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セイギのミカタ

作者: 夜行達界


 あー、眠い。

 はじめましてコンニチハ。貴方が人間様ですカ?

 どうもわたくし、セイギのミカタでございます。

 暇で暇でしょうがないんで少し付き合え。









 ありゃま驚いてるね。

 当然っちゃあ当然のリアクションありがとう。繰り返すけど、なんせ暇で暇でしょうがないから、繰り返しでもおもしろい。

 流石に何千何万何億何兆何垓回と繰り返されたら飽きるけど。

 でもまだそこまで末期じゃないんでだいじょーぶ。

 そんなことよりお話しません? 僕ちん退屈で死んじゃいそうなの。死因に退屈死なんてあったっけ?

 おっ、マジかいホントにいいの? やったぜ君はいい奴だ。じゃあ何から話そうか、そうだなお前の話が聞いてみたい。

 お前がどんな人間なのか、お前はどんな人生だったのか、お前がどれだけくだらない存在なのかオレは聞きたい。

 ははは、怒るな怒るな。そんなに目くじら立てることじゃないだろ。だって実際その通りだろ?

 朝起きて、飯食って、学校行って、勉強して、部活して、家に帰って、風呂入って、飯食って、ごろごろして、ぐーすか寝る。

 惰性で続ける人生に、いったいどんな価値があると?

 ねえよなぁ、そりゃねえさ。あんた案外物分かりがいいね。お兄さんはそういうヒトが大好きです。

 えっと、どこまで話したっけ。そうそうあんたのことを聞いたんだった。成る程成る程あんたの人となりが見えてきたよ。見えたからってどうもしないけど参考程度にゃなるだろう。

 なら次は俺のターンだ。俺のことを話してやろう。

 ん、何だよ。俺をどう呼べばいいか聞いてないって?

 じゃあまずそこからいきますか。

 改めて自己紹介致しましょう。

 俺の名前はセイギのミカタ。一から十まで正義とは正反対に構成された、カッコイイ奴さ。

 呼び方は、そうだな。悪魔、鬼畜、Demon、仏敵、魔神、煉獄、魔物、サタン、絶対悪、殺人鬼、堕天使、亡霊、化け物、暗黒神、有り得てはならない存在、邪神、陰、悪霊、強姦魔、地獄、アンリ=マユ、etc、etc・・・・・・

 まあ、好きなように呼んでくれや。

 言っとくが、セイギのミカタが実は性戯の見方、なんてオチはねえぞ。しっかりきっちり正義の味方だ。

 いやいや、オレは正義の味方だぜ。誰がどう見ても正義の味方以外の存在にはなりえない。

 んー、なんか勘違いしてるみたいだな。オレは正義という不安定な概念の味方なのであって、決して正義の味方という有り得ない概念そのものじゃあないんだぜ?

 つまり俺は、正義という未熟な幸福を肯定する正義だが、同時に悪として正義を否定しなければならない悪でもあるわけだ。悪でありながら正義を容認する矛盾した存在。それが俺。善を祝福する絶対悪の正体なのさ。

 それのどこが正義の味方かって? オイオイまだワカンネエのかよ。あんた案外頭悪いだろう? 頭が悪いのと馬鹿なことは違うけど、あんたはきっと馬鹿で頭が悪いんだな。

 どうでもいいが、虎がバターになるのを最初に思いついた奴は、天才だと思うんだがどうだろう? だってバターだぜバター色は確かに似てるがぐるぐる回ってる内にバターになりました、なんてよっぽどイケてないと思いつかねえよ。

 まあ、いいや。んなことより話を戻すぜ。

 はっきり言おう。俺は正義なんてものに虫酸が走る悪人だが、同時にこれ以上ない正義の味方でもある。この一見矛盾した関係は、明らかに三百六十度矛盾しているわけだが、これ以上ないほどに理に適った関係でもある。

 だってそうだろ。悪がいなけりゃ正義は存在出来ないじゃないか。

 負があるから正があり、魔があるから神があり、悪があるが故に正義がある。 古今東西老若男女天上天下唯我独尊弱肉強食焼肉定食、例え神様仏様だろうと、こればっかりはどうしようもねえさ。悪のいない正義は有り得ない。それは正義ではなく当たり前になるんだから。

 あんたはこの世の中をどう思う? 人は発展の為とうたって己が首を絞め、大部分の奴らはそれに気付いているってのに止めようとせず、むしろ応援してやがる。

 腹が目障りだったから妊婦を襲った青少年、話を無視されたから生徒を絞め殺した学校教師、暇だったからなんて理由で多発する殺人事件。

 ある意味狂っているともいえるこの不条理な世界を、正義が悪で、悪が正義で、正義という最高潮にプラスの概念が、悪がなければ存在できないなんてこの世界を、あんたはどう感じている?

 

 俺は、それが聞きたくて堪らない。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 せんきゅー、参考になったよ。やっぱ生の人間が言うこたあ違うね。

 これでまた正義の味方に一歩近付いた気がするよ。

 参考になったから何をするって訳でもないんだが、とりあえず参考になったから礼は言っとく。これは全世界共通だろう?

 よっしゃ、それじゃあそろそろ寝るわ。久しぶりに疲れちまったよ、俺様。ワリイが出てってくんない? 他人に寝顔見られんの嫌いなんだよ。

 おお、やっぱあんたはイイヒトだ。渋々だろうが快くだろうが、出ていってくれりゃ同じだよ。これで俺は一人ぼっちでゆっくり寂しく、安寧と眠れる訳だ。

 なあ、あんた。どうせもう会うこともないんだし、最期にいーこと教えてやるよ。

 俺は正義の味方で、同時に悪の権化でもある暗黒神で、この世に絶望していて、どうしようもないくらい馬鹿げた存在だ。

 残酷で、哀れで、くだらなくて、脆弱で、貧弱で、傲慢で、あまりに矛盾した存在だ。

 なあ、あんた、まさかそんな俺を、自分から気違いと公言している俺を、

 

 あんたは『信じたのか』?

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 ク、

 

 クハハ、

 

 ヒャハハハ、

 

 ヒーーーハハハハハハハハハ!! そうだよそうだよ嘘だよ嘘っぱちだよばーーーか!! ヒーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 絶対悪? 正義の味方? 何だよそれ何だよそれ何だよそれぇ!? 知るかよ知るかよ俺が知るかよ! そんなもんいるわけねえだろーが!! ヒーーーーハハハハハハハハハ!!

 俺はただの変人で狂人なだけの、極々フツーの人間です! 可っ笑しいなあ! 馬っ鹿だなあ! 脳みそ沸いてんじゃねえの!?

 おかしくて可笑しくて侵しすぎて犯しちまいそうだよ! 馬鹿馬鹿馬ァーーーーー鹿あ!! どーして信じるかなあ!

 ギャーーーハッハッハッハ! でもよ! でもよ、いいか!?

 

 『もしこれも嘘ならどうする』!?

 

 実は俺は本当に正義の味方で、矛盾した存在で、可哀相な可哀相な哀れな奴だったらどうする!?

 ヒーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハハハ!!!

 悩め、少年少女たち! 悩んで、悩んで! 絶対に答えの出ない命題に苦悩してりゃいいのさ! 永遠に続く疑心暗鬼! 終わりの見えない善の否定! 苦しめ! 悶えろ! 憤れ!

 俺に関わったあんたに安寧の日々はないっ!!

 さよなら人間、さよなら間抜け! この俺に、正義の味方に出会ったことを一生悔やみながら生きて死ね!

 ヒーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハ!

 ヒーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!


これの名前は正義の味方にして悪の権化。果たしてその正体は、人を愛し、人を喰らうただの人間。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 深そうで浅くて浅くて深い?ですね! [一言] 今この時を楽しんで?
[一言] まず始まり方が凄くお上手でした。思わず最後まで読んじゃいたくなりますね。 このシュールな感じ、かなり好みです。
[一言] 不思議な作品だな、と最後まで読み進めてみれば……そう来ますか、という展開。良い意味で語り部に腹が立ちました(笑) ただ序盤、物語の色が見えてくるより前に語り部が読者を罵しり倒してしまうのは、…
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