まずそれに驚いた。

 変わってしまった自分の姿に戸惑いを覚えるも古海は、目の前にいるカニの怪物を思い出し、それに向かって走り出す。

 すると、人間ではおそらく出せないであろう速度が出て、勢い余り、古海は怪物にタックルした。

 「ギュラウ!?」

 古海は、運よく転ばずに済んだが、怪物は、変な声を上げながら、吹っ飛び地面を転がった。

 「何だよ、これ…」

 古海は驚きながらも、この力に感心する。

 「グギギギ…」

 怪物は呻きながら立ち上がると、再びこちらに走って向かてきた。

 「…やるしかないよな…」

 古海はそう呟き、身構える。

 そして、怪物が彼の射程圏内に入った瞬間。

 「おうりゃっ!!」

 と、後ろ回し蹴りを見回し、そのまま、回し蹴り、と連続して蹴る。

 そして、よろめき後ろへ下がった怪物に、更に駆け寄り、パンチを連続して、叩き込む。

 この姿になる前ならば、物を使ってでも入らなかったダメージが、この姿になると、素手で面白いほどダメージを与えることが出来た。

 怪物は本来なら異常な速度で放たれているであろう大きなハサミによる攻撃も時には受け流し、時には避け、確実に古海は攻撃を叩き込む。

 戦闘技術自体、古海は長い旅である程度培っていたというのもあり、姿を変え強化された力により、怪物にすら通用するものにそれは昇華されていた。

 そして、完全に流れは古海が握り、怪物が動けなくなり始めた瞬間、古海の本能が彼の行動権を奪い、右手に意識を集中させた。

 その瞬間、右手の周りの空間が微妙に歪み始め、彼の足は怪物に向かって走り出し、その右手が作った拳をその勢いのまま、怪物に打ち込んだ。

 怪物の拳が当たった部分の空間がいい気に歪みねじれ、ミシミシとその体から嫌な音を放ち、吹っ飛んだ。

 そして、遅れたかのように、怪物の消えた空間が元に戻ると、怪物の身体が液体となり、一瞬にして、蒸発した。

 古海はしばらくその後を見ていると、体から力が抜けた。

 その瞬間体が元に戻り、その場に倒れ込んだ。


 新田は、逃げた後、古海を心配し、彼の姿を探していると、壊れた自転車を高架橋の下あたりで見つけ、もしやと思い、そこへと向かった。

 すると、高架橋の下で、古海が倒れているのを見つけた。

 「古海さん、古海さん!」

 そう言って、古海のからだを抱きかかえる。

 そして、古海が気絶していることに気付き、ほっと胸をなでおろす。

 新田は安堵したまま、救急車を呼んだ。

 その後、すぐ、警察と救急隊が来て、新田は事情聴取に警察に、古海は、そのまま病院に運ばれた。

 そして、その一連を見ていた男が一人いた。

 彼は高架下の怪物が消えた場所に立ち、呟く。

 「…半獣半人どっちつかずのtype‐β、か」

 その男はそう言って、そこから立ち去った。

 彼が新田が古海を見つけた際にあった男であり、古海を『グリザリオ』というある魔術師が生み出した怪物に変えた張本人である事をまだ誰もしらない。

 こんにちは、みち木遊です。

 いかがだったでしょうか?

 割と長いので時間があるときに読んでほしいものではありますが、結構趣味をガンガン入れて書いているので、最後まで読んでくれると本当にうれしいです。

 まだ一話という事なのでまだ細かいことはいう事が出来ませんが、今回引いた伏線は二話三話で回収します。

 これも、好きな特撮を意識して、意図的にやっていることで、子供も楽しめるというのを考えております。

 例えば、主人公の古海は気さくな性格であったり、ヒロインの新田は人をほっておけない性格だったりと、結構人助けや、そういうものに向いている人たちが中心に置いたりしています。

 また敵キャラも、怪物とだけ形容してみたりといろいろやっています。

 今後、不定期ではありますが、このくらいの容量を投稿していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 ではまた次回、お会いしましょう。

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