第二十六話 新魔王、ここに誕生
〜前回のあらすじ〜
カズトがラファエルと共に異空間に消えました。
◀ ◇ ▶
カズトが【空々漠々】の効果で異空間にラファエルを引き込んで、二人はその場から消えた。
中で何が起きているかは分からない。
だが、俺はカズトの無事を祈って待ち続けた。
それは俺だけではない。カイルも、リオンも、リュナも、シエラも、ノアも、ミホも、マークも。セトはわからんけど。
―――やがて、カズトは戻ってきた。
ラファエルはいなかった。ということは。
指し示す結果は一つ。
「ラファエル、討ち取ったりーー!!!」
「いえーーーーい!!!」
「やったぞ!」
「流石カズト君!」
「お前ならと信じていたぞ!」
「ついに倒したか!」
「やったな!」
ラファエルはカズトによって討ち取られた。
東の魔王、ラファエルは死んだのだ。
その後、カズトに話を聞かせてもらった。
曰く、どうやらラファエルは俺たちと同じ日本人で、異世界に転生してきたらしいのだ。
なんだか変な声が聞こえてきたと言ったが、その後その場の全員の頭の中に女性の声が聞こえてきた。
《魔王討伐、おめでとう。
カワウチカズトが、神之権能【灯火之神】を獲得しました。》
と。カズトが神之権能を手に入れたことを知らせる放送。
めでたいことだ。
「この声、久しぶりに聞いたな。神之権能を獲得した時以来か」
「ほんとに。久しぶりだね……。」
カイルとイヴァナは懐かしんでいる。
「じゃあカズト、お前が次の魔王になるんだな!」
「―――え?」
え?どゆこと?
カイルはそんなことを言うが、俺とカズトとミホとマークとノアとシエラはその言葉を理解できていない。
「どういうことですか?」
「言葉のとおりだ。カズト、お前が次の東の魔王になるんだよ。」
「「「えええ!?」」」
知らない組はそんな反応。もちろん俺も。
それだけじゃ何故なのか全くわからん。俺たちが知りたいのはそういうことじゃないんだよ。
「ごめんね、カイルの説明が足りなくて。
簡単に言うと、魔王を討伐した人はその神之権能を受け継いで、次の魔王になるの。
もちろん魔王を倒したことは世界中に広まって有名になるし、神之権能を獲得したから強くもなるよ。」
と、イヴァナが補足説明を入れてくれた。ありがたい。
「そういうことだ。これから頑張れよ、東の魔王。」
「イマイチ実感わかないんですけど……
え、魔王ってどういうことするんですか?」
「わかるわけないだろ。魔王じゃないんだし。」
「まあ世代交代みたいなものだから、まずは城を整理したり魔導書とかお宝を見つけて見るのはどうかな。」
「最初はそんなもんか……」
「カズト、俺たちも手伝おうか。」
「そうですね、みんなで手伝いましょう!」
「魔王のお手伝いなんて、なんだか楽しそう!」
「もちろん私とマークもお手伝いするからね!」
全員賛成。というわけで、全員参加の魔王城大掃除が始まったのだった。
全員で一階の悪趣味な部屋を片付けていく。
不気味な絵画は取り払い、埃も払い、古い家具はノアに空間ごと処分してもらい、血のりや黒いインクなどは高圧水洗できれいに洗い流す。
首吊り人形たちも処分。割れた花瓶も処分。カーペットも汚かったので全処分。トラップなども全て解除して破壊。
床も壁も天井も魔法の力で隅々まで磨き上げ、一階の片付けが完了。
続いて二階。何故か大量に設置されている時計たちを全撤去。カーペットや花瓶、その他不気味な部屋の家具なども全処分。
時計台の中にも入り、螺旋階段、頂上の機械の隙間やステンドグラス等、外の鉄柵なども全てを綺麗に拭く。
仕上げに魔法でフロア全てを綺麗に磨き上げ、続いては問題の三階。三階には、俺たちがラファエルとウリエルと戦った部屋がある。
どうしようか相談しながら、まずはその部屋以外の部屋や廊下を掃除。
戦いの影響で至る所がボロボロになっており、修復は今日中には終わらなさそうだったのでとりあえず要らないものの全撤去アンド全処分の隅々まで洗浄というもはや手慣れてきた工程を終わらせ、いよいよ問題の広間へ。
―――行ってみたのだが………何故か綺麗さっぱり治ってる。
ウリエルの魔法で溶けた床も、ラファエルのレイピアでヒビ割れた壁も、シエラが(リュナも共犯)壊した天井も、その瓦礫も、綺麗に割れていった窓ガラスも、ボコボコになっていた床も、全てが元の状態に戻っていたのだ。
これには驚かされた。あの過酷な戦いの痕跡が、綺麗に消え去っているのだから。
まるで、最初からそんな戦いなんてなかったかのように。
流石にラファエルとウリエルはいなかったが、修繕の手間が省けたという嬉しさと痕跡がなくなってしまったという悲しさが入り混じってなんだか複雑な気持ちになる。
まあ、それは放っておいて、次は四階。リュナとシエラが戦いに割り込んできた時にいた階だ。
こちらも流れるように全撤去アンド全処分。からのフロア全掃除してピッカピカに洗浄。
続いて、リュナとシエラが飛ばされたという五階。
こちらは比較的綺麗で、変な部屋などもなく、手入れが行き届いた客室階層となっているようだった。
その中で書庫を発見し、カズトたち三人は「後で寄る」と言って暫く物色した後俺たちは六階に上がった。
細かな塔を除けば、この城の最上階は七階だ。
六階には、五階と同じく手入れが行き届いた水回りとその他の実用的な部屋が用意されていた。
広い風呂、キッチン、小書庫、会議室等など。
掃除する必要もなさそうだったので、七階に上がってみる。
七階にあったのは、部屋が一つ。縦長の長方形の天井が高い部屋。その部屋の一番奥には、大きな玉座があった。
玉座の正面の部分にコインらしきものが嵌めてあったので、カズトたちに許可をもらって記念にもらって帰ることにした。
ちなみにこれは建前で、理由はもう一つあった。まあこれについては後々語ることになるだろう。
掃除が行き届いた部屋だったため、俺たちはそこで休むことにした。
カズトたちは先ほどの書庫に行ってめぼしい本を持ってくるそうだ。
―――魔王討伐を達成し、俺たちの目的は達成された。
だが、この時俺は何か嫌な予感がしてならなかったのだ。
何か大切なものがなくなったような喪失感を味わうような気がしてならなかった。
四話連続投稿、三話目です!
次回は十九時投稿!
お楽しみに!