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第二十三話 王都狂騒

 馬車で五日かけ王都に到着した一行は、まず真っ先にその異様な光景を目にすることになった。


「なんでこんなに大勢外に出てるんだろ」

「中で何かあったんですかね?」


 馬車は、城門の前で止まる。

 明らかに異質な雰囲気に、六人はそれを感じ取って馬車から降りた。

 先ほど閉じた城門の前では、何か不都合があったかのように御者と衛兵が話している。


「どういうことだ?避難命令って」

「現在街で暴動が起きているんです。それで、現在鎮圧に軍が向かいました。」

「暴動って……何が?」

「それが、私たちにも知らされていないんですよ。」


 状況的にも明らかに存在する違和感を感じ取った六人は、打ち合わせでもしたかのように一斉に同じ事を問うため、御者を押しのけ衛兵に詰め寄った。


「「「中に入れさせて!」」」


 だが勿論、そんな要求を素直に飲む衛兵ではない。単なる冒険者に過ぎないリュナたちなど、衛兵にとって譲っていい相手ではなかった。


「はぁ?誰か知らないけど、今はこの街は一般市民立ち入り禁止だ。冒険者なら何処か他のところで狩りでもしていてくれ。」


 衛兵はそう言い放った後、再び城門に詰めかける何人もの人々に事情を話し、退去を勧めていた。

 リュナたちも負けじと衛兵を説得しようとするが、他の対応に負われた他の衛兵も全く聞いてくれない。

 例え声が届いていようと、聞く耳を持たないのだ。一介の冒険者集団に見えるリュナたちの訴えなんて、すんなりと通るわけではない。


「お願いです!私たちだけでもいいから、入れてください!」

「中に、中に仲間がいるの!」


 煮え切らない衛兵たちの対応に段々と腹が立ってきた六人は、目配せをしてお互いの意思を確認した。

 そして、早くも最終手段へと出ることになる。

 城門が閉じていることに対して質問をしてきたり、苦情を言いつけてくる人々に状況を説明して落ち着かせ、リュナたち以外の人々を全員帰らせた直後だった。


「はぁ……んで、あなたたちは何処の誰ッ―――」


 疲労か、何時まで経っても諦めないリュナたちへの不満か、深い溜息をつきながら統率者らしき衛兵がやっとリュナたちに対応を回してきたときだった。

 衛兵は言葉を続けること無く、シエラの刃によって袈裟斬りにされて倒れた。

 突然起こった凶行に、周囲の人々が悲鳴を上げる。

 騒ぎを見つけ駆けつけてくる衛兵たちも、すぐさまルミアとノアが始末した。


「……いいんですかね、こんなことしても。」

「まあ国際問題にはなるだろうけど、それより先にこの国滅ぼしちゃえばいいんだよ。」

「リアちゃん、そんな簡単に言いますけど、国王の警備ってすごく硬いんですよ?」

「だからこそ、私たちが来たんでしょ?」

「ま、まあ、そうですね……」


 犠牲者は六人。あっという間に衛兵を制圧した彼女たちは、侵入のために次なる行動に出た。


 「皆さん、私の周りに来てください」


 ノアが、他の五人とメイ、クロノに対してそう呼びかける。

 杖を構えたノアの周りに集まった一行の姿は、群衆が状況を整理して理解し、再び動き出すまでに消え去った。

 忽然と、何の前触れもなく。これはノアの【空即是色】によるもので、空間ごと八人は王都の内部に移動したのだった。


「さて、あの王城に向かいましょう!」

「「「はい!」」」「「うん!」」


 一行は、目線の先にある豪奢で巨大な白亜の城を目指し、各々武器を携えて駆け出した。


◀ ◇ ▶


 話は遡り、数時間前の出来事。

 街を警備し巡回している衛兵たちの目を掻い潜り、物陰に隠れながら王城へと侵入する術を探していたソラが、ラビスに見つかった頃の話だ。

 街では、とある異常が起こっていた。

 それは誰も理屈で説明できる現象ではなく、理屈で説明できないスキルや魔法よりも不可解な、超常現象が発生した。

 国民二十万人全員が、何故か街に出たのだ。

 本人たちにも分からない何かが彼らを突き動かし、街から全員居なくなった。

 何の前兆もなく、何の根拠もなく、ただ何となく、そうしなければいけない気がしたからというそれだけの理由で、同じような行動を二十万人が一斉にとる。これが異常以外の何と言えるだろうか。

 街を巡回していた衛兵も、気づけばまるで上層部から下された命令を忠実に遂行するかのように街の外へと出ていた。

 何もわからぬまま、王都はもぬけの殻に。平原が広がる王都の周囲の地帯に、二十万の人々が集結した。


 当時王都では、各国の重鎮たちが集まる世界会議が行われていた。

 国民は全員外にはじき出されたものの、トップと近衛だけは残されたままだった。

 参加者たちは外で起こっている異常事態に気づかないままに、手薄になった警備の中会議が続けられていたのだ。


 ソラたちも、周りがもぬけの殻だとは思わずに死闘を繰り広げていたのだ。

 突然ヒナタが頭角を現したことにより窮地を脱したソラだが、状況の真相を知るのはもう少し後のこととなる。


 ソラの一行と、リュナの一行が合流し、更に王女とその近衛が自らの力を存分に振るうその戦いは、目前まで迫っていたのだった。


◀ ◇ ▶


 プロタ王国の世界最強―――後にソラが“七徳の強王”と名付けることとなる七人は、世界各地で活躍していた。

 リオン・ウィルトは王女リースの近衛騎士に。

 カイル・ドラコニス及びサーシャ・ルーンレイは西側諸国の防衛。

 イヴァナ・デッドアイ及びサイラス・グレイヴはデントロ自然公国への援軍。

 リリス・アルファリアはプロタ軍の補給部隊の指揮。

 シグルド・ウィンドはプロタの国境沿いの警備及び軍の戦闘部隊の指揮。

 それぞれが大役をこなし、至らぬ点も多々見られるが、国の防衛そして戦争の終結に力を尽くしていた。

 全員、対カマエル戦の屈辱を払拭するために今日まで普段の倍以上の研鑽を積んできた。

 一度に五つしか習得不可能であるスキルを、入れ替わりにより強力なスキルへと昇華させようと、それぞれ日々努力していたのだ。

 ユニークスキルに進化するスキルなどは当然無かったが、以前より数倍ほど技術も身体能力も扱うスキルも向上しており、ソラに負けない程の強さへと成長を遂げていた。

 そのお陰で十戒の一人を討ち取り、本来対処不可能なほどの強者さえも圧倒するほどの力を発揮し、各地に攻め込んでいた合計十五万の兵士たちを葬った。

 国は二つ滅んだが、実はこの二つは国内の不満が暴発した末の結末である。故に、実際はテロス王国の軍隊は全滅していたのだった。

 ただ、まだテロス王国の軍は総数百六十万が残されている。

 いくら強者が猛威を振るっているとはいえ、戦争は継続しているのだ。

 これから何が起こるか、たった二人しか知らなかった。



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