三十八 次の罠
いち早く、相模にいる大庭景親の元に、平井久重から急使が到着した。
久重の報告によると、三島神事で山木館が手薄なところを見計らって討ち入り、山木兼隆の首を上げたという。
……やりおったか……
頼朝軍が山木館に討ち入って勝利したとの話は、伊豆を中心に周辺諸国へ急速に広まっていくだろう。
頼朝は、この勝利によって伊豆国を実質手に入れたことになる。
在庁官人を通じて公領の支配が可能となり、伊豆に所領を持つ武士たちや神社・寺院には領地を安堵する。
所領争いには頼朝が介入して裁断を下す。
これは、以仁王の令旨の実行とともに、頼朝による関東統治の第一歩であることを高らかに宣言し、他の地域にも拡大してゆく決意を示すことによって、腰がふらついている武士を自分に引き寄せようとするだろう。
放っておけば頼朝の勢力はどんどん膨れ上がり、我ら平氏を圧倒するだろう。
だが、そうはさせない。
……頼朝よ。伊豆を獲って満足か?
そうではあるまい。汝の目標は鎌倉のはずだ。
これまで想定通りに頼朝をうまく誘導できている。
景親は手ごたえを感じていた。
そして既に彼我の決戦場は用意されている。
ここに頼朝をおびき寄せねばならない。
武蔵・相模の平氏方への連絡は、弟の俣野景久を通じて行っていた。
その参集地と到着日時はすでに伝えてある。
……勝敗の行方は、この次の策の成功いかんにかかっている……




