六十七 頼朝追跡 五
という声が、近くで聞こえた。
実平と遠平が、ハッとして立ち上がり、自分たちが発見されたのかと思って、すかさず腰の短刀に手をやって周囲を見渡した。
だが、人影が見当たらない。
……?
と、今いるところから、四半町ぐらい離れたところで、激しく下草が動いている。
その間から、七郎丸と一緒の武士たちが垣間見え、周りに五・六人ほどの敵がいて、取り囲まれているのが分かった。
七郎丸と三人の武士は、太刀を持っていない。
昨日、いくさで敵と激しく斬り合って役に立たなくなり、今は短刀しか持っていない。
敵は、長刀と太刀を持っているようだ。
七郎丸たちは、いずれ劣らぬ勇者であるが、短刀のみでは対抗のしようがない。
頼朝が、真っ先に助太刀に行こうとするのを、実平と遠平が体を張って止める。
実平が小声で、
「殿! なりませぬ!」
「しかし!」
むざむざと、彼らが討たれるところを見るのは忍びない。
それならいっそ、自分も斬り死にしよう、と頼朝は思った。
もう一度、実平が言う。
「殿! 彼らの命を無駄にしてはなりませぬ!」
「彼らが敵を引き付けている間に、先を急ぎましょう!」
実平とて、味方が危機の状態を、見過ごすことは忍びない。
しかしここは、頼朝を巻き込ませるわけにはいかないのだ。
頼朝を引きずって、先に進もうとした時、
「うわっ!」
「ぎゃあ!」
という悲鳴が聞こえてきた。
やられたかと目を瞑った時、意外な声が聞こえた。




