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第八話 ダンジョンのボス

 五十四階層まで完成。残りはあと一階層。ボス階層、五十五階層を作るのみ。


《途中のボス階層は作らなくていいの?》


 え、あ、そうだった。すっかり忘れてた。

 十階、二十階、三十階、四十階、四十九階。それぞれにボスを設置し、ゲーム風にしようと考えていたんだっけ。

 じゃあとりあえず十階に移動。


《―――テレポート使う?》


 もちろん。


 そして俺はテレポートで十階までやってきた。

 脳内マップで場所を把握。十一階へと続く階段の直前にボス部屋を設置。

 ボスは…………まずはゴーレムにしよう。


《素材は?》


 なんか硬いやつ。


《なんかって……まあいいや、魔鉄でいい?》


 魔鉄って?


《鋼鉄に大量に魔力を込めて、硬質化させたやつ。》


 じゃあそれで。


《大きさは?》


 二メートル。


《了解。すぐ作り終わると思うから、二十階層のボスでも考えといて。》


 と。

 少し待つと、ボス部屋の中央にまるでロボットのような人型のゴーレムが生成されていく。

 ロボットと言っても、あのペッ○ーくんとかじゃないよ?戦隊ヒーローとかの巨大ロボットみたいな感じのやつ。

それの小型版が、みるみるうちに目の前で組み立てられていくのだ。壮観。


《はい、出来たよ。

ここを守護する命令もしておいたから、次に行こう。》


 そう言ってテレポートにより飛ばされたのは、二十階。

ここにも先ほどと同じ要領でボス部屋を作り、その中にボスを召喚する。

 次のボスはケンタウロス。


《けんたうろす?あ、ちょっと待って―――あった。上半身が人間で、下半身が馬なの?

なにこれ。変なの。》


 ダンジョンといえばのモンスター。ちょっと気持ち悪いところはあるけど、二十階くらいだったら別に問題はないだろう。


《まあ確かに、五十六階層より遠いほうがいいもんね。》


 見た目ゴツいし、家の近くにいたらなんとなくやだなぁーという感じ。

かといってダンジョンで最初のボスがこいつだとなんだかしっくりこないので、間を取って二十階層にしたのだ。


《なるほどね。じゃあこれ通りに再現したらいいかな》


 これ通りがどんなやつなのか分からないが、まあそこら辺は任せる。


《おっけー。それじゃあ、召喚!》


 ガイアがそういった途端、ボス部屋の中央に紫色の魔法陣が展開され、淡い光を放ち始める。


《いでよ、守護者ケンタウロス!!》


 すると、魔法陣の中央に光が集められてケンタウロスの形に変わっていく。

 その光の塊は霧散。そこには俺のイメージ通りのケンタウロスが立っていた。

 上半身は古代ローマ風の男。下半身は焦げ茶色の毛色の馬。その手には先端に円錐状の刃物がついた棍棒のようなもの―――メイスとでも言ったほうがいいのだろうか―――がしっかりと握られていた。


「我が主。なんなりとご命令を。」


 ケンタウロスは俺に向かってひざまずく(馬だから器用にしゃがんだようにしか見えないけれど)。


「この部屋を守護してくれ。次階層に繋がる階段を、何人たりとも通らせるな。」

「承知。」


 ケンタウロスは俺の命令に従い、この階層―――この部屋の守護を開始した。

 二十階層のボスも設置できた。次は三十階層。


 続いての三十階層にテレポートし、手際よくボス部屋を生成。

 次はどんなボスがいいかな……


《確かダンジョン作り出す前に考えてなかったっけ。

オーガじゃない?》


 あ、そうそう。オーガ。

 でもオーガって言っても普通のじゃ何のインパクトもないし、五十一階層に設置したような大鬼之狂王(ビーストオーガ)とは違うやつがいいな。ガイア、なんかない?


大鬼之狂王(ビースト・オーガ)とは違うやつ?

うーん………

あ、大鬼之凶王(エビル・オーガ)は?》


 エビルオーガ?


《うん。大鬼之狂王(ビースト・オーガ)と似たようなものなんだけど、こっちのほうが知性があるやつ。》


 知性があるなら守護者を任せやすいな。よし、それにしよう。


《召喚!》


 先程のケンタウロスと同じようにボス部屋の中央に魔法陣が展開され、光が集まって人型になっていく。

 そして光は霧散。そこに立っていたのは赤い身体をした、筋肉ムキムキのオーガ。

 両手には大きく湾曲した大剣を持っている。ちなみに腰布一枚の上半身裸の格好で。


「アルジ。ワレ、ナニヲスル。」

「この部屋を侵入者から守ってくれ。蟻一匹通らせるな。」

「ワカッタ。ダレモトオサナイ。」


 低いカタコトの声。

 俺は召喚されたオーガにそう命令し、次なる四十階層へとテレポートした。


 四十階階層のボスは、もう決まっている。

 テレポートしてボス部屋を生成。そしてそこにボスを召喚する。


《もったいぶらないで早く教えてよ!》


 そう。それは………ガーゴイル。


《溜めて言うほどのことでもないよね。》


 そうだな。わざわざ溜めなくても良かったかもしれない。


《で、そのガーゴイルを召喚したらいいのね?》


 そういうことだ。じゃ、あとよろしく。


《召喚!》


 魔法陣が展開されて、中央にガーゴイルが召喚される。

もう三度目だからわざわざ説明しなくてもわかるだろ。

だから詳しい部分は端折る。


「グガ

ガグギ。ゴゴグゴグゴ」


なんて言ってるか分からないけど、とりあえず命令する。


「この部屋を死守してくれ。誰も通ることを許すな。」

「ガガ!

ギゴゴゴゴゴゴギギ」


 最後までなんて言ってるか分からないまま、俺は四十九階層へとテレポートした。


 なぜ四十九階なのか。普通五十階だろう。そう思っているそこのあなた。

五十階層は罠だらけなので、ボスを設置するには不向き。そこでその一個手前の四十九階層でボスを設置することにしたのだ。

 ここのボスは、グリフォン。

どっかの神話か何かの、空想上の生き物だ。


《神話ではないね。伝説上の生き物として有名なやつでしょ?》


 神話じゃないのか。

 まあそのグリフォンだ。


《じゃあ召喚するよ?》


 ボス部屋の魔法陣で召喚されたのは、獅子の身体に儂の翼が生えた、(くちばし)を持つ生物。

 イメージ通りのグリフォン。


「きぇえええええええ!」


 鳴き声はさながらトンビ。

 翼をバサバサと羽ばたかせ、なんだか喜んでいるようにも見えた。

 そしてグリフォンは俺の方に目線を向けた。


「くぁ?」

「グリフォン、お前はここを守ってくれ。侵入者を通すな。」

「くぁあああああああ!!」


 理解できたのかは分からない。けれど、「分かった」と言わんばかりに翼を羽ばたかせた。

 四十九階も設置完了。後は―――


《ラスボスだね。》


 そうだな。五十五階層と、ラスボス。

 隠しボスも作りたい。


《ダンジョンの管理者として隠しボスも作る?》


 そうだな。役割をちゃんと与えよう。

 それでできるんなら、隠しボスも作ろう!




 ―――というわけで現在俺は五十五階層に。

 この階層は一種のコロシアムのような形だ。ドーム型の巨大なスペースに、所々に瓦礫の遮蔽物が置いてある。

 そして中央には―――これからラスボスが生まれる。


《ちなみにラスボスってどんな感じなの?》


 最初から考えてはいたんだけど、赤備えの武士にしようと思う。

ヒヒイロカネで作った日本刀を二本持たせてね。


《赤備えって言うと―――

あ、これか。武田?だれ?》


 戦国最強の騎馬隊を率いた人だよ。その軍の鎧が赤で統一されてたから、赤備えと呼ばれるようになったってわけ。


《じゃあこの記憶のような鎧を着せればいいんだね?

で刀は―――へえー。かっこいい。これをヒヒイロカネで?

贅沢だねぇ。

じゃあやってみるよ。ちょっと待っといてね。》


 そう言ってガイアは作業に取り掛かる。

 みるみるうちに鎧が形作られていき、赤く染め上げられる。

そして肝心の刀。もう素晴らしかった。

形が整った湾曲した刀身、波打つ綺麗な波紋、バランスも芸術品。

 ガイアによると、経年劣化の恐れはあるけど、それでも切れ味と耐久力、軽さに特化した武器となったんだそう。

 鎧と刀は完成。後は中身。


《それだけどね、実はこの鎧に魂を吹き込めば動く甲冑(リビングアーマー)として活動できるようになるんだ。》


 じゃあそのリビングアーマーとやらにするか。


《なんか武士にふさわしそうな人格にしとくね。》


 了解。

 そして目の前の赤備えの鎧は淡く水色の光を放った。

そして次に起こったこと。それは、甲冑の関節部分が黒い球体でつながったことだ。

 人形とかで球体関節はあるけれど、少し浮遊した状態の関節。

 そして顔の部分はよくレプリカなどである赤い仮面のような顔になった。


「我が主よ、こうして拝謁できたこと、喜ばしく思います。

なんなりとご命令を。」


 甲冑は俺の前に跪き、命令を要求してくる。

 そうだなぁ……名前あげてもいい気がするけど、ガイア、その場合ってどうしたらいいんだ?


《ん?名前?普通にそう呼んであげればそれが定着するよ?

特にメリットもデメリットもないし、強いて言えば主従関係がはっきりすることかな。

まあ創造した時点で主従関係なんて明確だから、好きに名付けてあげていいと思うよ?》


 だそうだ。


「それじゃあお前に名前を付ける。

これからはテットと名乗れ。

お前は“二十二将”、“力”のテットだ。」

「テット……感謝いたします。

こうして主が名前を授けてくださったこと、この名に恥じぬ役目を全うすることを誓います!」


 なんか堅苦しいから苦手なんだが。

 ちなみにテットの名前の由来だけど、タロットカードから名付けた。

タロットカードの“力”のカードは、テットと呼ばれている。

二十二将も、タロットカードのカードの種類だ。


「それじゃあテット、お前はこのダンジョンのラスボスになるんだ。

必ず、侵入者を撃退しろ。」

「は!主の仰せのとおりに!」


 まあここまで辿り着く奴なんていないと思うがな……

 それでも一応ラスボスという立場上ね?


《さて、次は管理者かな?》


 そうだな。管理者のイメージは大分固まってるから、それを元にして作ってくれ。


《これ?

うわ、なんか如何にも裏ボスって感じだね。陰のオーラが漏れ出てそう。

おっけー。分かった。じゃあ五十六階層のリビングに作っておくから、役目と名前をあげてね。》


 そう言って、俺は五十六階層―――自分の家のベッドの前にテレポートされた。

 実体化された裏ボスを見るため、寝室から出てリビングに向かう。

 そこにいたのは、実体化したガイアと、俺がイメージしていた裏ボス。


「やっほートモキ君。こんな感じでどうかな。」


 その裏ボスは、一般男性の平均身長。黒のよれたスーツを着用した男性。

特徴的なのはその長い髪だ。やや茶髪の黒髪、焦げ茶色とでも言ったほうがいいだろうか。

膝どころかスネまで伸びている髪。それと怪しく輝く紫色の瞳。

髪は伸び切っているけど、肌などは不潔感はない。ヒゲも生えていない。髪以外は一般的な男性だ。


「うん、いいんじゃないか。」

「じゃあ名前をあげて。」


 俺は男の前に立ち、少々考える。

 イメージは決まっていても、名前までは考えていなかった。

そうだな………


「―――じゃあ、お前の名前はゲブラーだ。」

「ゲブラー……ありがとうございます。」

「じゃあゲブラー君、君には今からダンジョンの管理者をしてもらおうか。」

「了解です。」


 俺が名前をつけ、ガイアが役割を告げた。

 役割をもらうと、ゲブラーはこつ然とその場から姿を消した。


「あれ?どこ行った?」

「大丈夫だよ、トモキ君。彼は僕が用意した管制室で管理者としての役割を始めたよ。」

「ならいい。」


 ゲブラーの名前の意味。それは、俺の名前から取った。

もちろん俺の名前にはゲもブもラもーもない。だったら何処から取ったかって?

智樹。それが俺の名。その中の樹から取った。

俺の苗字である常磐は、神の意味を含んでいる。

 小学校の頃に両親から名前の由来を聞いて、それから中学生くらいに調べた。

“知恵の樹”と、“生命の樹”。旧約聖書の創世記で、エデンの園に生えている樹として挙げられている二つ。

 そのうち、俺の名前とは逆側の生命の樹から取った。

 生命の樹の実の中に、ゲブラーという実がある。それをつけさせてもらった。

いや、中学生の時の知識なのに高校生でよく覚えてるよな。

そしてここでそれを思い出すのも凄いよな。俺。

 まあそんな自画自賛は置いといて、こうしてボス、ラスボス、裏ボスは設置された。

 もう、ダンジョンで作り込む部分はない。

なので明日からは街を探してみようと思っている。

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