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第十二話 アクロ復興日誌

〜前回のあらすじ〜


偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)のアクロ支部を潰しました。


◀ ◇ ▶


 あの後、俺たちは保安部隊が本部としている建物に行って、偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)の壊滅を報告した。

 実際に構成員を現場に連れて行って、ゴミの山に横たわる何十人ものヤクザの死体を見せた。

 信用してくれたようで、後は逃亡した残党の捜索及び確保を急ぐそうだ。

 それでもアクロの犯罪は完全になくなったわけではないため、俺たちも最大限協力したい所存である。

 だがひとまずは、アクロの復興の記録をここに記しておくとしよう。

 先に断っておくけれど、これは一応手記である。

語り口調だけれど、会話や細かい出来事とかはいちいち覚えているわけではないので、ここには大まかな出来事しか書いていない。

そもそも俺の記憶力の問題だから、仕方ない。

 記憶力は置いておいて、本題に入るとしよう。

 保安部隊に報告した後の話だ。

 俺たちはセトの【空間転移】によってロムバート邸に戻った。

 もうその時点で日は沈みかけていて、時間はだいたい午後四時頃だった。

 尚、この世界に時計という便利な道具はない。

時間を計る方法としては幾つかあって、光や気候で色が変化する結晶の色を確かめたり、日時計があったりする。

当然だが、日光だよりなので日時計は夜は使えない。

そして、クリスタルは季節によって変動するので、そんなに信用はできない。

結局、太陽と月の位置を確認するという簡単な方法に収まってしまうのだった。

 少し話がそれてしまったので、戻そうと思う。

 ロムバート邸で待っていたルミアとリアは、アクロの偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)撲滅の報告を俺の口から聞き、とても喜んでいた。

 リアは多分撲滅したことだけど、ルミアが本当に撲滅したことに喜んでいたかは怪しいところだ。

 それから俺たちは、(しばら)く屋敷で暮らした。

 使用人は皆手一杯。それぞれの仕事をこなすのが精一杯な状況で、もてなすべき客人が五人増えたことで煙たがられるだろう。

 そう考えた俺は、いつの日かやったように、屋敷の仕事を手伝うことにした。

 掃除、皿洗い、庭木の剪定。以前やったこれらの仕事以外にも、洗濯や調理の手伝い、風呂掃除、荷物運び、買い出しの付き添い等など、幅広い仕事を任されることに。

 これにはノアとシエラも手伝ってくれて、一緒にやっているうちにリュナとセトも参加。

 客人五人が仕事を手伝い始めるという、異様でも使用人たちにとってはめちゃくちゃありがたいであろう現象が起こることになったのだ。

 使用人の仕事を手伝っていって、やがて俺たちの仕事の手際のよさが最早屋敷で働けるほどのものになってきたときだった。

 街の被害状況の確認が全て終わり、それに関する資料などが屋敷に送られてきた。

 主な内容は、街の被害の規模についてだ。

怪我人の数や死亡・行方不明者の数、倒壊家屋の数や中枢機関の被害状況、避難所の数と避難者の数等。

 その中で、幾つか気になる―――というか、俺に関係のある情報もあった。

 まず、倒壊家屋に関する状況の中の一行だ。

『領主様の命にて建設されていた屋敷、完全崩落。』

 この屋敷、俺が建設業者に頼んでいた家だ。情報によればまだ建設中だったらしい。

 いつまでもこの屋敷で世話になるわけにもいかないので、いつか新たな家を見つけるか、建てないといけない。

 次だ。これは避難所に関する文章で、気になるところは二箇所ある。

『大聖堂の神父とシスターの魔法により、住民百二十名余りが救助。現在大聖堂は避難所になっている。』

『子供の霊が、避難者たちを廃屋へと誘導。強力な結界により、住民五十名余りが避難成功。』

 大聖堂の神父たちは、以前俺が隠し地下室から救助した人たちのことだ。

もしあの時俺が救助していなかったら、あの神父さんたちもこの百二十人の人たちも、助かっていなかったのかもしれない。

俺のわずかな気づきが百何十人もの命を救ったと思うと、胸がいっぱいになる。

 これは廃屋の子供たちの霊も同じことで、俺があそこで気づいたから霊を解放できたわけだ。

 つまり俺は、約二百人ほど、間接的ではあるけれど、人の命を救っているということだ。

 自分の判断を信じていてよかったと、ほっと胸を撫で下ろす。

 そして最後に、俺とは関係はないのだけれど、気になる報告があったのでそれを書き記しておこう。

『アクロの代理領主の失踪が確認。』

 ギルドを占拠した犯人たちが、そんなことを言っていたような気がしなくもない。

 代理領主というのは、ロムバートさんに代わってアクロに住んで、実際の政治を担当している人のことだ。

 それが失踪。実はこれは屋敷の人間には伝わっていたらしく、ここ最近バタバタしていたのはそのためだったんだそう。

 引っ越し準備。この屋敷から、アクロの領主邸に移り住むための慌ただしさだった。

 でも、いざ引っ越すときはロムバートさんが帰ってきてアクロの視察をしてから、安全が確認されるまでなので、余裕はかなりあるのだそう。

 それでも、主不在でも使用人が時々引っ越し先を訪問し、掃除や荷物の運び入れなどを僅かながらに進めているようで、実際、家財道具は少しずつこの屋敷から消えていっている。

最近大型の馬車が頻繁に出入りしていたのはそのためだ。

 ロムバートさんも大変だなぁと思いつつ、俺たちはその情報を得た後もロムバートさんが帰ってくるまで屋敷で暮らした。

 時々訪問先の掃除に手伝いに行ったり、ほぼ毎日のようにアクロのボランティアに参加したりと、屋敷での自主的な仕事に加えて俺たちはよく働いた。

 特に、ノアとセトは大活躍だ。

 ノアはボランティアにおいて、かなり効率な人材だった。

コミュニケーション能力が高いのですぐに人々と仲良くなれるし、空間系の能力者なので瓦礫の撤去がとても早い。

 セトは、滅茶苦茶しながらも大活躍だった。

 保安部隊のパトロールに参加。リュナとともに隠れた犯罪者共や偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)の残党狩りに出動し、これによってアクロの犯罪発生率はほぼゼロにまで減少。一時的なものではあるものの、大荒れだったアクロを平和にした立役者なのだ。

リュナは隠れている奴らを見つけ出した。その点では、リュナも活躍したと言っていいだろう。

 勿論、俺もボランティアに尽力した。

 子供ながら魔法が扱えるので、いろいろな場面で活躍。

軽微なものではあるけれど、一生懸命ボランティアに参加している健気な子供として一躍人気に。

 町の人々は俺がどんなことをした偉人なのかは知らないだろうけど。

 一応、勇者パーティなんだよ?暴力団潰したし。

 直接感謝はされなくとも、間接的に誰かが笑顔になればそれでいいと、俺は思っている。

人間誰しも、誰かから頼られるというのは嬉しいことなのだ。


 さて、そんなこんなで立ち直りつつあるアクロの街。

ボランティアの人々が瓦礫を地道に片付けていたのだが、やっと、復興の要である街の建設業者連合が立ち上がった。

 態勢を立て直し、街を綺麗にしてやろうと躍起になった職人たちの目はやる気で燃えていた。

 みるみるうちに家が建っていく。冒険者たちや魔法の力も借りながら、一度壊され、その後ボランティアたちの手によって更地にされた家々が、どんどんと建て直されていく。

 三日もすれば、だいたいの家で骨組みが完成した状況となり、そこでやっと屋敷にロムバートさんが帰宅。

 ルミアとリアが、王都から帰還したロムバートさんとリーベに現在の状況を説明。

 アクロの復興の支援要請と偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)の撲滅の話し合いに行っていたというロムバートさんは、俺たちが偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)を撲滅、さらにもう既に復興は始まっていると聞いて驚いた。

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔だった。

 それもそうだろうが、現状、ロムバートさんにとって喜ばしい事態となっていることは事実だった。

 話し合いの結果、復興の支援は可能、偽善の棺桶(セマ・フェレトロ)の撲滅は自分たちでなんとかしてくれという結果だったようだから。

 このペースで支援が来れば、やがて元の街に戻る。

 引っ越しの準備も進み、俺たちがアクロに帰ってきてから僅か二週間。


 アクロの復興の兆しは見えてきた。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ちょっと最近更新が遅いかもしれないですけれど、何とか頑張っております!

ぜひぜひ、ブクマや評価等、お願いします!

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