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第136話 ベルリン爆撃

 一九三九年四月二十八日。イギリス。

 この日、チャーチル首相は国民に向かって、ある演説をラジオで行った。

『我々は耐えてきた。ドイツ軍による猛攻から、ただひたすらに耐えてきた。ドーバー海峡の向こうからやってくる悪魔の手から。そして今日に至るまで、大ブリテン島を守るため、国王陛下を守るため、国民の一人に至るまで協力してくれた。そのことに大いに感謝したい。ありがとう。だがしかし、これからが本番だ。悪魔はすべからく狩らなければならない。この戦争は、いわば神の軍隊と悪魔の軍隊による聖戦なのだ。そして今日、我々は悪魔に対して鉄槌を下す。勝利は我々にあり! 神と国王陛下と共にあらんことを』

 国民に向かって、感謝と扇動をしているような演説であった。

 しかし、それを聞いていたのは国民だけでない。今まさにドーバー海峡を横断している、イギリス空軍所属爆撃機の大編隊の兵士たちの耳にも届いていた。

「我々へのエールって奴だな。コイツは傑作だ」

 爆撃機軍団隷下の第一五爆撃飛行団の指揮官、ミドル大佐が大笑いする。

「大佐、笑う要素なんてありました?」

「馬鹿、そういうのは皮肉っていうんだよ。真面目なのはいいが、もう少し柔軟な考えを持ってくれると助かるぜ」

 そんなことを言いながら、爆撃機の大編隊は東に向かって飛行していた。

 目的地は当然、ベルリンである。今回の第一五爆撃飛行団の任務は、ベルリン爆撃だ。

 とはいっても、バトル・オブ・ブリテンはまだ継続している。今回はドイツ空軍の出撃がないと推測される日を狙って、一気に攻撃をしようという魂胆だ。

 道中の街で対空砲火を食らったものの、高度一万五千フィートもの高度を飛んでいる爆撃機には、あまり届いていない。

 数時間ほど飛べば、ベルリンの街が小さく見えてくるだろう。

「いよいよ敵さんの根城だ。総員、心してかかれ」

 ミドル大佐がそのように指示する。

 ベルリンでは、街全域に空襲警報が鳴り響く。建物の隙間や屋上に建造された対空銃座が稼働し、はるか上空の爆撃機に照準を定める。

 その時には、爆撃機の爆弾倉の扉が開き、投下準備を整えた。

 親衛隊の命令により、対空砲火が始まった。それとほぼ同時に、爆撃隊が爆弾を投下する。

 八.八センチ砲(アハト・アハト)の砲弾が飛翔し、爆撃機の大編隊に吸い込まれていく。しかし、高度が高いこともあり、有効な攻撃が出来ていない。稀に命中することもあったが、命中しなさ過ぎていた。

 そのうち、投下した爆弾が地上に到着する。絨毯爆撃であるそれは、ベルリンの街を隅から隅まで破壊しつくしていった。

 当然、その中には総統官邸も含まれる。肝心のヒトラーは、事前に今回の爆撃を知っていたため、現在はライプツィヒに避難していた。

 だが、ベルリンの広い範囲で被害が出る。爆弾の爆風で吹き飛ぶ家屋。火災によって燃え上がる火の粉。そして機能を停止する対空砲火。

「さて、ここまでお膳立てしたんだ。我々は撤退して、後のことは彼らに任せよう」

 ミドル大佐は、そういって撤退していった。

 そこよりも低い場所を飛ぶ数機の飛行艇。イギリス陸軍第二落下傘連隊であった。

「目標はただ一人! ローザ・ケプファーだ! なんとしてでも見つけろ!」

 そういって連隊は、悲惨な現場になりつつあるベルリン上空へ進む。

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