第一話 夢の我が家
トモキ視点です。
トモキって誰だよと思う方、思い出すか読み返すかしてみてください。
三章のプロローグでの語り手です。
俺はどうやら異世界に転移してしまったようで、ガイアという喋るスキルとともにこの異世界の冒険をすることとなった。
正直言うとこのガイア、かなり面倒くさい。
属性がいまいちよくわからないし、俺の心を呼んでくるから本音も筒抜けとなってしまう。
《当たり前だよ。君は僕の主様なんだから。
僕がスキルである以上、それは避けようもない運命なのさ。だから、つべこべ言わずに早くダンジョンの構想を練ってくれないかな。
僕は君が描いた設計図通りに創るんだから。》
はいはい。こんな感じで、俺のことを主様と呼んでくる。でも、いまいち上下関係ははっきりとせず、どちらかといえば俺が下のような立場になってしまっている。
《何?主様って呼ぶの嫌なの?じゃあ、君の名前は?》
俺は常磐知樹だ。
《へぇ〜。トモキ君っていうんだ。いい名前だね。》
だろう?
いや、そんなことは置いておいて、さっさとダンジョンを作らないと日が暮れてしまう。
ガイア、最初に創った階層をどんどん下に下げていって、その上から新しい階層を作ることは可能なのか?
《出来るよ。
あ、そういう事?まず自分の居住スペースを創ってそこからダンジョンを形成していく感じ?
いいじゃん。やろうやろう!》
俺の言おうとしたことを理解してくれるところは、いいと思っているんだけどな。
あ、今までの話がわからない人のために説明しておこう。
俺は、異世界の謎の森の中に転移してきた。
誰かに召喚されたのかはわからないけれど、少なくとも近くに街はなさそうだった。
なので、俺がゲームやアニメで培った異世界攻略の流れは通用しなくなってしまったのだ。
だけれど、チートスキルはちゃんとあった。
それがこのガイアだ。
こいつは、物質を何でも創り出すことができるのだそう。
なので、俺が転移した場所の近くの崖に自分の家を作ることにしたのだ。
あ、もちろん崖っぷちとかではないから、そこら辺は勘違いしないでほしい。
俺が作りたい場所は、崖の下の岩肌だ。
ここにどう作るのかと言うと、ほら、やっぱり異世界って危険なイメージあるじゃん?だから、セキュリティとかもしっかりしたほうがいいかなと思ったのだ。
ここで思いついたのが、ダンジョン。そう。あの異世界の醍醐味の一つである、ダンジョンだ。
ダンジョンの最下層に俺の住居を作ってしまえば、セキュリティは万全になる。
そう考えて、俺は現在ガイアと協力してダンジョンを作っているのだ。
《さっきから誰と喋ってるの?》
いや、読者の皆様に向けて物語のおさらいを。
《読者?読者なんているの?》
いるさ。俺たちの冒険を見てくれている、何百人、何千人の人たちが。
《そんなメタ要素はいいから、今はダンジョンをさっさと創ってしまおうよ。もう日が暮れるよ?》
俺の冒険譚を広めたかったのに、ガイアにメタだと切り捨てられてしまった。ちょっと悲しい。
まあ、今はそんなメタ的なこと言ってる暇じゃないよな。
異世界の定番として、日が落ちるとモンスターがたくさん出てくるという流れがある。
もしこの世界も同じ理屈ならば、日が落ちる前に居住区だけでも作ってしまいたい。
《トモキ君が頭の中に思い浮かべてくれるだけで、僕が一瞬で創ってあげるのに。》
だ、そうだ。
とりあえず、俺は頭の中に理想の我が家の間取りを構築する。
そうだなぁ……ガイア、創れるスペースはどれくらいなんだ?
《うーん、トモキ君の世界の換算で考えるなら、五百×五百の正方形のスペースが理想的かな。》
それって、単位はメートル?
《うん。メートル。だから、二十五万平方メートルだね。》
まあ、めちゃくちゃ広いのはわかった。
じゃあその区画を存分に使おう―――と思ったのだが、やっぱりやめる。
《なんで?》
いや、家が無駄に広くても落ち着かないし、ダンジョンとしてならいいかもしれないけど、今は住居の階層を作らないといけないんだよ。
だから、ちょうどいい感じの間取りを作れないかな。
《なるほどなるほど。確かに、それは共感できるね。
じゃあ、部屋数とかどうする?》
そうだなぁ……普通の部屋は五つくらい?いや、四つでいいか。
隠し部屋とか作りたいな。
《いいね!それじゃあ、リビングとダイニング、キッチン、水回り、部屋は五つ、隠し部屋一つでいいかな。》
うん。
《了解。それじゃあ間取りを構築するから、ちょっと待ってて。》
分かった。
とりあえずガイアが間取りを考えている間に、そこら辺のちょうど良さそうな石に腰掛け、ダンジョンをどうしようか考えながら待つ。
即死トラップとか設置したいよな。ゲームを見習うならば、十の倍数の階層にボスを設置したり。ミミックとか。
というか、【創造之神】の能力で生物とか生み出せるのかな。
《うん。全然出来るよ。》
そうなのか。それが可能ならどんどんとアイデアが湧き出てくるな。
十の倍数階層のボスと、ラスボス。それと、ミミックとかスライムとか。
あ、ダンジョンといえば迷宮だよな。それじゃあ、ミノタウロスとか?いや、自分の家にいるとなるとなんか嫌だな。
トラップは……無難に落とし穴?矢を降らせたり、大岩を転がしたり、床から針とか。
天井が落ちてきたり、鉄格子で捕獲したり、極細のワイヤーを張り巡らせたり。アイデアの泉だな。
ボスモンスターとかはどうしようかな。
スライム?それともオーガ?やっぱりミノタウロス?ガーゴイルっていう手もあるな。
階層も何階層までにするか。ラスボスはどうするか。ダンジョンが完成したらどんな名前にするか。
色々考えないとな。まず、ラスボスから考えよう。
何かを元にしても面白い。ここは日本を出して、武士とか?赤備えの。
頭に思い浮かべて、何だか格好良くなりそうだからこれで決めようかな。
武器は日本刀。素材は異世界感出したいな。硬い金属……鉄じゃ駄目だよな。玉鋼?いや、オリハルコン?確か一番硬い伝説の金属があったよな。何だっけ……?
《ミスリル?それともアダマンタイトのこと?》
うわっ!急に何だよ。心臓に悪いから急に話しかけてくるのは止めてくれ。
《うん。それはわかったけど、その金属の話、面白そうだから聞かせて?》
ガイアがそう聞いてきたので、俺は考えていたことを話した。
日本刀と、ラスボスのことを。
《なるほど。日本刀ねぇ。それに、伝説の金属を使いたいと。
なら、僕が知ってる限りの伝説の金属を教えてあげようか。
ミスリル、アダマンタイト、さっき言ってたオリハルコン、それからヒヒイロカネ。》
それだ!
《ん?ヒヒイロカネのこと?》
うん。俺の知識だと、ヒヒイロカネが一番硬いって聞いたことがあるんだ。
日本刀に使えないかな。
《確かにヒヒイロカネは硬いけど、オリハルコンと同じくらいだよ?
まあ、トモキ君がいいならそれで作るけど。
あ、それより、間取りできたよ?もう作り始める?》
もうできたの!?早くない!?
《そんなことはないよ?だって僕は神の権能だからね。神と同じ能力―――いや、僕自体が神だと言っても過言ではないのさ。》
あ、そう。じゃあよろしく頼むよ。いい感じに作ってくれ。
《おっけー。任せて!》
そうして、ガイアが働いている間に俺は作られていく様子を眺める。
なんというか、よく某動画サイトのショートで見る早送り動画を観ている気分。
自分の家が早送りで建築されていく。そんな光景をぼーっと何も考えずに見ているうちに、いつの間にか家はできていた。
《トモキ君、出来たよ?というかもう日が暮れそうだし、中にベッドあるからもう寝たら?》
ああ、ありがとう。それじゃあ、軽く内見した後寝るとするかな。
《きっと気に入ると思うよ!僕の自信作なんだから!》
ガイアが胸を張っている様子が頭に浮かぶ。まあボクっ娘だし胸は小さいと思うが。
《………》
あ、いや、別に駄目なわけじゃないよ?ちっぱい最高だよ!?
《………なんか不愉快だから止めて?》
はい、ごめんなさい。
《わかればよろしい。》
まあそんな茶番はさておき、俺はざっと部屋の中を見た後寝室にあったフカフカベッドに潜り込んだ。
服はそのまま。なんか今日は色々ありすぎて疲れてるから、睡眠が取りたかったのだ。
《そうだね。突然こんな世界に飛ばされてきて、トモキ君も疲れたでしょ。ゆっくり休みな。》
そうするよ。おやすみ。
《おやすみ。いい夢を。》
そうして、どんどんまぶたは重くなっていき、意識は闇に吸い込まれた。
第五章、開幕!
ちなみに今章はソラたちは一切出てきません。ごめんなさい。
代わりにトモキの冒険をお送りします。それなりに重要なので、見落としのないように読んでください!
最後に、ブクマと評価、お願いします!