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源頼朝挙兵物語  作者: 中野掘門
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六十六 頼朝追跡 四

 頼朝は、ただひたすら土肥実平の背中を見て()い進んでいた。


 相変わらず考えることは後悔ばかりで、無力感を引きずっている。


 やはり自分には、いくさの大将としての器量もなければ、源氏の棟梁としての期待にも、応えられそうにない。


 むしろ(みにく)く敵に首を取られるよりも、いっそここで腹を切った方が、源氏の名誉を傷つけずに済むのではないだろうか、などとぼんやり考えていると、実平が振り返った。


「殿、この辺で一休みいたしましょう」


 後方を見ると、敵の松明は見えなかったので、多少は引き離しているのだろう。


 そこは小さい谷の(くぼ)みで隠れるにちょうどよかった。


 遠平が、付近の森の木から(したた)っている雨水を竹筒に集めて、まず頼朝に飲ませ、残りを実平と遠平とで分け合った。


 兵粮はすでに使い果たしているが、水を補給することで一息つけた。


「切株のところまで、あと十町(1キロ)ぐらいです」


 頼朝は、ぼんやりとした表情で(うなず)いた。


 実平と遠平は互いに顔を見合わせて、実平が声をかけた。


「殿。どこかお具合が悪いのですか?」


「いや、そうではない。少し休む」


 と言って、頼朝は目を閉じた。


 実平と遠平も、頼朝の両脇に座って一息ついた。


 頼朝は、目を(つむ)って考えている。


 ……この者たちを犠牲にしてはならない。


 ここで自分が、自害をするなどと言い出せば、追い腹をしかねない。


 ……自分は今、何をすればいい? 自分には何ができるのだ?


 頼朝は、今朝、実平が言ったことを反芻(はんすう)している。


 ――こたびのいくさの勝敗は、殿が生き残るか、討ち取られるか、二つに一つです。まだこうして殿は生きておられる。勝負はまだわかりませぬ。


 ……自分が生き続ければ、勝負は勝ちとなる。


 それは、頭ではわかっている。


 この者たちのためにも、自分は生き続けねばならない。


 生きて、いつか成功し、この者たちに報いねばならない。


 ……しかし、このような不甲斐ない棟梁に従うことこそ、この者たちにとっては不幸なのではないか……


 その時であった。


「いたぞー」


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