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源頼朝挙兵物語  作者: 中野掘門
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四十六 七郎丸の準備

 頼朝は、軍勢を率いて八月二十日の昼過ぎに北条館を出発した。


 伊豆の山を越えて来宮(きのみや)付近で一泊し、翌朝、湯河原の土肥館に入った。


 ここで各地からの武士の到着を待ち、軍勢を整えて鎌倉を目指す予定である。


 伊豆国の地形は、おおむね山地で狩野川下流にやや広い沖積平野がある外は、小平地が点々とあるのみである。


 今、頼朝軍がいる湯河原の土肥館付近には、比較的広い平地があるが、ここから北上して小田原手前の早川に至るまでは山また山である。


 街道は、海岸沿いに通っている一本しかない。


 八月二十一日、頼朝本隊は各方面から来た武士と合流したが、まだ遅参している者がいて、なかなか約三百に達しなかった。


 本来はこの日は行軍して、鎌倉までの距離を稼ぎたいところであったが、なかなか出発することができずにいる。


 結局出発できたのは、八月二十三日の夜明け前となった。


 土肥実平は、自身の館に到着すると、すぐに采配して頼朝の居室を用意し、主だった武士にも控え所を提供した。


 また、従う者たちにも休憩所と食事を提供し、馬の飼葉や手入れにも気を配る。


 一通りの段取りを整えた後、七郎丸を呼んだ。


「七郎丸。準備は終えたか?」


「はっ、すべてお言いつけ通りに終えてございます」


「うむ。汝は我れとともに従軍せよ。弟の八郎太は、汝の真鶴の家にて待機させよ」


 七郎丸と八郎太兄弟の実家は、真鶴の港に近くにあった。


「いざとなった場合、八郎太には切株の隠れ場所との連絡をしてもらわねばならぬ。

 連絡方法は、こなたが短弓で切株近くの木に矢を放ち刺しておくゆえ、民に変装した八郎太が焚き木拾いで山に入り、その合図の矢を見つけたなら、夜に切株まで忍び寄らせるのだ。

 その旨、八郎太にとくと説明しておくのだ。よいな」


「承って候」


 実平は七郎丸が走り去った後、先行きの不安を感じながら、武士たちの世話に戻って行った。


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