第十五話 日常報告
ダンジョンに攻めてきたオークの大軍の総大将である魔王軍幹部を退けた俺たち。
その後はクエストを次々にこなしていた。
おっと、いきなり情報量が多かったかな?まあこれまでの物語は読んでくれている人たちにはわかるだろう。
ちなみに今回は俺の語りだけだ。無論、次話からは会話とかもあるので、ご心配なく。
それはそうと俺たちはダンジョンで三日ほどくつろぎ、ソフォスの熱中具合が収まってきたところでアクロに出発した。
出発したといっても、テレポートで移動したので一瞬なのだが。
まあそんな細かいことはどうでもいいのだけれど、前回吸血樹銀狼を倒した俺たちはランクが上がって、組合の中で一躍有名に。
まあ組合は組合でもアクロの中だけだが。
俺は当初―――まあどの冒険者も、Fランクからスタートする。
俺もFランクだった。だけど、よほど難しいクエストだったのか一気にDランクに到達。
酒場でも噂が広がった。
ちなみにここの冒険者の平均ランクはC+らしく、Dランクの四つ上だ。
それでもたった一日でDランクに到達した冒険者となったのだ。
ちなみにソフォスのランクは驚くべきB+。これは熟練冒険者と言ってもいいレベルなんだそうだ。
そんなこともあったのだが、俺とソフォスとガイアは掲示板にあったクエストを適当に選んでこなしていく。
薬草の採集、雑魚モンスターたちの討伐、洞窟探索、ダンジョン調査(俺のとは別のダンジョン)、アンデッド狩り、農家のおじさんたちのお手伝い、酒場のバイト、魔道具の仕入れの手伝い等など。
最後らへんに至ってはもう冒険者じゃなくてもいいだろうという近所のボランティアみたいな感じの活動だった。
別にそれ相応の報酬はもらえるから、危険じゃないだけいいけど。
まあそんな調子でボランティアをしていっても当然だがランクは上がらない。
金は貯まるが、コスパが悪すぎる。
そこで俺たちは、これまで避けてきた高難易度クエストを一つやってみることにしたのだ。
難易度★★★や★★★★や★★★★★があったので、まずは★★★からやってみることに決めた。
吸血樹銀狼の討伐クエストもこれくらいの難易度だったので、ちょうどいいだろうと思っていたのだ。
だがしかし。大苦戦。
ちなみに何のクエストかというと、近くの森の殺人大虎の討伐。
危険度はA−。一体だけならまだ良かった。俺の【聖剣之神】で斬り殺せたのだから。
だが、群だとは聞いてなかった。そんな情報聞いてねえよこの野郎!先に言えよ!
見張りの一体を何の考えもなしに斬り殺してしまったので、群れの逆鱗に触れてしまった。
いやこの場合は虎が相手だから、虎の尾を踏むという表現が正しいのか?
ほら、龍と虎って対になるじゃん。だから表現もわけたほうがいいかなって。
え?どうでもいい?
まあいいか。
とにかく、俺はこれで終わると思って斬り殺してしまったのだ。
そうしたら、その虎がいた奥の方の洞窟から何匹もの虎が出てきて、グルルルルと喉を鳴らして威嚇の体勢をとっていた。
しまった。そう思った頃にはもう遅い。
怒った虎たちは全速力で俺たちを追いかけてくる。
「何してんのトモキ君!」とか「見張りは倒しちゃ駄目ってあれほど言ったじゃないか!」とか二人は喚いていたが、そんなの仕方ないじゃん。
そもそも群れだなんて聞いてなかったし。しかもソフォスはそう言っているけど、実際は何も言わなかったし。ガイアも「こいつを倒せば終わりなのかな」とか言ってたし。
濡れ衣だぞ。
そしてちまちまと倒しながら鬼ごっこはしばらく続き、やがて追っ手は居なくなった。
俺たちが走ってきた道のりには、血と虎の死体が落ちている。
虎の全力疾走で人間である俺たちが逃げ切れた理由。それは、クエストの中で俺が何気なく習得していたスキル【追い風】によるものだった。
足が速くなるこのスキル、これが結構役に立つのだ。
重いものを持っていても通常のスピードで走れるし、後ろ向きでも普通の速さは出る。
便利そうだなぁと習得していたものが、こんなところで役に立つとは。
ちなみに足が速くなると言っても体力は据え置きなので当然消耗する。
それが虎に対抗するように全力疾走だったのならなおさらだ。足がパンパンで、必死に酸素を貪る。
正直これで終わりにしたいと思っていたら、俺のスキル【多次元解釈】の【魔力感知】に反応が。
どうやらまだ五体ほど残っているようだ。
一息……というか一休みした後息を整えて、俺たちは残党の始末に行く。
負った怪我などもソフォスの魔法で治癒しているため、好調だった。
五体同時相手だったので流石に骨が折れたが、俺の広範囲斬撃とソフォスの魔法で一掃できた。
かなり危険なクエストとなったのだが、神之権能のお陰で達成。
その後は街に戻ってクエストの精算。
報酬は金額十二枚。俺が貰えたのは半分の六枚。日本円にして六万円だ。
やっぱり日本円換算だと割に合わない仕事な気もするけど、別に怪我も軽傷だし完治してるし、死ななかったし、そう考えたらまあいいかなと許せる範囲だった。
いや、絶対割に合ってないよね。文字通り命懸けて貰えたのが六万円だぞ?
某韓国ドラマでは四十五億六千万円なのに。
まあ現実でドラマみたいなことが起こることなんて万に一つもないんだから、夢なんて見るなよということです。はい。
話を戻そう。クエストが終わった後、あのいつも気だるそうなお姉さんからランクアップを告げられた。
DランクからC−ランクに。
その後も一ヶ月ほどかけて、ランクと神之権能にかまけてクエストを受けまくり、稼ぎまくった。
貯金は今やおよそ二百三十万円。これが月給なんだから恐ろしい。
そしてランクは平均の上であるB−ランクまで到達。ソフォスはAランクになるための試験に挑むんだそう。
ちなみにB−ランクから上になるには試験があり、それを合格しないと上がらないという仕組みなのだそう。
資格の取得みたいな感じだといえばわかるかな?
まあ要するにそんなシステムなんだ。
この街に来て一ヶ月。ようやくシステムを理解してきて、組合に馴染んできた俺は、冒険者の友達もたくさんできてきた。
男も、女も。男の冒険者は強いやつと仲良くなると何かと融通を利かせてもらえるため、俺もそれを狙って強いやつとコネを作った。
というよりかは向こうから話しかけてきたような感じだけれど。
正直、冒険者ライフが楽しい。ガイアやソフォスもそれぞれ友達を作ったようで、たまに酒場でワイワイ飲み会をしたりする。
あ、ちなみに俺は高一でこっちに来たから未成年なんだけど、この世界の酒の対象年齢は十四才からなんだそう。
勧められて試しに飲んでみたら、意外と美味しかった。
フルーツカクテルか何かなのだろうか、なんだかフルーティーな風味で、アルコールもあったけどかなり美味しい。
まあビールとかワインはないらしい。
高級品の部類なんだそうだ。
さて、ここまで語り続けてきたのだが、みんな飽きてない?
文章ギッチギチで読むのもめんどくさいから適当に飛ばしながら読んだりしてない?
早く会話出せよとか思ってない?
もうそろそろこの話も終わると思うから、次回に期待してくれ。
「おーい!トモキくーん?そろそろアクロ行くよー?」
「はーい!今準備中だからちょっと待ってー!」
ちなみに俺は今ダンジョンの最下層にある自室でこの話の語り手をしていた。
どうやらまたクエストに出発するようなので、今日はこの辺で失礼するとしよう。
日常報告、活動報告及び近況報告はこれにて終了。
これからもこの物語を楽しんでくれ。