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第九話 初めての街へ

 ダンジョンを作り終わった。

 そして、今はベッドの上でゴロゴロしている。

 何もせず、ただゴロゴロと。


《ダンジョン作りが終わったからって、ちょっとだらけ過ぎじゃない?》


 そうか?一つの大きな目標を達成したんだから、怠けたっていいだろ。


《いやそうなんだけどさ、目標を達成したならまた別の目標を探したらいいじゃん。》


 え〜。て言ってもそんなに大きなイベント起こらないし、どうしたらいいの?


《動いてないからイベントが起こらないんでしょ。

まずは街に行ってみたら?ちょっと遠いけど大きな都市はあるみたいだし。》


 どれくらいの距離?


《三十キロくらい?》


 無理。


《そんなに即答しなくても……》


 言っておくけど、インドア勢なめんなよ。そんなに歩けないぞ。いけて三キロだぞ。十分の一だぞ。


《乗り物作ればいいじゃん。》


 あ。その手があったか。


《そうそう。このなんか変な二輪車とか、この―――なにこれ。分からないけど、とりあえず記憶にあったものは再現できるよ?》


 じゃあ、ヨギボーで。


《ヨギボー?ちょっと待ってね……て、ちょっとなにこれ!動かない気まんまんじゃん!》


 そうだよ?人を駄目にする枕が再現できるとなると、それを作らない手はないだろう!


《駄目!そんなことしたら本当に駄目になるよ!》


 早く作ってよ。


《街に行ってからね。》


 え〜。それってどうしてもか?


《そう。どうしても。だから早く乗り物でも何でも選んで、出発するよ?》


 ―――わかったよ。行けばいいんだな?


《そう。そして冒険者登録して、クエストするの。

それのほうがただ家にこもってぐーたらしてるだけのヒキニートより数倍いいよ。》


 ひどい言いようだな。

 まあでもその通りでもあるし、何もすることもなかったのでいい気分転換になるかなと特に何も考えることなく街に行く決意をした。

 ガイアが生成してくれた服を着て、大容量のカバンを背負っていざ出発。

 ワープポータルによって外に出てからは、方向とか何もわからないのでここからはガイアが頼りだ。


《はーい。えーっと、まずは今向いてる方向に進んでいって。》


 え、歩くの?


《あ、そうだったね。ほい。二輪車。》


 そう言って煙とともに目の前に現れたのは、キックスケーター。

 黒に青い蛍光ラインが引かれている、サイバー感がある代物だった。

 つまり、これに乗れと。


《うん。この世界でそんなに違和感がないやつがこれかなって思って。》


 こんなカラーリングだったら思いっきり目立つと思うけど。


《歩く?》


 すいません。文句は言いません。


《全く。

で、それに乗って目線の方向にまっすぐね。》


 キックスケーターに乗って、左足で地面を蹴りながら正面に進んでいく。

 風を切って進んでいくキックスケーター。字面だけ見たら爽快だろう。まあ実際爽快ではある。ただ、一つ問題があった。

 現代日本では別に特に問題にはならないだろう。

 でも、これは文明がさほど発達していないこの世界だからこその問題である。

 路面が不安定。あちこちに大きな石や砂利が落ちているし木の根などが邪魔なので、運転は大変だし乗り心地は最悪だった。

ガタガタガタという振動がもろに身体に伝わってくる。非常に不快。だけれども、今移動手段がこれしかないのだ。文句言ったらガイアに歩かされるからな。

 どんどん進んでいく。まあ森の中だからまっすぐ進むのには苦戦したが、それでも出来るだけ直線に進んでいった。

方向が間違っていたらガイアが教えてくれるだろう。

 そんな感じでキックスケーターをこいで十数分。

 目の前に開けた場所と建物が見えてきた。

 街ではない。普通の、石や木などで出来た民家のような建物。

 その開けた場所に出てみると、そこがどこなのかわかった。

 村。集落と言ってもいい。ごくごく普通の、アニメとかで見る村。その平和な村に辿り着いたところで、ガイアからの指示が入る。


《この村を突っ切って、反対側に出て。》


 だそうだ。

 村の中央を突っ切り、村の反対側の門に着く。

門といっても粗末な木の枝の門だ。いや、今はその説明は要らない。

 村の反対側まで来たところで、再びガイアからの指示が。


《ここから十一時の方向に進んで。》


 十一時?

 物語とかでよくその表現を聞くけど、どっちが十一時なんだ?


《今トモキ君が見ている方向を十二時として、それの十一時。》


 なるほど。要するに左斜め前というわけだ。


《―――まあそんな感じの解釈で合ってるけど、より細かい場合にね。》


 そこからはガイアの言う通り十一時の方向へと進んでいく。

再び森に入ったが、十分ほどキックスケーターで走っていたら森を抜けた。

 その先に広がるのは、平原。

 多少の地形の凹凸はあるが、木はまばらにしか生えていない草原だった。

 そんなほぼ平らと言っていいほどの平原で、目的の街を見つけるのは容易。児戯に等しい。

 テンション上がって速度を上げて、丘をスイスイ、くぼみをスイスイ。

 そして起こった一つのアクシデント。


「おわっ!」


 身体は宙に浮いて弧を描き、背中から地面に打ち付けられる。

 ヘルメットを被っていなかったので頭を地面に強く打ち付けてしまった。

 そう。転んだのである。結構派手に。

 身体中泥まみれ。土まみれ。


《あれま。ずいぶん派手に転んだもんだね。》

「ちょっと君!大丈夫かい!?」


 ガイアとは別の、そんな声が遠くから聞こえてくる。

 地面に仰向けに倒れたまま、起き上がる気力も出せずに首だけ動かして声のする方向を見る。

 そちらから走ってきたのは、透き通るような水色の長髪が目立つ、女性だった。


「ずいぶん大きな音がしたけど、君、立てるかい?」

「う、うん……」


 手を差し伸べられ、俺はその手を掴んでなんとか立ち上がる。

 そして体についた土を払い落とし、目の前の女性に礼を言う。


「ありがとう。」

「いやいや、困ったときはお互い様だよ。

それよりこの乗り物が気になるんだけど、他者の詮索なんてするもんじゃないからね。」


 そう言って女性は横転しているキックスケーターに目をやる。


「まあ、これからは気を付けてね。

君、冒険者らしいけど、この街を目指してきたのかい?」

「はい。」

「そうかいそうかい。じゃあ、またどこかで会えるかもしれないね。

案外再会ってのは早いもんだしさ。

―――って、君、そこ怪我してるよ?」


 女性が指を差した部分、自分の右肘を見ると、擦り傷ができていた。


「ちょっと待っててね。」


 女性は擦り傷に手のひらを近づける。

 そして“ヒール”と唱えると、擦り傷はほんのり温かい光にさらされて完治した。

 これが回復魔法というやつだろうか。

 なんて凄いんだろう。


 俺の怪我を治療したあと、「じゃあ、元気でね!」と言って女性は去っていった。

 名前を聞き忘れた。またどこかで会えるかもとは言っていたが、せめて名前は知りたかった。

 謎に包まれた蒼髪美女。喋り方は活発なイメージだったが、外見は清楚系という言葉が似合う美人だった。


《何?トモキ君、今の娘に一目惚れしたの?》


 んなわけねえよ、転んだところを助けてもらったところで。


《変だなぁ。美女ならここにもいるのに。》


 え?どこだ?


《ここだよ、ここここ。金髪美女がここにいるじゃあないか。》


 お前はどちらかといえば美少女の部類だけどな。


《少女かぁ。いいね。なかなか見る目があるじゃん。

私を年上扱いしないところが加点ポイントだね。》


 何やら自虐っぽいことを言っているが、正直それほど興味はないので聞き流す。

 

 あの女性との出会いが偶然か、はたまた必然なのかどうかは分からないが、きっとあの女性はまた会えるだろう。そう思いながら、とりあえず俺は目の前にある都市へと入ることにした。

 城門に向かい、そこに設置されていた受付のようなところに行く。


 その後受付を済ませて、街に入った。

 ―――なんというか、もうちょっとセキュリティとかしっかりしたら?

 あまりにもサクッと入れたので拍子抜けというか、せめて身分確認くらいはしたほうがいいと思う。

 だがそのお陰でこうして街に入れたので、どうこう言うこともないだろう。

 街並みは、よく異世界系のアニメなどでみる中世のドイツ風。

 街道はきっちりと整備されている。

 今俺がいる街道をまっすぐ見ると、大きな建物があった。

 青い屋根と、ちょっとした城のような白い壁。

 何かの施設だろうか。


《どうやらあそこが冒険者組合みたいだね。》


 ガイアによると、その建物が冒険者たちの本部、冒険者組合の施設なんだそう。

 まあ俺の今回の目的は冒険者になるということだし、もしかしたらあそこで冒険者登録とかできるかもしれない。

 そう思って、俺はまっすぐ街道を進んでいく。


 冒険者組合。その施設の前に俺。

 やや緊張するけれど、恐る恐るドアノブに手をかける。

両開き式の扉を押し開け、中に入る。

 受付らしき窓口が四つ手前にあり、奥は何かの店や酒場などがあった。

 冒険者登録をするために俺は手前にあった窓口に向かった。

 三つは誰もいなかったが、一つに受付の人がいた。


「ご要件は?」

「冒険者の登録ってできますかね。」

「ああ、冒険者登録ですね。

じゃあ……まずこちらの紙に必要事項を記入してください。」


 ややぶっきらぼうな口調で、だるそうにそう言う受付のお姉さん。

 バインダーのような木の板と、その上に乗せられた羊皮紙、そしてペンを手渡してきた。

 どうやら書類のようなもので、生年月日や性別、年齢、氏名、希望職などを問われる。

 それをスラスラと書き終え、書類の欄を全て埋めてからお姉さんに返す。


「はい、トキワ・トモキさん。希望職は魔法使いですか。

ではこの魔道具に手を当ててください。」


 そう言って差し出されたのは、ガラス板のような、液晶端末のようなもの。


《これはステータスを測るようの魔道具だね。

そこの手形に合わせて手を置いてみて。》


 確かにガラス板には手形が描かれている。

 その手形に手を置いてみると、ガラスが水色の光を一瞬発した。

 そしてその光を見てお姉さんはガラス板を回収。画面らしき部分に映った文字を読む。


「……このステータスだと魔法職は難しそうですね―――っ!?

え、ちょっと待ってください、なんですかこのスキル」


 文字を見て驚くお姉さん。

 恐らくそこには「神之権能(ゴッドスキル)」か「【創造之神(ガイア)】」とでも書かれてるのだろう。


「はい、神之権能(ゴッドスキル)ですけど。」

「え、あ、え………

ええとこういう場合は……

ああ、ええと、このスキルの効果って?」

「物質創造です。」

「物質創造……でしたら……職業は……

いや、何でもいいですが、魔法職は辞めておいたほうがいいでしょうね。魔力は微量でしたから。」


 剣と魔法の異世界で、魔法が使えないなんてことあり得るか!?

 いや、こういうときは切り替えが大事。魔法が駄目なら剣だ。剣士になろう。


「じゃあ剣士で。」

「はい、分かりました。

じゃあそれで受理しときますんで、後はクエストを受けるなりパーティメンバーを探すなり頑張ってください。」


 その後一通り説明を受けた。

 クエストのことについてや、パーティのこと、報酬に関して等など。

 だいたいは理解できた(ような気がする)。

 冒険者登録完了。これで俺は冒険者となったのだった。

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