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第一話 帰還

〜前回のあらすじ〜


カズトが新魔王となりました。


◀ ◇ ▶


 魔王城。今まで住んでいた主がいなくなったこの大きな城には、新しい魔王が誕生した。

 そんな魔王討伐の立役者の一人となったのが、この俺、イノウエソラだ。

 結局俺はあまり何もしていない。そもそも魔王がどのようにして討伐されたかも見てない。

 きっと、カズトが創った異空間の中で、さぞ凄い戦いが繰り広げられていたんだろうなぁと思うとなんだか虚しくなってくるので、それについて話すのはもうやめようと思う。

 いい加減本題に入ろう。

 魔王城で諸々終わらせて、俺たちは一度王都に帰ろうと思っていたのだった。

 行きに乗っていた馬車はもうとっくの前に帰った。

 どうするのかというと、こんなときこそセトの【空間転移】だ。

勿論セトは王都の座標も覚えているので、まるでゲームの便利機能の如く簡単に移動ができる。

 なんで便利な魔法。

 いつもどおりの流れで転移して、王都に移動。

 目の前に広がっていたのは、ほとんど崩れ落ちて再建が始まっている王城だった。

 そうだそうだ、一週間経っていたから忘れていたけど、イオフィエルに破壊されたんだった。


「あ!ソラにーい!」


 俺たちが再建の始まった城を見ていると、遠くからそんな少女の声がしてきた。

 名前を呼ばれた俺がその方向を見てみる。

 すると、やや装いの変わったリースがこちらに向かって走ってくる光景が見えた。


「リース!」

「ソラ兄!無事だったの!よかった!」


 リースは嬉しそうに俺に抱きついてくる。

 身長は俺のほうが高いのでリースは俺の胸に飛び込んでくる構図となったけど、それでもお互い子供なのは変わらないので、突進してくるリースの頭頂部――というか額が、俺の顎にクリーンヒット。

 めちゃくちゃ痛かった。それでも何も言わずにリースを見る。


「ソラ兄が帰ってきたってことは、もしや魔王を?」

「そのもしや。そこのカズトが倒したんだ。」


 俺に指を指され、リースが注目したカズトは、それに気づいて少し微笑んだ。


「相変わらず、ソラ君とリース様は仲良しだよね。」

「ソラさんに抱きつくのは羨ま―――看過できないですけど、感動の再会ですからね。」

「あれ?リース様、イメチェンしました?」


 突然会話に割り込んでくる、女子三人組。

 なぜにこの三人はこうも割り込んで来たがるのだろうか。

それも俺が女性(女子)と話している時に。嫉妬か?それはシエラだけにしてほしいが。


「はい、ちょっと髪伸ばして。」

「やっぱり。そっちのほうが、前のショートカットよりかわいいですよ。」

「ほんとに。前はネイトにそっくりだったからね。ちょっと話しづらかったけど。」


 確かにシエラとリュナの言う通り、リースの姿が少し変わっている。

 髪は伸びて、ショートとはいえない長さに。

 服も以前の華やかなものではなく、すごく庶民的なカジュアルな服装だった。


「ネイトか……その名前聞いたの久しぶりだな。」

「せっかくだし、ソラ兄も喜んでくれると思って……」


 ここで、俺は一つの異変に気づいた。

 リースの雰囲気が、若干暗いのだ。一週間のブランクがあったとは言え、リースが一生懸命に隠し通しているとは言え、どこか暗い。

まるで、何かを隠しているような。何かを嘆いているような。何かを―――失ったような。

 人がイメチェンするには何かきっかけがあるものだ。

この場合のきっかけ。俺たちが魔王を討伐しに行ったことなのか、それとも王城が破壊されたことなのか。

はたまた―――

 いや、考えていても真実には辿り着けない。

勇気を出して、聞いてみる。


「リース」

「ん?何?ソラ兄。」

「お前―――何か隠してる…よな」

「え?何言ってるの?ソラ兄。別に何も―――」

「いや、僕もソラさんの意見に賛成だ。」

「ああ、俺も。」


 リースの言葉を遮ったのは、先ほどから後ろで俺たちの光景を眺めていたであろうリオンとカイルだった。


「明らかにおかしい。まるで誰かが死んだような気の落ち込み方だな。」

「カイル、そんなストレートな言い方はよくない。

リース様、何かあったんですか?」

「………………」


 リオンとカイルにそう聞かれて、沈黙を始めたリース。

 その沈黙は長く続いた。リースを探しに来た使用人たちが、俺たちのもとに到着するまで。

 その間黙り込んでいたリースだが、リオンとカイルもそれ以上言及せずに沈黙の時間が続いたのだ。

 そして、その沈黙の時間が断ち切られてやっと展開が進んだのが、グレース率いる使用人たちが辿り着いた後のことだった。

 沈黙を続けていたリースは、グレースに促されて戻っていく。

 他の使用人に案内されるがままに俺たちもその方向へと歩いていく。

 そして(しばら)く歩いて辿り着いたのが、俺たちが作戦本部(仮)としていたとある屋敷だった。

 リースは部屋にこもり、俺たちはとりあえずこれからのことを話し合うことになった。

 ちなみに、幽閉されていて衰弱していたイヴァナは使用人たちに連れられて治療院に行くことに。

 リースのテンションの落差に何か隠されていると踏んだ俺だが、どこか悲しそうだったリースの様子を見て何も言わないことにした。


「さて、話し合いを始めようか。

俺たちは魔王を倒した。世界最強なんて称号を持っていてなんだが、俺たちはあまり活躍できなかったと思う。

現にカズト、お前が魔王を倒したわけだ。そこに関しては祝福したいのだけど、これから忙しくなる。皆、覚悟しておけよ。」

「忙しく?」

「ああ。魔王を倒したんだぞ?これから勲章授与とか貴族のパーティーとか、あとお祭りなんかもあるかもな。

まあ王女があんな調子じゃな……」


 勲章授与やパーティー、お祭り。確かにあるだろう。

 国としても、俺たちは魔王を倒した勇者のように扱わないとならない。表向きや形式だけでも、讃える姿勢はとらないと。

 だけども、何があったのかリースは塞ぎ込み、世界最強の一角であるイヴァナは衰弱。俺たちは満身創痍。

 どうしろと?


「ソラ。リュナ。お前らの言いたいことはよくわかる。

リース様と、イヴァナのことだろう。

大丈夫だ。魔王が倒されたことはまだほとんど誰も知らないし、それを報告して確認が取れるまでにも期間が必要になる。

魔王が倒されたんだから大ごとになるが、幸いにもあそこは荒地の孤城。報告を遅らせれば大丈夫なんだよ。」

「相変わらず、カイルは悪知恵が働くね。

ソラさんたち、かなり大雑把な説明となりましたが、要はそういうことです。

僕たちの方で何とかしておきますから、ソラさんたちはゆっくりと羽根を伸ばすなり、休息をとってください。」

「まあ俺の一存でその休息はすぐに終わらせられるんだがな。」


 丁寧なリオンに反し、意地悪そうに言うカイル。

 戦いの時からもこの二人は仲が良さそうなのだが、性格はかなり違うようだ。

 思えば、この世界っていろんな性格の人がいる気がする。キャラといえばいいのかもわからないが。

 いちいち挙げていくのも面倒くさいが、異世界ってそんなものなのか。だとしたら、俺のパーティメンバーって意外とまともな人が多い……?


「我は全然消耗していないがな。」

「思ったけど、今回の戦いってシエラちゃんと私が大活躍だったんじゃない?」

「そうですね!リュナさんのお陰で奇襲ができたわけですし!」

「いやいや、私も助太刀しましたよ?」


 ………前言撤回。体力バカと見栄っ張り三人だけだった。

 神を体力バカと形容するのもなんだかおかしい話ではあるけど、それで言うとリュナはどうなるんだと言う話である。

 女子三人の言い合いは今に始まったことではない。

 三人は放っておいて、何日ぶりかの休みを満喫することにしよう。

 連続した幹部の襲撃に、一週間の馬車旅、終いには丸一日の激戦。

 改めて見てみると物凄いハードスケジュール。身体には疲れが溜まり、心にも余裕は少ない。

 これが、心身ともに疲弊しきっている状態だろう。

 まだ色々とやることは多そうだけれど、とにかく俺はこの一時の休息が欲しいのだ。

 セト連れて、街に繰り出してみようかな。

第六章開始です!

正直ソラを書くのが久しぶりすぎて(二十八日ぶり)今感覚を取り戻しているところです!

この章は長めとなる予定ですので、どうぞお付き合いください!

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