8話 遺跡
翌日。溜めている桶で顔を洗い。宿の朝食を食べて、ギルドに向かう。受付に多くの人が並んでいたので、テーブルで順番待ちをしていた。
誰かが言った。
「おい、あれ……」
「ああ……【雷刃】の……」
彼等の視線の先には赤い髪と瞳を持つ女性がいた。
「噂通り一人みたいだな」
「誘ってみるか?」
「無理無理……」
「それに悪い方の噂が本当だったら……っ」
その時、赤い瞳がその男たちを見た。慌てて目を逸らす。その後、女性は依頼を受けて外に出た。
モニカにその話を聞くと知っていた。彼女はミスリル等級の冒険者。勇者パーティーに勧誘されているが悉く断っているそうだ。悪い噂は彼女と一緒にパーティーを組むと死ぬ、ということらしい。
その時、受付嬢が緊急クエストを周知する。ダンジョンで遭難した冒険者の救助依頼だ。
ダンジョンには二種類あり、一つは古代の遺跡。もう一つは突然発生したものだ。発生の原因は不明である。前者だと長年かけて魔物が住み着き、後者の場合ダンジョンの奥から魔物が現れる。
今回は遺跡の方で迷ったようだ。助けなければ。
「アルベール……」
「ああ、受けよう!!」
「うん!!」
それを聞いてモニカは喜んだ。合計で10名が集まった。パーティーの男が言う。
「見た事ない顔だが……なんてパーティーだ?」
パーティー登録の際、名前を決める。それは後からでも良い。
「名前はまだ……」
「岩だったか。そっちの子はよく見かけるな……お前、等級は?」
「石だ」
「石ぃ……おいおいおい。連れていかない方がいいだろう」
「完全に初心者という訳じゃない。前は別のパーティーにいた」
「ア~」
今回のパーティーは主に銅と鉄等級で構成されている。そこでモニカが真っすぐな眼で訴えた。
「アルベールはロックブリザードから逃げられるだけの力を持ってるよ」
「あァ?」
男はモニカの目を凝視する。
「ふぅー。オーケー。信じよう。だが足手まといと感じた時は途中で帰すからな」
「分かった。それで良い」
魔馬車でポスフォス遺跡に向かう。今回の通常の馬車とは違い、さらに馬力があって速い。魔物の血が僅かに入った魔馬だからだ。偶然発見されたらしい。
遺跡について聞いてみた。
「どんな遺跡なんだ?」
モニカは笑顔で答えた。
「ふ、古い遺跡だよ」
「……」
馬車に乗っていた男が言う。
「ジーモの民が各地に残したものだとされている。その民は特別な金属を使い武具を作った」
「武具を……」
「分かりやすいので言えば……聖剣……と言えば分かるか」
「聖剣……見つかったのは四つ。カーススにいた頃も似た話が。こっちでは古代ヤ族が作ったと」
「お前あっちの国出身か。まあ、あくまで伝説だがな」
遺跡までそう遠くなかったのか、あっという間に遺跡に到着した。