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第十三話 ダンジョンの本領発揮

 家にソフォスを招待して、はしゃぎまわっていた。

 いや、俺がはしゃぎまわったわけではない。あくまでソフォスがはしゃぎまわったのだ。

 ベッドやテーブルや照明や水回りや何やらを見て、テンションが上がっていた。

 俺はとりあえずソフォスを落ち着かせて、客室に案内することにした。

 客室は見たことなかったような気もしなくもないけど、中はすごかった。

ホテル。ふかふかそうなベッドに、本棚、テーブルと椅子、あと小型のなんかの機械がいくつかあった。


「これは……醸造台?それに魔法陣展開装置!?

ストーン・スタンドまで!?

ガイア、これ自由に使っていいの!?」

「もちろん。ソフォスちゃんの使いたいようにどうぞ?」

「ありがとう!こんな手に入りにくい魔道具たちが使えるなんて、感謝しかないよ!」


 なんだかソフォスが興奮している。

 そしてソフォスは下の戸棚から何かを取り出してきて、機械をいじり始めた。


「素材まで……」


 あれはガラスのビンか?それに何かの赤い粉と藍色の粉。とろっとした黄色のゲル状のものも。

 ソフォスは洗面所にガラスビンを持っていった。

そして水を入れて戻ってくると、機械の一つにそのガラスビンを設置する。


「何を作ろうか……

赤石粉とパラリシススライム、魔鉱石の粉末……」


 何やらブツブツと呟きながら戸棚の中を漁っている。

その目は先程のテンションが信じられないくらいに真剣だ。


「夜光輝石もある。インビジブルスライムも。

流石にスライム以外はないか……いや、でもこれだけあれば……

後は強化用と延長用を……あった。」


 そして戸棚から幾つかの素材を取り出してきて、機械の前に並べていく。

 蛍光塗料のような色の粉末と、白く半透明なスライム体。そして青い粉末、何かのポーション、小さな黄色のクリスタル。

 ソフォスは水を入れたビンの中に蛍光色の粉末をサラサラと投入。それから黄色のクリスタルとポーションの中身を入れて、機械にかけた。

 その機械は謎の光を発してビンに光を放射。

 するとビンの中の素材たちは混じり合い、黄緑色の液体になった。

 そこからスライム体と青い粉末を投入。さらに光を放射していく。

 マーブルというのだろうか、グワングワンした、黄色と青と黄緑色が微妙に混ざり合った色合いの液体ができた。


「こんなものかな……」


 ソフォスはそのビンを手に取り、中身の液体を少し揺らして観察したあと、ビンの口を自らの口につけ、中身を一気に飲み干した。


「うわ!?飲んで大丈夫なのか!?」

「ぷはぁ。やっぱり味はあまりおいしくはないな……」


 おそらくはなんかのポーションだと思うけど、味は美味しくないらしい。


「でも、効果はちゃんとある。よしよし。」

「ちなみにどんな効果なんだ?」

「地中が透けて見える効果。

ちなみにこの家の真上にオーガたちが集まってる光景が見えるよ。」


 そう言いながらソフォスは上を見上げる。

 というか、オーガ?なぜ?

 初日に現れたオーガたちか?

 いろいろ気になったので俺とガイアはリビングに戻ってテレビをつけ、監視カメラの様子を見てみる。

 監視カメラは七台に増えていた―――なんてことは今は置いといて、その中の第一カメラを拡大する。

 そこにあったのは、凄まじい光景だった。

 ダンジョンの入り口の前に群がる、大量の武装したオーガたち。

 よく見るとゴブリンとかもいる。

 そんな大群―――いや大軍が、ダンジョンに入ろうとしていた。

 入り口は開け放たれている。今判明したから、おそらくはもうすでに侵入されているだろう。

 どこまで進軍しているのか調べるため、続いて第二カメラをつけてみる。

 このカメラは十階層のボス部屋のようだ。

 まだゴーレムは生きているので、少なくともここまで到達はしていない。

 一階の迷路で迷ってるのか?だったら迷路として機能してるから実験成功ということになる。


「ガイア、ボス階層以外の階層の様子って見れないのか?」

「見れなくもないよ?管理者モードで見に行けば、トラップが作動することもないし相手はこっちを認識できないから安全に見に行ける。

ゲブラー君に頼めば簡単だよ。」

「そのゲブラーは?」

「お呼びでしょうか。」

「うわ!?」


 その管理者モードとやらにするためにゲブラーを呼ぼうと思ったのだが、いつの間にか俺の背後にいた。

見た目が見た目だけに不気味なんだよなぁ、こいつ。


「ゲブラー君、僕とトモキ君を管理者モードにしてくれるかな。こっちに戻ってきたら元の状態に戻してね。」

「了解しました。」


 すると、突然俺とガイアの身体が半透明になった。


『これが管理者モード?』

『今僕とトモキ君は幽霊みたいな状態なんだ。

これで階層を見ていけば安全だよ。』

『そんな便利な機能が……

よし、それじゃあ一階層を見に行くか。』

『おー!』


 どうやらこのモード、物質を貫通できるし視認も感知もできないらしい。

 試しにまだ真剣に実験に取り組んでいるソフォスに会いに行ったが、気づく様子はなかった。

単に集中すると周りが見えなくなるだけかもしれないけど。

 それと、壁を貫通できるので地中を突き抜けて一階層まで進んだ。

 外はもう暗いが、たくさんのオーガたちが入り口に群がっていた。

 一階層の巨大迷路をみてみると、いくつものトラップが作動していて、通路には大量のオーガたちが。

 オーガは身体が大きいため動きにくそうだったが、ゴブリンやなんか変な生き物(トロールみたいなやつ。後でガイアに聞いてみたらコボルトらしい。)は小柄なので移動しやすそうだった。

 だが、入り組んだ迷路とあちこちに仕掛けられているトラップの餌食になり、どんどん命を落としていくオーガたち。

 トラップ迷路としての機構はしっかり動作しているようだ。

 何体か迷路を突破して二階層へと進んだゴブリンもいたが、二階層はゴブリン階層。

つまり俺のゴブリンと敵のゴブリンが殺し合う、同種族同士の戦いが始まったのだ。

 だが、多勢に無勢で俺のゴブリンの圧勝。

 その後も何体か辿り着いたが、迷宮ゴブリンと戦いになって儚く散っていった。

 それからしばらく見ていたのだが、二階層を突破するものが出てくることなく無数の命が迷宮の餌食とっていったのだった。

 迷宮がちゃんと動作しているのもわかったし、後はこの状況がどうして起こっているのか突き止めるだけだ。

 改めて外に出てみると、最初よりもオーガたちの数が大分減っていることが目に見えて分かった。

 どうやら無限増殖なんていう意味わからん攻城戦ではなかったようだ。

 有限なのはわかったけど、問題はこの状況が何故、どうやって、誰によって引き起こされたかということだ。

 軍団なのだから当然指揮しているリーダー的なやつがいるだろう。

そいつがいると仮定すると、何故そいつはこんな辺鄙なところを攻めに来たのか、そもそもどうやってこのモンスターたちを指揮しているのか。

いろいろな疑問が浮上してくる。

 そこで、管理者モードでの活動範囲限界まで移動したあと、辺りを見渡してみる。

 すると軍勢の奥の方に、宙に浮かぶ人影が見えた。

 いや、その影だけで人間ではないことはわかる。

 逆光とはいえ、影だけでもわかる異変。

それは―――

 背中に翼が生えているのだ。

 色は詳しくは分からないが、多分黒い。

漆黒の翼が一対、背中から生えている。

 どなたなのかは分からないけど、迷惑なのでさっさとお引き取り願いたい。

 ―――あ、そういうことか。強敵遭遇イベントか。

 え、じゃあこいつ倒さないと進まないってこと?

 迷宮を一生狙われ続けるってこと?

 いや、狙われ続けなくてもなんでもどのみちこの時点でこちらに害がある存在だとはわかっている。

 大丈夫だ。なんたってこっちには神の権能であるガイアがいるのだから。

きっと勝てるだろう。

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