12話 魔導師の女性
この森には別のパーティーがいた。四人パーティーだった。黒い髪、紫の瞳をした魔導師の女性は言う。
「最近、簡単な依頼しかしてないよね……そろそろ高難易度の依頼をしないと」
リーダーの男は軽い様子で答えた。
「大丈夫、大丈夫。報告はしっかりしてるから」
「……その内容ってさ。嘘だよね」
リーダーは鋭く睨む。
「アァ? 嘘じゃないけど?」
「この前、偶然受付嬢から聞いたんだけど……倒してない魔物を報告したよね」
別の男がなだめようと割り込んできた。
「……まあまあ。等級が下がるとお互い困るわけだしっ……」
「駄目よッ。そんなの不正じゃない。私はそんなを事して等級を維持したいわけじゃない。強くなって魔人族を倒したいの!!」
「…………まあ……まあ……」
そこで男たちは剣を抜いた。
「な、なにを……」
「まあ……そうなるわな」
「俺たちは今の暮らしが気に入ってる」
「密告されたら厄介だからな……ここで事故にあってもらう……」
「はぁ……そんな事許されるわけない!!」
「許しがほしいわけじゃない……安定した収入がほしいのさぁ」
「死んでもらうぞ。リアナ」
じりじりと近づいてくる。
「こ、来ないで!!」
リアナと呼ばれた女性は走って逃げる。男たちは速く、追いつくや否や背中を切られた。悲鳴を上げ、地面に倒れた。
痛みで起き上がる事ができず、尻もちをつく。女性は顔を歪める。
「やめて!! 私はまだこんなところで!!」
「自身の軽薄さを恨むんだな……」
殺したくはないが死にたくない。魔法で氷の礫を飛ばすが、避けられた。男たちは無表情で近寄り剣を振り下ろそうとしていた。
俺とモニカはホーンスパイダーを狩り終わった。この魔物の棘や内部にある糸袋は売れるのでマジックボックスに収納する。その時、モニカが逃げる女性を見かけた。
「アルベール。あれ……」
「……木陰で隠れててくれ」
「どうするの?」
「……話を聞いてくる」
ぷにの声が頭に響く。
『絶対にダメだと思うよ』
(多分な。でもあの殺意の表情は……彼女を助けないと)
「すぐ戻る!!」
「あ!!」
俺は彼女の元に走った。すると男が剣を振り下ろそうとしていた。
(まずい!!)
『それは駄目だって!!』
その制止を振り切り、時間を止めた。男を押し、彼女を抱きかかえて離れた。時間が動くと彼女を立たせる。我慢していたが吐血してしまった。
押された男は転んだが、すぐに起き上った。
「っテ!!」
「な、なんだこいつ!?」
彼女は驚きながら言う。
「な、なにが起こったの……?」
「なぜ……こんなことを……」
「……あーあ。目撃者が増えちまったな」
「だな……」
「悲しいねぇー」
(目撃者を問答無用で殺しにくるか……)
彼女が叫んだ。
「に、逃げてっ」
この三人はかなりの実力者。彼女を抱えては逃げ切れないだろう。
男が剣を振る。俺はそれを剣で受け止めた。しかし、先ほどの時間停止の負荷で体が重い。
「<アイスニードル>」
多数の氷柱の魔法が男たちを襲う。
「おっと!!」
男たちはそれを避けるために背後に跳んだ。
「少し広がるか。リアナの魔法は厄介だ」
「了解」
(リアナ……この人の名前か……)
その時、ガサガサと茂みから音が聞こえた。
「誰だ!!」
「仲間か……」
(まさか、モニカが……)
そこで男は投げナイフを飛ばす。近寄ってみるとなにもいなかった。
「ああ?」
その時、全員が驚愕した。木の上から糸で降りてきたホーンスパイダーより一回り蜘蛛の魔物が現れ、ガシっと男をホールドした。体内に毒を注入する。
「うわああああ!!!」
「ポイズンスパイダーだとォ!!」
二人は速攻でその場から逃げようとした。しかし、魔物は糸で二人を拘束し、毒を注入する。一瞬の出来事であった。
「あがあああ!!」