6話 占い師
街に報告に行く。今までは視線をあまり意識していなかった。しかし、嫌悪の呪いがまだ残っているんじゃないかと突然不安になった。急にロヴィナの街の人々のあの冷たい表情が頭をよぎる。
「ようこそ。ここが街、ヘイスよ!!」
ホッとすると同時に素直な感想がでる。
「綺麗な街だ」
「でしょう!!」
都市とまではいかないが大勢でにぎわっている。主に石造りの建物が並び。整備された道を元気な人々や馬車などが行き交う。皆が時々俺の顔を珍しそうに見てくる。しかし、嫌悪感がない。それを察したのかモニカが笑顔になる。
「良かったね」
「ああ、モニカのおかげだっ」
ギルドに行くと、モニカが報告する。どうやらモニカから殿を買って出た事になっていた。なにか言うと思った時、彼女が止めてきたのでなにも言わなかった。
ここで冒険者として登録する。銀貨一枚を支払う。これでお金がなくなった。そして、石等級のプレートをもらう。
道具に魔法を力を込めた物、魔具。プレートは魔具であり、特殊な装置で冒険者の最低限の情報が読み取れる。
等級は高い順にミスリル、白金、金、銀、鉄、銅、岩、石となっている。彼女は岩でもう少しで銅に上がれるらしかったが、パーティーを脱退したので分からないそうだ。俺は石等級になった。
勇者パーティーになるには10~14歳で試験を受けて適性があると判断されるか、勇者パーティーから勧誘されるかだ。一説によれば五等級でミスリル等級レベルの実力らしい。
ただ、個人ではなくパーティーでの総合なので、仮に戦ったらどうなるかは、戦うまで分かりにくいところではある。なにが得意かはパーティーの構成にも左右される。とはいえ、等級が高いと基本は能力が高い。
「解呪の方法を探すけど。同時に強くならないといけない」
「そうだね。もしも必要なものが危険な場所にあったらとりにいけないもの」
「等級を上げないと、受けられない依頼もあるし」
お互いを知るために、難易度の低めのゴブリン依頼を三つ受けた。三つとも依頼場所が近くだったからだ。
同じ種類の魔物でも変異種や特別力の強いモノ、群れの規模などによって難易度は変わる。ギルドから出て街を歩く。そこで気が付いたが、彼女はなにかに見とれることがある。
好奇心旺盛なのか、ボーっとしているのかは分からない。呼び込みの店員が声をかけるとすぐに中に入る。慌てて外に連れ出す。
「先に依頼を終わらそう」
「ごめん。戦闘に使える物がないかって気になって」
外に向かっていると怪しげな老婆が椅子に座っていた。
「おや、そこのお嬢ちゃん」
「私?」
「なにか……運命的なことがあったんじゃないかね……」
「え!!?」
「それは誰でもよくある……」
チラリと俺を見た。
「なんで分かったんですか!!」
「占い師だからねぇ。なんでも分かるよぉ。むむ。お嬢ちゃんには夢があるねぇ」
「どうしてそれを!! 小さい頃に見た人に憧れて!! 最高の僧侶になろうとしてるんです!!」
「思った通りだ。どれ。見てやろうか」
「はい!!」
満面の笑みだったので、止めるに止められなかった。老婆はなにかを待っていた。
「……」
「はい!!」
「銀1」
ぼそりと呟いた。モニカは銀貨一枚を渡す。
(高いな)
「安心しなさい。夢は叶うようだね……それにその男の人とは良いパートナーになるね」
「本当ですか!!」
「ああ……もちろんじゃともー」
占いが終わったのでモニカに近づいた時、老婆の目がカッと開いた。手首をガシっと掴まれた。
(つよ!! 力強っ!! ってやばいッ。占われるぅ!!)
「くぅっ、離せぇ……離せっ……」
「うほおおお!! 珍しい事があるもんだねぇ」
「やめろォ……金がないんだ。離せェ!!」
「いやいやいや。代金は良いよぉ……」
「逆に怖い……ッ」
「おやまぁ……生命線がおかしいねぇ。まるで削れているみたいに……減っている。こんな事が……なにか心当たりはないかねぇ……」
「ッ……」
(呪い? いや、もしかしてあの力か……モニカに心配させたくはないな……)
「わ、分からん!! とにかく!!」
そこで老婆が腕をパッと離した。
「それに腰のそれ……ふっふっふ。厄介なものをもらったねぇ……」
(この老婆、本物か!!)
そこでモニカが言う。
「あの!! 解呪の方法とかって知りませんか!!」
「うむ……」
老婆が地図を出した。
「この辺に……あるんじゃないかねぇ」
地図から指をわりと離し、グルグルと指先を大きく回す。
「雑!!」
「銀1」
「駄目だってモニカ!!」
モニカが嬉しそうに支払った。
(後でちゃんと返さないと)
「ていうか銀貨1枚もとったんだからもう少し細かくっ」
カッと目を見開いた。
「すぐに楽をしようとするんじゃないよ!! あんたの覚悟はその程度だったのかい!! まったく最近の若者は……」
老婆に怒鳴られた。
「……すみません。俺も必死だったので。もう少し払うので細かく教えてほしい……」
「……」
「……あの。実は分からないということは」
「ごふぉっ……うう……体が……」
「おばあちゃん!!」
モニカが急いでヒールをかけた。
「ありがとよぉ、お嬢ちゃん。少し楽にぃ。ううっ……頭が……思い出せない……旅をすればきっと辿り着くはずじゃ……たぶん。なんか運命がそういっとるわい……」
「おばあちゃん、ありがとう!!」