表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

6話 占い師

 街に報告に行く。今までは視線をあまり意識していなかった。しかし、嫌悪の呪いがまだ残っているんじゃないかと突然不安になった。急にロヴィナの街の人々のあの冷たい表情が頭をよぎる。


「ようこそ。ここが街、ヘイスよ!!」


 ホッとすると同時に素直な感想がでる。


「綺麗な街だ」


「でしょう!!」


 都市とまではいかないが大勢でにぎわっている。主に石造りの建物が並び。整備された道を元気な人々や馬車などが行き交う。皆が時々俺の顔を珍しそうに見てくる。しかし、嫌悪感がない。それを察したのかモニカが笑顔になる。


「良かったね」


「ああ、モニカのおかげだっ」


 ギルドに行くと、モニカが報告する。どうやらモニカから殿を買って出た事になっていた。なにか言うと思った時、彼女が止めてきたのでなにも言わなかった。



 ここで冒険者として登録する。銀貨一枚を支払う。これでお金がなくなった。そして、石等級のプレートをもらう。


 道具に魔法を力を込めた物、魔具。プレートは魔具であり、特殊な装置で冒険者の最低限の情報が読み取れる。



 等級は高い順にミスリル、白金、金、銀、鉄、銅、岩、石となっている。彼女は岩でもう少しで銅に上がれるらしかったが、パーティーを脱退したので分からないそうだ。俺は石等級になった。


 勇者パーティーになるには10~14歳で試験を受けて適性があると判断されるか、勇者パーティーから勧誘されるかだ。一説によれば五等級でミスリル等級レベルの実力らしい。


 ただ、個人ではなくパーティーでの総合なので、仮に戦ったらどうなるかは、戦うまで分かりにくいところではある。なにが得意かはパーティーの構成にも左右される。とはいえ、等級が高いと基本は能力が高い。



「解呪の方法を探すけど。同時に強くならないといけない」


「そうだね。もしも必要なものが危険な場所にあったらとりにいけないもの」


「等級を上げないと、受けられない依頼もあるし」


 お互いを知るために、難易度の低めのゴブリン依頼を三つ受けた。三つとも依頼場所が近くだったからだ。


 同じ種類の魔物でも変異種や特別力の強いモノ、群れの規模などによって難易度は変わる。ギルドから出て街を歩く。そこで気が付いたが、彼女はなにかに見とれることがある。


 好奇心旺盛なのか、ボーっとしているのかは分からない。呼び込みの店員が声をかけるとすぐに中に入る。慌てて外に連れ出す。


「先に依頼を終わらそう」


「ごめん。戦闘に使える物がないかって気になって」


 外に向かっていると怪しげな老婆が椅子に座っていた。


「おや、そこのお嬢ちゃん」


「私?」


「なにか……運命的なことがあったんじゃないかね……」


「え!!?」


「それは誰でもよくある……」


 チラリと俺を見た。


「なんで分かったんですか!!」


「占い師だからねぇ。なんでも分かるよぉ。むむ。お嬢ちゃんには夢があるねぇ」


「どうしてそれを!! 小さい頃に見た人に憧れて!! 最高の僧侶になろうとしてるんです!!」


「思った通りだ。どれ。見てやろうか」


「はい!!」


 満面の笑みだったので、止めるに止められなかった。老婆はなにかを待っていた。


「……」


「はい!!」


「銀1」


 ぼそりと呟いた。モニカは銀貨一枚を渡す。


(高いな)



「安心しなさい。夢は叶うようだね……それにその男の人とは良いパートナーになるね」


「本当ですか!!」


「ああ……もちろんじゃともー」


 占いが終わったのでモニカに近づいた時、老婆の目がカッと開いた。手首をガシっと掴まれた。


(つよ!! 力強っ!! ってやばいッ。占われるぅ!!)


「くぅっ、離せぇ……離せっ……」


「うほおおお!! 珍しい事があるもんだねぇ」


「やめろォ……金がないんだ。離せェ!!」


「いやいやいや。代金は良いよぉ……」


「逆に怖い……ッ」


「おやまぁ……生命線がおかしいねぇ。まるで削れているみたいに……減っている。こんな事が……なにか心当たりはないかねぇ……」


「ッ……」


(呪い? いや、もしかしてあの力か……モニカに心配させたくはないな……)


「わ、分からん!! とにかく!!」


 そこで老婆が腕をパッと離した。


「それに腰のそれ……ふっふっふ。厄介なものをもらったねぇ……」


(この老婆、本物か!!)


 そこでモニカが言う。


「あの!! 解呪の方法とかって知りませんか!!」


「うむ……」


 老婆が地図を出した。


「この辺に……あるんじゃないかねぇ」


 地図から指をわりと離し、グルグルと指先を大きく回す。


「雑!!」


「銀1」


「駄目だってモニカ!!」


 モニカが嬉しそうに支払った。


(後でちゃんと返さないと)


「ていうか銀貨1枚もとったんだからもう少し細かくっ」


 カッと目を見開いた。


「すぐに楽をしようとするんじゃないよ!! あんたの覚悟はその程度だったのかい!! まったく最近の若者は……」


 老婆に怒鳴られた。


「……すみません。俺も必死だったので。もう少し払うので細かく教えてほしい……」


「……」


「……あの。実は分からないということは」


「ごふぉっ……うう……体が……」


「おばあちゃん!!」


 モニカが急いでヒールをかけた。


「ありがとよぉ、お嬢ちゃん。少し楽にぃ。ううっ……頭が……思い出せない……旅をすればきっと辿り着くはずじゃ……たぶん。なんか運命がそういっとるわい……」


「おばあちゃん、ありがとう!!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ