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第二十九話 エピローグ

 あれから、アサヒは投降した。無血での勝利になり、アサヒとヨツキの仲直りと終戦に胸を撫で下ろしたソラたち。

 最後の一人が降参したため、これにて王都大軍包囲網は壊滅。およそ百二十万いた軍は、生存者一名という全滅に限りなく近い大打撃を負ったのだ。

 ソラたちが奮闘するところを各国の王たちが視認しており、その働きに感謝すると同時にほとんどの国がプロタ王国との不可侵条約の締結を約束した。

 その真意が味方につけておきたいだけか、はたまた攻められたらひとたまりもないから防いでおきたいのかは、誰にもわからない。貴族ながらの狡猾な手段に警戒しながらも、リースは王たちとの終戦協定署名に踏み切ることとなる。

 こつ然と姿を消したロアは、行方不明となった。破壊されかけた王城の広大な敷地にある庭には、ロアが普段祈祷を行っていた建造物が相変わらず鎮座している。

 ソラたちがそこに行ってみたものの、中はもぬけの殻。当然ロアの姿も、祈祷用の道具すらも何もなく、ただの薄暗い木製の蔵と化していた。

 その蔵の外見を見て、ソラが何かに気づく。


(これ……船か?)


 そう。両端がやや反り立っていて、そこで波を受け流せそうな形になっていたのだ。

 といっても、そんな大きく構造も意味不明な船が陸上――王城の庭にあるわけがない。

 だがソラは、その蔵の形から何かを見出していた。


(まるで――箱舟みたいだ)


 ソラの頭に浮かんだのは、とある噺。大津波の中を進む、蔵にそっくりな形の船。

 ソラは、何かを察したように隣の女性をチラリと見た。


◀ ◇ ▶


 「さてと、ソラ兄たちがいてくれたお陰で私たちは勝利できた。そのことに対して、まずお礼を言いたい。

そして本題になるけれど、グレース。」

「はい。この戦争でテロス王国による襲撃を受けた国、また壊滅状態に近しい状況に陥っている国をそれぞれ挙げさせてもらいます。―――」


 確認された被害の状況を、リースのお付のグレースがハキハキと説明し始めた。

 今回の戦いの最前線、西側諸国ではアプシア王国とミアシンタ共和国が内部反乱により壊滅、加えて混乱に乗じ紛争の激化。

 テロス軍の進撃により、デティク王国の国境警備都市ナピリアが陥落。兵士千二百名、一般市民百五十名の死亡が推定。

 “五森王”のシモスが政治の一角を担うデントロ自然公国では、交易都市シニクの陥落により十万名の死亡が予測され、更に軍隊二万名が死亡、加えて“五森王”の一人キリスが瀕死の重傷を負った。

 プロタ王国では、国境警備都市の三つが襲撃を受けたがいずれも死者は出なかった。

 だが大陸の南東に位置するディナスティア魔導帝国で大規模なテロが発生。過激派集団の暴走や暴動により少なくとも二千名の死亡が予測され、そのテロの一部がプロタ王国に影響。アクロとノティが被害を受けたが、食い止めた。

 そして最後、テロス王国の被害である。王都を罠にしようとした軍勢百二十万名の死亡、国境警備軍の十万のうち三万の死亡が確認された。

 最も戦いが激化した三日間の全国での死亡者数は、百三十万名を上回る。世界の人口の十分の一が、実に七十二時間で命を落としたことになるのだ。


「犠牲者がそんなに……」

「ほとんど私たちがやりましたからね」

「それはそうだけど」


 王たちは絶句していた。自らの国が被害を受けたことに加えて、何よりプロタ王国の犠牲が一人も出ていないことに驚いていた。

 二時間で百二十万の兵士を殺害、王がいないにも関わらず死者を出さずに守りきった。

 驚嘆を越えて恐怖に値するレベルであるが、当の本人たちはその恐ろしさに気づいていなかった。

 どの国も、プロタ王国に手を出さないようにしようと心に誓った瞬間だった。


 「あーと、一つ私から議論をしたいことがありまして。お時間よろしいでしょうか。」


 気まずい空気を斬り裂くように、シモスが手を挙げる。

 質問に対し全ての王が許諾し、シモスはその意思を確認すると配下のドワーフに紙の筒を持ってこさせた。

 上質な紐で縛られた巨大な羊皮紙は、テーブルの上に広げられた。そこに書いてあったのは、大まかな大陸地図である。


「私が議論をしたいのは、今や王が行方不明となっているテロス王(この)国についてなのです。

敗戦国となり、更にロア姫とマルクト・ロア陛下の所在も確認されておりません。なので国として成り立たなくなるのですが、この土地をどの国が所有するのか決めたいのです。」


 シモスは、世界地図のテロス王国の位置を指さしながら諸国の王にそう説明した。

 領地拡大のチャンスであり、普通このようなときはお互いに譲らない苛烈な取り合いに発展してしまうのだが―――

 誰も、欲しいという国はいなかった。代わりに、王全員がリースを見ていた。


「え、私の国?」


 かくしてプロタ王国の恐ろしさを知った国々は、もう二度と戦争など起こすまいと決意して、王たちはそれぞれが国に帰るために身支度を始めたのだった。

 リースの部屋の机の上には、署名された停戦協定の羊皮紙が無造作に置いてあった。



これにて、第七章『戒めは策謀と共に』は終了となります!

ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます!

多少無理矢理な終わり方にはなってしまいましたが、第八章もありますので、是非待っていていただければ嬉しいです!


ブックマークありがとうございます!良いねやブクマ数が増える度、筆者は喜びの舞を舞っております(笑)

まだブクマされていない方は、是非この機会にブクマしてみるのはどうでしょうか。

作品の評価も嬉しいです!


筆者の予定では残り五章分。それまでどうぞ、よろしくお願いします!


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