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第二十五話 玉座の間

 玉座に座っているのは、エイト。そしてその前に仁王立ちしているのが、この俺、トモキだ。

 魔王相手になんたる失礼な態度。自分でもそう思っている。

 でも、あちらから対等な関係を申し出てきたのだから多分これで良いのだと思う。

 魔王なんて力の象徴だと思っているのだが、こんなしがない冒険者に対等な立場とか、こいつの考えていることがイマイチ分からん。

 単に同郷者だからなのか、それとも同じ神之権能(ゴッドスキル)持ちだからなのか、はたまた何かあくどい算段でもあるのか。

 こいつの表情からも、その場に溢れかえる存在感からも、オーラとして彼の身体から漏れ出ている圧倒的強者感からも、その本心が何であるのかは見抜くことはできなかった。

 原初之権能(プリミティブスキル)であるガイアでも、あれだけ自分で解析が得意だと言っていたガイアでも、その計り知れない思考を読み取ることはできず、深層思考どころか表層思考でさえ、一ミリも触れることができなかったそうだ。


 さあ、こいつは開幕から何難しそうな話してるんだと思った方、多いだろう。

 俺だってこんな緊張感のある喋り方でやりたくないよ。疲れるし。

まあやる必要もないし。

 つらつらと長い説明を並べたが、その光景を想像してもらうのが一番手っ取り早いと思う。

 そう。再度説明するが、今俺とエイトは対面している状況下にあるのだ。

その中でどんな心理戦が行われようと、どんな情報戦が行われようと、俺は全く興味のないことだ。

当事者である俺がそれを言ったらおしまいなんだけれども。

 要は、ここを改築したいと、そういう話をしにここに来たわけだ。

 断じて、謀反とか密偵活動に来たわけではない。

 俺はたまたまエイトと出会い、たまたまこの城に招待され、たまたまこの仕事を引き受けただけだ。

 え?怪しさ半端ない?まあ……一応事実なんだし良くないか?

 そんなことは置いておこう。簡潔に言おう。俺は、エイトと話をしに来たのだ。


「エイト、もう残りは七階層だけなんだが、明日作業に取り掛からせてもらってもいいか?」

「別にいいけど。」

「なんか要望とかはある?」


 そして彼から聞き出した情報がこちら。


 ザ・魔王城という感じの玉座の間を創ってほしい。

 部屋は過ごしやすいように。

 小さな書庫を創ってほしい。


 と、意外にもこの三つだった。

 それならばお安い御用だと、喜んでその条件を飲んだ。


 ―――翌朝―――

 快適だった。思ったよりもあの部屋が快適すぎた。

ガイアが調節してくれたのもあると思うけど、大元を考えた俺も凄いと思う。

 そんな自画自賛をしながら、見違えるように綺麗になった廊下をスタスタと歩いていき、階段を上って七階に。

 七階は他の階層よりもずっと小さく、城の形でいうと飛び出している部分となる。

 エイトの要望を満たすならば、ここに三部屋。

 現在はエイトの自室と玉座の間の二つがあるだけだ。


《あと謎のデッドスペースがあるみたいだね。

部屋にするには微妙だったから埋めた感じかな。

ここを有効活用すれば、小さい書庫は作れると思うよ?》


 よし、それを使おう。

 まずこの階層で作るのは、玉座の間だ。

 現在の無駄に空間を使った部屋ではなく、ここの横を削って縦長にしようと思っている。

 改めて見てみると悪趣味な空間だ。無駄に広くて、柱や甲冑も己を主張しようと煌びやかになっているものばかり。

 それをコンパクトにまとめて、甲冑は全て廃棄。柱も邪魔をしないよう細くし、縦長の部屋を創り出した。

 そして一番奥に玉座を、中央の一段下がっている道には細長絨毯を。旗もいくつか取り付け、シンプルながらも重厚感のある部屋が出来上がった。

 先ほどよりも狭いながらも開放感は抜群。だだっ広い空間よりも、こっちのほうがいい。

 これによって生じた空間を有効活用し、広い部屋を作っていく。

 少々気合を入れて、俺が思いつく限りの最高級を。

 まずはキングサイズのベッド、そして絶対割れないように創ったガラスのテーブル。

革のソファと、もふもふの素材で作ったクッション。

 さらには小型キッチンを設置。ここに小さなドリンクサーバーがあり、好きなドリンクをセットして、常備されているコップと氷を使っていつでもドリンクバーが楽しめる仕様だ。

 そして大型の本棚、風呂トイレ別、城下町と中央都市エイトを一望できるバルコニー付き。

その他小物なども用意し、我ながら完璧な部屋が出来上がった。

ガイアも意見を言ってくれたので、多分過去一いいんじゃないかというくらいの贅沢ルームの完成。

 玉座の間、エイトの部屋と、順々に順調に完成していったところで、残しておいたデッドスペースを使う時間だ。

 このデッドスペースと、広すぎる廊下を少し細めて出来た余裕、なぜか変なところに付いているバルコニーを使ったスペースを創り出し、その中に書庫を作ることにした。

 バルコニーを解体。デッドスペースも解体。壁を動かして廊下の絨毯等も調節し、奥行きのスペースを確保。

 しっかりと外壁も設置して、部屋と呼べるであろう空間の完成。

 ここに、壁を埋め尽くすような本棚と、読書用の机と椅子を置いて完成だ。

 書庫というよりちょっと小さめな本屋みたいな感じだが、六階に大きな書庫があるので大丈夫だろう。

 意外にも早く七階の改装が終わり、昼過ぎ頃になってようやくお腹が空いてきた。

 夢中になりすぎだ。

 その後昼食の席でエイトに完成した旨を伝え、食後に七階を紹介。

 エイトは部屋などを見て大喜びしていた。

 こうして城の改築が全て終わったわけで、こうなるともう仕事のない迷惑な客人になってしまう。

 なので、エイトに許可を取ってボスを設置することにした。

 なのでというのも変な話だな。別にボスを設置したらで仕事なくなるんだし。

 まあ細かいことは気にせず。エイトは完成祝賀会を準備しているらしい。

簡単に言えば、城の改築を祝うパーティーだ。

 そのパーティーに間に合うようにも、ボスの設置を始める。

 実はもうアイデアは浮かんでいるのだ。


《どんなアイデアなの?》


 それはこれから。まずは一体目だ。

 二階のとある部屋に移動。その部屋は、天井がガラス張りになっている部屋だ。説明しなくても、読み返してくれれば分かると思う。

 その部屋にまず一体目を設置する。


《どんな感じで作ればいいかな》


 そうだな……イメージだと、白装束で、顔に布がかかっている身長の高い男みたいな感じ。


《だいたいわからなくもないような……まあ一回創ってみるね。》


 そうして、部屋に縦長の光が出現。そこに一人の人間が現れる。

 床につくほど長い白装束に、首の前面を覆い隠す僧侶頭巾。顔の前に俺の想像通り布がかかっていて、一切表情は読み取れない。

 三蔵法師が頭にかぶっているやつの顔の部分も布がある感じだ。

 なんとも説明しにくい姿だが、ガイアは俺のイメージの通りに創ってくれたようだ。


《こんな感じかな》


 もうバッチリだ。流石。


《ボスならさ、ダンジョンみたいに名前つけるの?》


 ああ。勿論つけるとも。

 今俺の目の前に棒立ちしている白装束の男は、何も喋らない。

 どうすればいいのだろうか。名前を呼んで、命令したいことを言えばいいのか?


《だいたいそんな感じでいいと思う。》


 ガイアもそう言っているので、試しに名前をつける。


「お前は“ヴァヴ”。

“二十二将”、“教皇”のヴァヴだ。

お前はこれから、この部屋に入ってきた侵入者を殲滅するんだ。

ただし、この城の者は攻撃してはならない。わかったか?」


 伝わっているか分からないが、そんなふうに命令してみる。

何の反応もない。


《これでいいんじゃないかな。次行く?》


 いいのか……?

 まあいいか。次、二体目のボスだ。

 再び移動。今度は五階の倉庫の中だ。

 薄暗い荷物だらけの倉庫の中に、ボスを設置する。

 ガイア、さっきのヴァヴの白装束を、黒装束にしたやつを二体目として創ってくれ。


《わかった。》


 そして先程と同じ流れで召喚。服装はヴァヴの反対で、全身黒ずくめだ。

 こいつには、“隠者”の“ヨッド”という名を与え、ヴァヴと同じ命令を下した。


 そして最後。ダンジョンに設置したのと同じような、裏ボスだ。

 七階の玉座の間に忍ばせておく。時が来るまでバレないような仕組みになっているのだ。


《この異空間に隠せばバレないよ。

それで、最後は何にするの?》


 俺が考えているのは、ドラゴンだ。ファンタジーといえばのドラゴン。

 今回は慈悲を冠する名前なので、イメージカラーとしては青。青色のドラゴンがいいな。


《じゃあ召喚するね。》


 そうしてその異空間の中に魔法陣が展開され、中央にドラゴンが召喚された。

 一言で言えば青色。さらに言えば、ところどころ色が違うドラゴンだ。

色が違うと言っても、それがアクセントになっていてかっこいい。


「貴殿が、吾輩の主か。命令を。」

「お前に名前をやる。これから、ケセドと名乗るといい。

それから、命令だな。この城が崩壊しないように守れ。ただし、表舞台に姿を現してはならない。」

「主、それだと守れないがどうしたらいいのだ。」

「大丈夫だ。それに見合ったスキルをお前に授ける。」


 よろしくガイア。


《ったく、人使いが荒いんだから。

さっき話し合ったやつでいいんだよね?》


 それで大丈夫だ。

 その後、ガイアはケセドに神之権能(ゴッドスキル)を付与させた。

 世界の声が、聞こえてきたのだ。


《―――ケセドが、神之権能(ゴッドスキル)慈悲之神(エイル)】を獲得》


 なんか戸惑ってたような声色だったけど、そもそも世界の声って感情とかあるのだろうか。

 ガイアが知っていそうだったが、その疑問は置いておこう。


「主、これは……」

「防御に特化したスキルだ。これで、城が崩壊の危機に陥ったときだけ城を支えるんだ。」

「―――承知した。」


 その後、俺はケセドを置いて異空間から戻ってきた。

 その玉座の間では、着々とパーティーの準備が進んでいる。

 その景色を見ながら、俺は仕事完了の達成感を噛み締めた。

ついに、これを含めて第五章は残り四話!

ということで、毎章恒例の大放出です!

四話連続投稿!次回は十一時!お楽しみに!

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