第零話 プロローグ
おまたせしました!第七章開幕でございまーす!
暫く期間は空きましたが、どうぞ新たな物語を楽しんでください!
この国は、最早廃れている。
お偉方は薄汚い。
兵隊たちは心がない。
世の中は腐りきっている。
お世辞でもこの環境は決していいとは言えない。仮拠点でもあるまいし、重要な拠点なのに何故こんなにも杜撰なのだろう。
人の心は杜撰だ。それが、仕事や施設にも及んでいる。
そもそもこの国自体、余りいい考え方の国とは言えない。勿論こんな事を人前で言おうもんならすぐに捕まって即刻処刑だ。口が裂けても、こんな事は言えない。だが、それは兵隊皆が思っていることだった。特にこの駐屯地の兵隊は皆がこう呟く。
「戦争なんてやりたくない」と。
歴史は繰り返す。人間の本質が変わらなければ、いつの時代も同じことの繰り返しだ。欲望を満たすための物を見つけ、戦って勝ち取り、さらに良いものを奪おうとする。人間の性だ。
私は本当にそれが嫌いだった。だが、私も人間だ。薄汚いところだってあるし、失敗やうっかりもたくさんある。私の手は血で汚れている。
私が女でありながら軍隊に入っているのには、とある理由があったからだ。
私に剣を教えてくれた人は、人間じゃなかった。幼少期のことだから余り覚えていないけれど、ものすごく強くて頼りになる、優しい人だった。
私はその人と四年もの時を過ごした。物心ついたときから四年間、毎日欠かすことなく剣の修行をした。
まあ幼少期だから、幼児期健忘で忘れていることも多々ある。だけど、あの人から教わったことは今でも覚えていた。
独りになってからも、あの人から教わった剣術で暮らしていった。生まれたころからあった力も使えたお陰で、今では魔物の地獄と称されるほどのディスタグモス大森林を、小さいながらに二年間生き延びたこともある。
故に、私は剣の腕には相当な自信があった。
故郷からディスタグモス大森林を突き抜け、辿り着いたのがこの国だった。野生暮らしが長かった私を、大森林の調査隊が見つけてくれて保護してくれた。
そして、二年間生き延びた腕を買われて何の因果か軍隊に入ることになった。
私自身、軍隊に入ることにさほどの抵抗はなかった。私の剣術が人々の平和に生かせるなら、戦いや争いを終わらせられるのなら、命を賭して存分に振るおうと、その当時は思っていた。
でも、現実は甘くない。それからずっと軍隊にいるけれど、軍隊は何一つ国民に従事していない。
私は昇格の話が何度も何度も幾度となく上がったが、それを全て拒否し続けた。
国民から搾り取られた血税からでている汚れた金を受け取るわけにはいかない。
プライドを守ってきた私だが、ある日戦争のための準備として特殊部隊に配属。情報部が集めた世界各地にいる異世界人の情報を頼りに、大幅な戦力となる異世界人たちを軍隊に所属させるという荒業だった。
確かに、ユニークスキルを持つ異世界人は常人を軽く凌ぐほどの強大な力を持つ。中にはかなりの強者もいるようだ。
だが、そこの点が上層部は馬鹿だなとつくづく思う。
だって―――
―――捕まえてきた強者が反乱を起こす可能性もあっただろうに。