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新連載始めました!(^O^)
開始早々、反省しております。
…前作の設定をだいぶ引きずりました。(^_^;)
知らない方はフレッシュな気持ちで
知っている方はニヤニヤしながらお読み頂けると幸いです。
これからまた、しばらくの間お付き合い下さいますよう
よろしくお願い致しますm(_ _)m
今でこそ愛すべき我が家門、守るべき我が領地であるが
幼き日の俺にとって、この大公家は
「生き延びるために居続けなければならない場所」
というものに他ならなかった。
大陸の北に位置し、その面積の3分の1を占める
ロマリアナ帝国。
その最南。国境に面し、帝国の防壁となるように
東西に伸びた領地こそ、我が大公領だ。
俺は物心がついて少しした頃には、既に剣を握っていた。
誰かに強制されたわけでもない。
生きるため、母の最後の望みを叶えるため
そして、自分自身の価値を見つけるためでもあった。
両親の記憶はあまり無い。
母は俺が幼い頃に亡くなり
父は…なんとも残念な人であった。
数代前の大公、俺からすればご先祖様だが
元皇族だったらしい。
「元」というのは、実質追い出されたようなものだから。
この国の皇族は皆、銀髪にアメジストの瞳
そして建国の祖である龍神の血脈である証に
背中の中心部に「逆鱗」と呼ばれる
小さな鱗を持って生まれる。
だが、何代かに1人程度の割合で
黒目黒髪に、逆鱗を持たぬ子が生まれることがあった。
最初こそ、皇妃の不貞が疑われたりもしたが
ある代で双子が生まれた際、片方だけが
黒を持ち、逆鱗を持たぬ子だったため
以後は、突然変異ということで片付けられた。
しかしながら、逆鱗を持たずに生まれた者達は
皆一様に、武芸に秀でていた。
そこに目をつけたある代の皇帝は
黒の者を「大公」とし、皇族と同等の権限と名前
そして国境の領地を与え、帝国の防壁となるよう命じた。
口では「国のため」と言っておきながら
体の良い厄介払いであるのは明白だった。
首都に置いて、クーデターでも起こされた日には
まず勝ち目がないと思ったのだろう。
自分の地位を脅かされることを恐れたその皇帝が
自分の代で生まれた黒の皇子を
「国防」を称して、国境の領地へ送ったのが
大公家の始まりとされている。
以後は大公家の嫡男が跡を継いでいくのだが
当然、子宝に恵まれぬ代もある。
すると、見計らったかのように
皇族に黒を持ち、逆鱗を持たぬ子が生まれるのだ。
国の守りを任されたのは、名誉なことだ。
と、前向きな生き方ができる者がほとんどだったが
中には自分は厄介払いされたのだと理解し
皇帝への恨みを募らせる者も僅かだがいたという。
自分は首都に返り咲き、自らが皇帝になるのだと
画策する者もいたというが、どういうわけか
その野望が現実のものとなったことは
一度もなかったという。
そして残念なことに
俺のご先祖様もそのクチだったらしい。
しかし突然、まるで人が変わったように大人しくなり
そのまま領地に留まることを選んだと記録に残っていた。
一体何があったのかは、神のみぞ知るところだろう。
斯くして帝国の平和は保たれた。
というのが、俺が教わった大公家の歴史だ。
大変残念なことに、そのような企てに全霊を捧げていた
者の子どもが、まともな育ち方をするはずもなく
国防は担いながらも、かなり荒れた時代が続いた。
かく言う我が父、先代大公ジリアンも
若かりし頃は到底まともとは言えぬ放蕩者であった。
* * *
女を取っ替え引っ替えしては、酒とギャンブルに溺れ
領地の運営を始め、治安維持や軍の管理
自らの邸宅の管理ですら、全てを他人に丸投げ。
歴代の大公の中でも郡を抜いてダメ人間だった。
しかし、そんな放蕩生活の末に出会ったのが
当時ジプシーの踊り子だったカイエンヌだった。
緩く波打つ燃えるような赤毛に、褐色の肌
太陽のような金色の瞳と、少し尖った耳
笑顔の口元から覗く少し長い犬歯を持った
大層美しい娘だったそうで
軽い気持ちで近付いて来たジリアンを
カイエンヌは、すげなくあしらった。
ジリアンはショックを受けた。
今まで大公という身分を笠に着て、金に物を言わせ
女にNOなどと言われたことのなかった彼のプライドは
大いに傷ついた。
なんという恥をかかされたのだ。許すまじ。
なんとしてでも自分に振り向かせ、夢中にさせて
そして捨ててやる。
そんな邪な動機で繰り返される猛アタックに
百戦錬磨の踊り子が引っかかるわけもなく
アタック→撃沈。を続けるうちに
ジリアンの方が先に沼にハマり、カイエンヌもまた
そんなジリアンの姿に少しずつ絆されていった。
そしてしばらくすると
「ジプシーの踊り子が大公妃になった!」
というセンセーショナルな話が世間を騒がせた。
これにはさすがに皇室も黙ってはいられず
大公を呼びつけた。
しかし大公だけを呼びつけたはずが
登城してきたのは大公夫妻。
皇帝の前で、悠然と微笑む大公夫人を目の当たりにして
開いた口が塞がらなかった皇帝は
2人が夫婦となることを正式に認めることとなった。
* * *
そして父は、心を入れ替えたように仕事を始め
平穏な生活の中、俺が生まれた。
しかし悲劇は、俺が5歳の年に突然訪れた。
ここまでお読み頂きありがとうございました!
続きが気になるっ!とか
もうちょっと読んでみないとなんともな〜
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