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七十五 頼朝反撃 一
頼朝の頭脳が、回転し始める。
……よし。大庭景親を攪乱してやろう。
まずは我らがこの真鶴、湯河原の地域にはいないという策を打つのだ。
具体的にどのようにするのかというと、先ほどの足音の兵たちの会話が示唆している。
彼らはすでにこの捜索に飽き始めている。
頼朝たちは、すでに西に向かったと山稜の兵が言っているではないか。探しても見つかるわけがないと。
……それを助長してやればよい。
兵たちの間に、探しても無駄だという気分をもっと蔓延させてやるのだ。
そうすれば、いかに大庭景親が掛け声をかけたところで、肝心の兵が動かぬことには始まらない。
結果、捜索はおざなりになって、ますます我らは見つかりにくくなるだろう。
……うむ。
頼朝は、手ごたえを感じ始めた。
「実平よ」
「はっ」
半分眠りに入っていた実平は、頼朝に声を掛けられ、びくっと起きた。
「明日の夜明け前のまだ暗い時に、矢を放って八郎太に合図し、夜ここに来させるのだ」
「承って候」
「八郎太が来たなら、このような指示を出すのだ。それはな……」
実平は時々頷きながら頼朝の話を聞き、その着想に感嘆した。




