七十 頼朝追跡 八
実平一行と七郎丸一行とは、襲撃を受けた直後に合流し、目的地の切株を目指した。
実平は自分が思っていたより時間がかかっていると感じた。
今は申の刻に近くなっているはずだ。
再び背後からの松明の列が見えた。
敵は森の中の捜索のため、日中にも関わらず、松明を消していない。
そのため彼我の距離がよくわかった。ずっと近くまで迫ってきている。
と、思った時、前方からも松明の列がこちらに向かってくる。
実平は知らなかったが、大庭景親が石橋山の本陣に温存していた精兵四百の部隊である。
……まずい……挟み撃ちだ……
下草の中を急ぎながら実平は思った。
……もう間もなく切株が見えるはずだ。
今は、七人が一列になっていて、先頭が実平、七郎丸、頼朝、新開実重、土屋宗遠、岡崎義実、土肥遠平の順である。
森の中とはいえ、敵からある程度の遠目はきく。早く切株の下に隠れないとまずい。
実平は七郎丸を先頭に替え、自分は周囲を警戒した。
「七郎丸! 早く! 早く!」
敵の足音がかすかに聞こえてくる。
「ありました!」
七郎丸の声がして、実平も昔懐かしい切株を確認した。
一つの切株に七名は入れない。
隣り合った大きな切株がある所に辿りつき、実平と七郎丸がそれぞれの切株の根の間にある入口を、大急ぎで素手で掻き分け、人ひとりが通れるほどの穴を作ると、振り返り、
「さあ、殿、お早く!」
と言って、頼朝を中に半ば強引に押し込んだ。
つづいて遠平、最後は自分が足を先に入れて、急いで入り口付近の木の枝や葉を集めて蓋をした。
となりの七郎丸も同じようにして、三人の武士を押し込んで蓋をしている。
それぞれの切株の下で七人は息を殺した。




