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源頼朝挙兵物語  作者: 中野掘門
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七十一 頼朝潜伏 一

 ほんの間もなく、北からと南からの両方から、木枝を踏む多くの足音が聞こえてきた。


 北から来た足音が、南から来た足音に話しかけている。


「おっ、(なんじ)らは今朝、石橋山本陣にいた者たちか?」


「左様。大庭殿の(おお)せで、急きょ湯河原に向かい、そこから列を作って北へ向かって捜索してきたのじゃ」


「怪しい者たちは、見つけたのか?」


「いや、()き木拾いのため森に入って来た(たみ)を見たぐらいじゃの。厳しく詮議(せんぎ)したが特に怪しいところは無かった」


「とすると、石橋山から湯河原の間に、敵は見つからなかったという事か」


「山稜を探している連中の話を聞いたが、敵方の二人の武将が、さんざんに暴れて西に逃れて行ったらしい。その時、頼朝殿を追うぞ、と言っていたらしい」


 彼らが話しているすぐ下の七名には、それが誰か分かっていた。


 加藤景廉と大見実政である。


「それでは、目指す敵はこちら側ではなく、山の西側ということになるな」


 小半時ほどした後、東の方から馬の足音が聞こえてきた。


各々方(おのおのがた)、もうすぐ日が暮れる時刻となる(ゆえ)、この真鶴から湯河原にかけての一帯を包囲して夜を明かせと大庭殿の仰せである。松明(たいまつ)篝火(かがりび)の用意をして、それぞれの部隊ごとに散会して配置に付くように。よいな」


 この言葉の後に、足音は去っていた。


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