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第九話 屋敷での生活(後編)

夏といえば皆さんは何を思い浮かべますか?

海?スイカ?


僕はかき氷です。

あのシロップって、匂いと色が違うだけで、全部同じ味なんですって。

ブルーハワイって何なんだろう。

〜前回のあらすじ〜


メイド三人の仕事を手伝う事にしました。


◀ ◇ ▶


 「まずは二階の掃除と窓拭きから。

花瓶の水の入れ替えと、ホコリの掃除、二階の廊下の窓を全て拭いてください。」


 いきなりそんなに!?


「一緒にやれば、すぐ終わりますよ。」

「ていうか、お兄さんってあんな事言っといて、家事とか出来るの?」

「多少なら出来るよ。」


これでも家事男子だからね。

 手伝うくらいならなんとかなると思っていたから、正直こんなに仕事が多いとは思わなかった。

 戦の後でこんな仕事量なら日本だったら労基案件だぞ。勇気を出して手伝おうって言って正解だった。


 「ほうきとチリトリはここにありますから、これで絨毯掃いてください。」

「はい。了解!」


仕事量もそうだが、俺が手伝う事で彼女達の精神(メンタル)面も負担が減るだろう。

 壁に立て掛けてあったほうきとチリトリを取り、絨毯の上を掃く。

この絨毯は毛足が長いので、かなり掃除が大変だ。


 (しばら)く絨毯のホコリを掃いてチリトリに集める。

そんなにゴミは無かった。

手入れが行き届いている証拠だろう。

 次は窓拭きだ。

ルミアがバケツと雑巾二枚を用意してくれていたので、水を汲みに行く。

 当然だが、水道なんて便利な物はない。

庭に井戸があるので、そこに汲みに行かなくてはならない。

俺は重労働苦手なんだよな。

 そんな事を考えてつつバケツを持って廊下を歩いていく。庭に出て井戸を探し、その井戸まで走る。

 雑巾を濡らすだけなので、水は少しでいい。

バケツは金属なので少しの水でも重かったが、運べないという程でも無かった。

 ここで窓拭きのポイントがある。

雑巾を半分水に浸けることで全体を軽く濡らすことが出来る。

こうすることで、窓の水垢を無くせるのだ。

 窓には水垢は少なかったが、残っているものは

線状に伸びていた。

恐らく、水拭きの後に乾拭きしていたんだろう。

だから雑巾が二枚あったのか。

 俺の裏技雑巾で拭くと、窓の汚れがキレイに落ちていく。

 すると後ろで花瓶を抱えていたリアが、


「スゴーイ!汚れがドンドン落ちていく!

お兄さん、どうやったの?」


と、興味があるような声で言った。

 折角だから教えてあげよう。


「こうやって雑巾を半分だけ濡らすことで水垢が残らずに拭けるんだよ。」

「へ〜。お兄さん凄いね。

ルミとリーベに教えてあげよ!」


そう言ってご機嫌な様子で二人のところに行った。


「ソラ様、すごいですね。そんな事を知っているなんて。」

「その調子で他のもやってくださいね。」


ルミアだけ俺に冷たい気がする。

 ルミアの態度に対して考えている俺の様子に気づいたのか、その温度差について、リーベが小声で説明してくれた。


 「ルミアちゃんは、過去に色々ありまして。

誰にも心を開いてくれないんです。

ですので、冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、あれでも彼女は精一杯他人に接しようとしているんですよ。」


そうか。その過去には触れないでおこう。

 本人に悪意が無いのであれば、こちらが優しく接してあげれば問題ないだけだ。


 「ルミちゃーん、リーベちゃーん。

花瓶は終わったから後窓だけだよ〜。

お兄さんに教えてもらったやり方で皆でやろー!」


とは言っても、残りの窓は少ない。

十分一人で出来る量だった。


「大丈夫だよ。残りこれくらいだったら一人ですぐ出来る。

三人は休憩しといて。」

「いえいえ、手伝いますよ。」

「それじゃあお言葉に甘えて。」

「休憩室で待ってるから。」

「ええ!?ちょっと、ルミアちゃん!?リアちゃん!?」

「じゃあリーベには手伝ってもらおうか。」


 三人でやりたかったのか、残念そうな顔で雑巾を濡らしている。

 窓は残り二枚。一枚だけだがリーベはちゃんと拭いている。

 窓拭きが終わり、リーベと二人で片付けに取り掛かる。

リーベが濡れた雑巾を持ち、俺がバケツを持つ。

 二人でしたからか、すぐに片付けは終わった。


「それでは、二人が待っているので休憩室に行きましょうか。」

「ああ。」


 廊下を歩き、休憩室にたどり着いた。

この屋敷は広すぎて、前回書斎に行ったときは迷った。

今回はリーベがいるので安心だ。

 休憩室に入ると、椅子で二人はくつろいでいた。


「あ、おかえり〜。」

「おかえりなさい。」


 二人は棒アイスらしきものを食べている。

この世界にもアイスってあるんだな。


「フローズン、食べます?」

「仕事の後はやっぱり甘いものだよね~。」


“フローズン”って名前らしい。

 リアから一本もらい、口に入れる。

そのまんま果物の味がした。

 やはり砂糖は高級なのか、果汁を凍らせた感じだ。

これはこれで美味しい。

 この世界での甘味なんてこんなものだろう。


「じゃあ次は庭木の剪定。」


折角このおやつ(フローズン)を楽しんでいたのに、ルミアが辛い現実を突きつけてきた。

 ていうか、庭木の剪定なんて俺やったことないぞ。


◀ ◇ ▶


 この屋敷の庭は、流石貴族というべきか、かなりの広さがあった。

しかも、中心の噴水と道を境に左右対称。

庭木は、シンプルだけどキレイに揃っているものばかり。

これくらいなら、庭師経験がない俺でも頑張ったら出来そうだ。


「はい、これ。

お屋敷に沿って植えてある茂みを整えてください。」


そう言って、ルミアが枝切りバサミを渡してきた。

 茂みというと……壁の側にあるやつか。

大体の形は保っているが、枝の長さが不揃いで、周りに合っていない。

 これを整えたらいいんだな。

 大まかに形がわかるので、整えるのは割と簡単だった。

イノウエ・ソラはスキル【剪定】を手に入れた!

なんつって。

 だんだん楽しくなってきたので、ドンドン切っていく。


「お兄さん早くない!?もう終わったの!?

しかもきれいだし!」


リアが驚いている。

 それもそうだ。俺も気づいたら終わっていたんだから。

業者もびっくりの速さと丁寧さ。俺にこんな才能があったとは。


「じゃあ、次は噴水の周りの茂み、塀の周りもやってください。」


ルミアがどんどん仕事を持ってくる。

 今の俺はノリに乗っているのでそんな量もこなせる気がしている。

 数分後(体感時間)、ルミアが言った仕事は全て終わらせた。

 一方リアは、その背の低さからか、手間取っているようだ。

リーベは丁寧にやっている。

ルミアは…………なんかすごいことをやっている。

大きな木をリザードの形にしたり、スライムの形にしたり、とにかくそれは職人技としか言いようが無かった。

 すると、俺のポカンとした様子に気づいたのか、仕事を終わらせたリーベが解説を入れてくれる。


「ルミアちゃんは、自分が持っているスキルのせいか、刃物の扱いがとっても上手いんですよ。」


どんなスキルを持っているか気になる。

 そんな解説を聞いている内に、ルミアとリアの仕事も終わったようだ。


 「これから自由時間かな。

お兄さんはどうするの?」

「まずは自分の部屋に戻って、それからスキルの練習を。」


すると、


「じゃあ、私と訓練しますか?」


と、ルミアが言った。

 側ではリアとリーベが驚いているので、心を開かないルミアはこんなことは言わないと思っていたんだろうか。

とすると、これはなかなかいい反応ということになる。


「お言葉に甘えて、お願いするよ。」


返答は、もちろんOKだ。


◀ ◇ ▶


 ルミアと約束を交わし、一度自分の部屋に戻って来た。

 ドアを開けると、なぜかベッドの上にリュナがいた。


「…………」


リュナは俺に気づいたのか、慌てた表情をしている。


「――――変態だー!!!」

「わああああーー!ちょっと待って誤解だよ!」

「何が誤解だ!現に今俺の部屋のベッドの上で寝転んでるだろうが!」

「だから違うって!

ソラ君がどっか行っちゃって暇だったからとりあえず君の部屋(ここ)で待つことにしたんだよ!」


 リュナの慌ててる姿初めて見た。

 いや、そんなことより。


「ここで待つ必要無いだろ。」

「ううん。ここで待ってこそパーティメンバーじゃない。」

「全く意味がわからん。」

「まあまあ、セト君もいるんだから騒がないで。」

「そうだぞ。我もいるんだからあまり騒ぐな。」


…………セトもいるのかよ。こいつも共犯だったか。


「これからスキルの練習に行ってくるから、あまり構ってられない。」

「ここで待ってるから。いってらっしゃーい。」


元の呑気なリュナに戻った。


 ――そうだ、


「思ったんだけど、二人のスキルって何なの?

というか、スキル持ってるの?」

「うん。持ってるよ〜。

前は神之権能(ゴッドスキル)、【創造之神(ガイア)】を持ってたんだけど、今はユニークスキル【森羅万象】。」

「我もあるぞ。

リュナと同じような感じだが、一応神之権能(ゴッドスキル)混沌之神(カオス)】を持っている。

前は神之権能(ゴッドスキル)破壊之神(シヴァ)】も持っていたんだけどな。」


 はい、ここにきて新出単語が出てきました。神之権能(ゴッドスキル)?その後の名前も何か凄そうだし。


「ああ、神之権能(ゴッドスキル)っていうのは、簡単に言えばユニークスキルの上位互換だ。

怒りや憎しみといった感情が強く出たり、同系統のスキルを組み合わせることで獲得できる。

これには色々とあるのだが、今のうちに説明しておこう。

神之権能(ゴッドスキル)を所有しているのは一部の強者のみ。

それこそ、魔王や我ら神といった者たちだな。

それで、そのスキルの中でも特に強力とされているのが、“原初之権能(プリミティブスキル)”だ。

これは神之権能(ゴッドスキル)の上位互換であり、全部で八つしかない。

我が知っているのは、【混沌之神(カオス)】、【創造之神(ガイア)】、【幽冥之神(エレボス)】、【海洋之神(タラッサ)】の四つだ。

こんな感じで、スキルというのも段階がある。

わかったか?」


 夢があるじゃないか。要するに、最強ってことだ。

 非常に厨二心をくすぐる響き。俺のユニークスキルも、いつかその神之権能(ゴッドスキル)とやらに進化する時が来るのだろうか。


「私が持ってたのも、その原初之権能プリミティブスキルなんだけど、世界創生のせいか、弱体化しちゃったんだよね。」

「我の神之権能(ゴッドスキル)も一つ消えたしな。」


 かっこいい名前のスキルに心をくすぐられつつ、ルミアと訓練するため、俺は庭へ行くことにした。

今回の話で新たな設定が出ました。

え?ゴッドスキルが転スラのアルティメットスキルに似てる?


…………


それについてはまた別の機会に。


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