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源頼朝挙兵物語  作者: 中野掘門
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三十一 双六の負け

 同じ十六日の朝、山木館の雑人(ぞうにん)は、三島社のお祭りのため、今日と明日の二日間、館から(ひま)をもらえてうれしかった。


 討ち入りの事は当然知っていたが、それは自分には関係ないし、憎い山木兼隆が死んでくれれば万々歳だと思っている。


 さあ、何をして過ごそうかと思ったが、普段は(しょう)に合わない宮仕えで疲れているので、朝寝をきめこみ、気が付いたら夕方近くになっていた。


 思い切り大あくびをし、体のあちこちをボリボリ()く。


 寝るのにも飽きたので、あり合わせの飯で空腹を満たし、知り合いの遊び人のところへ行って賭け双六(すごろく)に興じた。雑人は賭け事が大好きだった。


 北条館の台所の女の密告の手伝いで、平井久重から毎回かなりな額を稼いでいたので(ふところ)は温かい。


 双六は最初、勝ちが先行して気分がよかった。それでつい気が大きくなって大金を賭けたところ、連続して負けて、すってんてんになってしまった。


 あまりに悔しくて、イカサマだろうと相手に食ってかかったが、反対に叩きのめされて追い出されてしまった。


 十七日に日付が変わったころ、家に戻ってヤケ酒を飲む。


 ……ちくしょうめ……


 先ほどの双六を思い出すたびに悔しくて、何とかもう一回勝負をして、負けた分を取り戻したいと思ったが、懐に銭は残っていなかった。


 でも、その時いい考えが浮かんだ。


 この間、平井館で山伏がくれた銭のことを思い出したのだ。


 ……そうだった、そうだった……


 あの時は女に取られたが、銭の半分は自分だって、もらう権利があるはずだ。


 よし、夜が明けたら北条館の台所の女のところに行って銭を取ってやろう。


 ……へへ、こりゃ、いい思い付きだ……


 本当は北条館に近寄ることは、平井久重からは固く止められているが、なに、女から銭を取るだけだ。


 そんなに時間はかからない。


 そしてもう一勝負しよう。


 ……次は大(もう)けできそうな気がするぞ……


 安心した雑人は、酒の酔いのため寝てしまった。


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