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転生一九三六~戦いたくない八人の若者たち~  作者: 紫 和春


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第79話 軍政

 一九三八年六月四日。

 マドリードにて政府軍と反乱軍がマドリード条約に調印を行い、スペイン内戦は反乱軍の勝利で終結した。マドリード条約を根拠にスペイン全土を掌握した反乱軍は、軍政スペインの建国を宣言。フランコ将軍は軍政スペインの統治者━━平たく言えば首相となった。

 そして軍政スペインは、即座にドイツとの同盟を組む。これにより、フランスはナチス・ドイツと軍政スペインに挟まれる形となった。

 さらに、同盟を組んだ際に、ドイツの外務大臣が次のような約束をさせたという。

『スペイン国内の混乱が鎮まり次第、フランス戦線に加わってほしい』

 当然の約束だろう。むしろしないほうがおかしい。

 この報告を執務室で聞いたヒトラーは、口角を少し上げる。

「上出来だ。我がコンドル軍団の働きもあって、スペインをこちら側に引き入れることに成功した。そして、フランスに対して軍事行動を取らせる約束もした。全ては順調だ」

 そういって椅子から立ち上がり、壁に掛けられている世界地図に手をやる。

「これでフランスを占領できる。これでもっと多くの同胞を救うことができる。私の理想郷を手に入れられる……」

 ヒトラーは含み笑いをする。

 とにもかくにも、スペインがフランスに侵略することが世に知られるのは、もう少し後になってから。

 ではなかった。

「……なるほど。まだ時間はあるってことだな?」

 イギリスにある「知恵の樹」にて、コーデンが確認する。当然のことだが、諜報員が調印式に潜入し、スペインによるフランス侵攻の情報を持ち帰ったのである。

「となれば、今のうちに何か手を打っておいた方がいいな……」

「首相は軍政スペインに対する宣戦布告を行うつもりです。すでに海軍の派遣を指示しています」

「こういう時は決断が早くて助かるよ。それで編成は?」

「軽巡洋艦四隻、駆逐艦十隻です。おおよそ三個水雷戦隊くらいかと」

「水雷戦隊だけ? 派遣先は?」

「ビスケー湾です」

「まぁ、外洋ではないから問題はない……のか?」

 コーデンは考え直すよう進言することを考えたが、これはこれで問題ないと思うのであった。

 それから数日後に、イギリス政府は軍政スペインに対して国家として承認しないと共に、軍政スペインを反乱軍として攻撃する旨の宣戦布告を行った。

 早速、イギリス海軍がビスケー湾に水雷戦隊であるR艦隊を派遣する。

 すると、遠方にスペイン海軍と思われる艦隊を発見した。

 艦隊司令官は、闇夜に紛れて攻撃することも考えたが、それまでにこちらが見つかっては元も子もないと判断した。

「第三戦速、砲撃戦用意」

 R艦隊は増速し、左舷前方に目標であるスペイン艦隊を捉える。

「砲撃開始」

「主砲、撃て!」

 6インチ砲から爆炎が上がり、砲弾が飛翔する。命中弾はなく、ずいぶんと手前に着弾した。

「誤差修正、仰角4」

「誤差修正完了」

「撃て!」

 次々と砲撃が行われる。軽巡洋艦のみならず、駆逐艦も小口径ながら砲撃を行う。

 R艦隊の砲撃に気が付いたスペイン艦隊は、反撃を行う。

「発砲確認!」

「艦種は分かるか?」

「おそらく重巡洋艦クラスかと」

「そうか。我ら軽巡洋艦は問題ないだろうが、駆逐艦のほうがキツイだろう。そのためにも肉薄するしかあるまい」

 そういって艦隊司令官は命令を下す。

「最大戦速、敵艦隊の側面三海里まで接近する」

「さ、三海里ですか!?」

「砲撃だけでは航行不能にするのに火力が足りないだろう。せっかくの水雷戦隊なのだから、魚雷を使うべきだ。魚雷の信頼性も向上してきているが、それでも確実に仕留めるには接近するのが一番だ」

「……了解しました。機関出力最大! 最大戦速で敵艦隊の頭を抑えるぞ!」

 こうしてスペイン艦隊の進行方向へと進んだR艦隊は、見事にスペイン艦隊の前方右舷側を抑えることに成功する。

 しかし、同時に敵艦隊からの砲撃が激しくなる。それでもR艦隊は怖れずに測距を開始する。

「魚雷射撃用意! 先頭の艦を狙え!」

「目標との距離、六千ヤード!」

「自艦と目標の速力、及び目標までの距離を入力……」

「魚雷発射管旋回! 左舷百五度!」

「魚雷射撃準備完了!」

「魚雷、撃て」

「発射!」

 駆逐艦二隻分の魚雷が斉射される。魚雷はそのまま、数キロメートル先にいるスペイン艦隊の先頭を進む艦に向かって伸びる。

 魚雷のうち二本が目標に命中した。ついでに目標の後ろを進んでいた別の艦に一発命中している。

「よし、命中しているな。このまま接近して、敵艦隊を徹底的に叩き潰せ」

「ヨーソロー。砲撃を再開せよ!」

 こうしてR艦隊は、敵艦隊を殲滅することに成功したのであった。

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