第二十二話 二階のリフォーム
一階のリフォームの翌日。
リフォームというのかも一日目にしてすでに怪しくなってきている。
全部作り変えたから、建て替えみたいなものかもしれない。それでも一階層ずつだし、利便性もあるのでここからもリフォームと表現することにしよう。
ちなみに俺たちは五階に客室を用意されていたので、そこで寝泊まりすることになっている。
それと、地下室のことに関してはすでに終わっていた。
幼そうな男(ただ単に身長が低いというだけのことなのだが)から、この地下室に関していろいろと頼みごとをされた。
なんでも、万が一の場合に利用できる牢屋を作ってほしいとのこと。
俺も流石に実用的なものは作りたくなかったが、仕方なくなんとなくで牢屋を創った。
本当になんとなくなので、仕掛けは一切ない。一切ないというと間違いがあるので一応ここで弁明しておくが、その牢屋は地下室の更に下だった。
というのも、一度地下室に降りても小さな燭台しか無かったのだが、その奥の石を押し込むことで牢屋のエリアに入れるようになっている。
無論、この仕掛けは俺が創ったものではない。そしてガイアが勝手に創ったものではないことはここで明らかにしておこう。
元からあったのだ。この仕掛けは。
あの男が事前に用意していたものかは分からない。
この牢屋が人の拉致監禁に使われることがないように祈るばかりだ。
牢屋の話はもう終わり。次は本題の、二階層の話だ。
ここも、一階と同じようにリフォームしていく。
黒い壁を温かみのある木の壁に、床をタイルからV字のやつに、ランプをひし形から釣り鐘型に、絨毯を綺麗にし、同様にカーテンと窓ガラスも綺麗にする。
そして一階層同様綺麗になった二階層。
中庭は潰されて新たにスペースが作られ、その部屋にも俺が仕掛けたものがいっぱいある。
《二階にも仕掛けるつもりなの……?》
まあ、そんな感じ?
じゃあ、今頭の中に浮かんでる感じに創ってくれ。
《うわ……相変わらずだねぇ。》
そんなに引くことか?
そんなものだろ。
《いや、命を奪わないのはいいことだとは思うよ?
それでもさ、こういう心臓に悪いのとかグロいのは辞めたほうがいいと思うんだけどなぁ。
いい?忠告したからね?》
―――その後―――
待ちに待った紹介タイムです!
さて、今日は俺が二階に作った部屋をご紹介しよう。
まずは時計部屋。壁の四方に戸棚がついており、隙間なく時計が並べられている部屋。
腕時計、壁掛け時計、目覚まし時計、アナログ時計、デジタル時計、なんでもござれ。時計店より取り扱いの幅が広いんじゃないかというくらいの時計の量。
ここに、とある仕掛けを用意させていただきました。
それが、この中の時計を一つでも壊すと下の階の椅子にくくりつけられるというもの。
そう。あの仮面の部屋の椅子である。
縄は自力じゃほどけない。猿轡も同様だ。
なので、一人でこんなことが起ころうものならそこに縛り付けられたまま。
対象にエイトは外しておいた。万が一のことがあったら大変だからだ。
そして次の部屋が、もともと中庭があった場所に造られた部屋だ。
上がガラス張りで、その上にスライムが大量にいる部屋。
部屋としてはなんとも殺風景なのだが、天井は全て強化ガラス。そしてそれには大量のスライムと水が乗っている。
昼間の日が差している時間帯はキラキラと反射して綺麗。夜になるとスライムからわずかに光がでてくるので、それはそれで趣のあるというものだ。
多分今まで俺が作った中でこれが一番マトモだと思う。
だが、そんな百万年に一度のマトモパートはここで断ち切らせてもらおう。
続いては、部屋の中央に謎の石柱が立っている部屋だ。
その石柱には謎の紋章が紫色のわずかに光る塗料で描かれていて、床には石柱を中心に、まるで毛細血管のようにその塗料と同じ色の模様のようなものが広がっている。
ここの窓ガラスはあえて鉄板でふさぎ、照明も暗くしておいた。これによって謎のホラー感とミステリー感が演出できるというわけだ。
そして四つ目。
これは渾身の一撃。
ひときわ広い部屋に、幾つもの長机が置かれています。
イメージで言うと展覧会みたいな感じだと思ってもらっていい。
で、その長机の上には等間隔で円柱の形の容器が置いてある。
その中に入っているもの―――それは、まあさまざまだ。
焦らして悪いな。さまざまと言ったのには理由がある。書いて字の通り、さまざまだ。
人の生首のときもあれば、SF映画でよく出てくる脳みそだけのやつもある。
人の生首は、容器に水と一緒に詰めてある。
そして脳みその方は、容器の半分を黄色い液体が満たし、その上にプカプカ浮かんでいるのだ。
もう数種類も紹介しよう。
人の頭蓋骨。これは一部にヒビが入った状態で逆さにし、水と一緒に封じてある。
眼球。人のものにそっくりな見た目にしたが、大きさは人のものの何倍も大きい。それがホルマリン液の中にプカプカと浮かんでいる。
で、たまにそれが見てくる人の方向を見たりしてね。なんて怖いことは起こらないけど、そこに存在するだけで十分恐怖だろう。
内容物は他にも数種類あるが、これで最後にしよう。
悪魔の手。手首から先の、毛むくじゃらの悪魔の一部。
もちろん本当の悪魔ではない。作り物だ。それが、まるでメロンソーダのような鮮やかな緑色の液の中に沈んでいる。
さあ、これらを頭の中にイメージしてみて、君たちはどう思うだろうか。
果たしてこれを目にする人がエイトと幹部以外に現れるのかは怪しいところではあるが、こうして考え抜いて作った作品たちだ。もしそんな機会があれば、ちゃんとしたリアクションを取ってほしいものだな。
《こんなことをすぐに考えつくトモキ君もそうだけどさ、トモキくんに負けて作るのを手伝ってしまう僕も大概だよね。
今これを見て改めてそう感じてしまったよ。》
などと言うガイアと、これに関しては別になんとも思っていない俺。
主従関係があるにしろ、タイプが違いすぎるな。
《僕はトモキ君と僕の相性はいいと思ってるよ?》
その理由は?
《だって、こうして仲いいじゃん。》
あ、そういう。
《じゃあ逆にどういうことだと思ったの?彼氏彼女の相性?仕事相手の相性?それとも、身体の相性?》
強いて言うなら二番目だ。
ちなみに俺はお前に対して性的感情を抱いたことは一度もないからな?
《どうせ胸でしょ?》
大正解。
《当てちゃったら自虐になっちゃうんだけどね》
思えば、こんな会話をするのも久しぶりだな。
ソフォスが入ってからは三人の掛け合いだったし。
《何最終回感出してるの?終わらないでしょ?》
うん。終わらないよ?俺はそう簡単には死なないからな。
《でしょ?じゃあ早く残り創ってしまって、物語を紡いでいかないとね。》
そうだな。そのとおりだ。
合間合間でそんな会話をしつつも、俺とガイアは手と足と頭を動かしながら作業を続けていくのだった。