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いらっしゃいませぇヽ(=´▽`=)ノ
本日もお越し頂きまして、誠にありがとうございます!
久しぶりにあの夢を見た。
私達一族が暮らす、このロマリアナ帝国の建国神話。
まだ私が幼い頃、母様がよく夜話として聞かせてくれた。
所々に生々しい会話や情景が混じっていたのは
後から当事者達に直接聞いた話もあったから
その記憶も混同されたんだろう。
確か、最後の「たまに様子を見に来る」ってのが
私みたいな「黒持ち」の子が生まれたら
依代にして干渉しにくるって意味だって言ってたっけ。
…何にせよ、今思い返してみても
子どもに聞かせる話じゃないわよね。
「お嬢!起きてください!朝ですよー!」
「うー…ん…もうちょっと…」
「ダメですってば!そうやっていつまでもズルズルとベッドから出ないんだから!」
私の寝室に入ってきて、カーテンを開け放つと
未だ寝ぼける私の鼓膜に、あえて大きめの声を突き刺す。
幼馴染みで、世話係のキアだ。
キアは掛け布団を引っ剥がすと
枕を抱き締める私を、枕ごと容赦なく引き起こす。
「もう、お嬢!だから夕べは早く寝なさいって言ったのに、いつまでもスコーピオンとモルガの相手なんかしてるからです!」
「うぅ…だってぇ…」
「”だって”も”ゴリアテ”もありません!ほらほら、ベッドから降りて下さい」
コンコン…
「お嬢?お着替えを持ってきましたよ」
「はいはい、もう起きてるから入ってー」
「いや、何でキアが返事すんのよ?」
キアによく似た、だけど少しだけ低くてハスキーな声。
キアの双子の姉で、同じく幼馴染みで世話係のサビナ。
サビナは話し方もキアよりゆっくりで
声を聞いていると眠くなってしまうので
私を起こすのは、決まってキアの仕事だった。
「はい、じゃあ失礼しますね」
「サビナも何でキアの返事で入ってくんの?」
「ほらほらお嬢、さっさと顔洗って下さい!」
「くっそ。2人とも聞いちゃいねぇ」
女三人寄ればかしましい、とはよく言うが
私達も御多分に漏れることはなかった。
急かされながら顔を洗い
着替えるために寝巻きを脱いだその時…
バターン!
「おじょーう!朝メシ持ってきたぞー!」
「「「……」」」
ノックも無しにドアを蹴り開け
朝食を持ってきたと宣ったのは
こちらも幼馴染みで、私の護衛であるモルガだ。
両手と頭に器用に皿を乗せ、満面の笑みのまま
状況を理解すると、硬直し冷や汗を流し始める。
「おはようモルガ。今日も朝から元気だな」
「あ…いえ…あの…これは…わざとじゃなくてですね…あの、お嬢?」
私が下着姿のまま腕組みをし、笑顔で仁王立ちすると
何かを察したサビナとキアが
モルガからササッと皿をかっさらっていく。
「お前は、いい加減に、ノックを覚えろー!!!」
「ぐほぁ!!」
ドガァーーン!
私の回し蹴りが、モルガの鳩尾にクリーンヒットし
そのまま廊下の突き当りまで吹っ飛んだ。
ガチャ
「あーもー全く…だから止めとけって言ったのに」
そう呟きながら、別の部屋から出て来て
伸びたモルガを回収したのはスコーピオン。
モルガの双子の兄で、同じく私の護衛だ。
モルガをひょいと担ぎ上げると
くるりとこちらに向き直った。
「ごめんねお嬢。一応、注意しておくから。…まぁ、あんま意味ないと思うけど」
「「「……」」」
バタン
「チッ…あの野郎」
「どさくさに紛れて、お嬢の下着姿をしっかり堪能していきやがりましたね」
「注意しとくなんて言ってましたが、嘘ですね」
「絶対あいつもグルだよ」
「それにしても、モルガも毎朝よくやりますね。なんで懲りないんでしょう?」
「「バカだから」」
「あぁ…バカは死ななきゃ治らないって言いますもんねぇ。だから繰り返すんですねぇ」
「そ。明日になったら、今日のことは綺麗さっぱり忘れて、また同じように蹴り飛ばされんでしょ」
遠い目をしながらも納得し、サビナとキアは食事の配膳
着替えの手伝いとヘアメイクをテキパキこなしてくれた。
こんなドタバタは日常茶飯事だ。
いつもはそれだけで済むのだが
朝食を取りながら、改めて今日の予定を思い出し
憂鬱になるのだった。
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