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ルルイの魔導士  作者: カウイ
9/13

09 あっさり全滅した

 こんにちは。こんばんは。


 11月に入ってから、忙しくなってしまい続きの投稿が滞ってしまっている状況です。

 読んでくださっている方がいるのかも分かりませんが、ちょくちょくと頑張っていきたいと思います。


 最後まで楽しんでいただけたら、幸いです。

≪助けてッ!! キリアさん!!≫


「タツル!!?」

 私もそうですが、キリアは命の危険にあるような声音で助けを呼んだタツルの方へ顔を向けました。

 そして、タツルは特にピンチでもなく私たちから少し離れた位置でこちらを見ていたのです。

 はて? なら今の声は?


 私が即座にキリアへと視線を移動させた直後、彼女の背を貫通して胸から飛び出す槍のような白い針が見えました。

 その元を辿ると、一個のキューブがスピーカーのような網目の穴を形成しており、そこからタツルの声を放ったことが想像できます。

 それにしても、キリア対策がしっかりできていますね。


 この手に引っ掛かるのは、今日で5回目です。


「エメル!」

 言われなくても分かっている私は、すでにこの手に持っている『封魔・双牙』でキリアの胸を刺しました。

 すでに白い針の仕組みは分かっていますし、タツルが張りに簡易式魔封じ五寸釘を挿していたのを見ていますから、その応用?みたいなものです。

 私が使う対魔女兵装『封魔・法具』は、あらゆる魔力を封じる効果を持つ武器。

 ゆえに、コレで魔女を刺せば、魔女は魔法術を使えなくなるわけです。そして今回は、その身体を侵す呪術にも作用することで、キリアのキューブ化を防ぐわけです。


「いったーッ! おい、エメル! もちょっと優しく!!」

 めんどくさ。

 このまま殺してしまってもいいところですが、タツルが激怒するのでやりません。

 しかし、優しく刺してやる理由も無い上に、緊急事態なのですから手荒くなるのは当たり前・・・。

 

「キリアさん! 同じ手に何度引っ掛かってるんですか!?」

 駆けつけたタツルが、魔力を封じられてただの女になったキリアを―――お姫様抱っこしたぁああああああああああああああああッ!!!!!???????

 てめぇえ! このくそあま! 私のタツルに何だっこされてんだくさおがsヴぁそいdhどいあsh


「エメル。君は落ち着け」

 krgtttrrrmndsk nnndknnnnwdkkstrnkmwkrmsnn wtsdtthmsmdkksrtktnnn zrzrnttkdkn wtsmdkkkstkdsy!!


――落ち着いてください。あなただって足が破損した時には抱っこされていたでしょう?――

 アレは担ぐって言うんだバカ知能!

 何か!? 私は米俵みたいに担がれるのがお似合いってか!?


――人形の足が破損していることと、凶器が胸に刺さっている人間では対処が異なるのは普通では?――

 そうかもしれませんが!!


「ほら! 逃げるぞ!! エメルは援護してくれ!!」

 仕方ありませんね! 今回だけですからね! キリアは帰ったらぶん殴りますからね!!


 大変、思考が乱れてしまいましたが、キュービックは私たちを完全に見失っているようです。

 キリアにボッコボコにされて身体が崩壊している状態ですが、キューブは一つ一つが魔力の糸?のようなモノで繋がっており、脱落しているキューブは無さそうです。

 しかし、元の人間姿に戻ることが出来ずにいるようで、もうすぐ死にかけのラスボスが最終形態という名の弱体化状態に見えます。

 今ならフルボッコにできるのでは?

 

「エメル! 今の俺たちには気づけていないようだから、このまま走って家まで逃げるぞ! 無意味な欲は出すな!」

 むむ・・・ちょっと考えを読まれてしまいましたか。

 

 私たちは走って逃げる選択をする一方で、私たちを逃がしたくないのだろうキュービックは、再び全身のキューブを輝かせて熱線を放ち始めます。

 しつこい攻撃ですね。

 攻撃パターンが実に少ないようなので、攻略は簡単そうに思えますが・・・熱線の火力はバカにできません。

 キリアみたいな規格外は横に置くとしても、私では装甲に穴が空いてしまうでしょうし・・・。

 

「キリア!」

 バタバタと走って逃げていると、東京方面から大型の狸が走ってくるではありませんか。

 アレは、捜査一課課長の創作召喚獣『ちゃがまん』ですね。言わずと知れた茶釜のタヌキをモチーフにして作ったというラブリータヌキは茶釜のアイドルです。


「あ? カチョーッ! いいとこに来てくれましたーッ!」

 タツルに抱っこされていながら、実に元気な様子で手を振るキリア。

 それだけ元気なら走れるだろ? おまえ、降りろ。いや、マジで降りろよ。絶対心臓止めても死なないだろ?おまえさ?


「キリア!? その胸!!」

「いやー・・・あはは・・・まーた、やられました・・・あは」

「また!? タツル君ボイスによる撹乱戦法に、またッ!! 引っかかったの!?」

「かかりました・・・えへへ」

「バカめ! これで5回目よッ! また出世逃してもぉ・・・毎度毎度、出世間近でなんでこう・・・」

 雪風万里捜査一課長は、これまでに幾度となく私たちに仕事を依頼してきた女でございます。

 その報酬は、基本的にキリアの出世が条件なのですが・・・組織というものは、こちらがいかに結果を求めたとしても、なかなか難しい事はタツルも承知の上。

 少しでも出世の足しになれば。と、面倒な仕事の依頼を受けて来たものですが・・・だいたいキリアが大ポカやらかしてお流れになる・・・コレをすでに3回はやらかしている。

 いや、今回で4回目か?

 もう、仕事の依頼を受ける必要はないのでは?


「いやー。体が反応しちゃうんですよ。タツルの助けを呼ぶ声には、どうしても♪」

「・・・いい加減にしなさいよッおまえはッ!! こうして私は、いくどッ! 約束を違えてしまっているかッ!?」

「は? なにか約束してるんですか?」

「ぁ・・・いや、大した事では無いけれどね。埋め合わせを考えるのが割と辛いのよ・・・ねぇ」

「はぁ・・・なんかすみません。私が謝る理由もよくわかんないですが・・・」


 そりゃそうでしょうよ。

 雪風万里がタツルに仕事を依頼したのは、事件解決を速めるため。

 現状、魔法術による捜査を基本とした警察機構の技術は、魔女たちに対策されているために捜査の撹乱は当たり前となっている。

 これによって、まったく関係のない人間を犯人として捕まえたりしている事が多々起こっている。

 一番最悪だったのは、死刑執行日に実は真犯人による偽装魔法術で犯罪証拠が捏造されていたことが判明したことだったりします。

 とはいえ、それを看破する技術がアメツ警察機構には無い。

 

 そんな警察の信用が失墜する中で登場したのがタツルなのです。

 

 魔法術ではない魔導術は、魔女による偽装魔法術を容易く看破し、真犯人を短期間で発見することに成功・・・というのが、キリアが捜査に行き詰まっていた時にタツルが作った道具のおかげだったり。

 まぁ、そのせいでキリアが『凶悪魔女犯罪対策係』に移動となったわけですね。昇進と一緒に。

 

 また、キリアの性格を知っている雪風万里が、その成果を得られたのがタツルのおかげであると推理し、こうしてこっそりと仕事を依頼してくるように・・・。

 ・・・いや、そもそも偽装魔法術を破る魔法術を開発しろよ。って話しなんですが。


 仕方ない事ですが、魔女としての実力は犯罪をする連中の方が圧倒的に上なんですよね。

 一方で、公務員をやっている魔女っていうのは雑魚ばかりなので、どれだけ偽装されていると分かっていても、偽装を破れない。それが魔女としての実力差というわけです。

 だからこそ『凶悪魔女犯罪』というカテゴリがあるんですねぇ・・・雑魚の僻みってことです。

 

 まぁ、魔女として評価するのであれば、キリアも十分に雑魚の分類なのですが・・・フィジカルが人間を辞めている領域に到達しているがために、大抵の魔女は暴力で叩き潰せるんですねぇ・・・。


「ご両人。今は後にしましょう。それよりも、アレが魔女キュービックです。雪風さん」

「そのようね」

 もはや全身から熱線を放つだけの装置になっているといっても過言ではない魔女キュービックの姿を見て、雪風万里は息を呑む。

 まぁ、彼女の使役する茶釜タヌキならば、なんの問題も無いでしょうが・・・。

 それにしても、もはや人間の体を成してないキュービックは、まさに化け物と見えるに違いないので、果たしてどのように対処するつもりなのやら。


 ふと、雪風万里が上を見上げました。

 なにかあるのか?と思えば、無数の魔女が空を飛んで集結しているのが見えます。


「国連からのお客様が大集合ね」

「・・・アレが?」

 タツルが胡散臭いモノを見る目で空を見上げているのですが、私も気持ちは同じでしょう。

 正直、集まってくる魔女共の実力は全員合わせてもキリアに傷一つ負わせられない有象無象といったところでしょう。

 数の暴力でどうにかするつもりなのかも分かりはしませんが、キュービックに勝てるとも思いませんね。


「雪風さん。噛ませ犬の集団を嗾けた所で、キュービックの餌にしかなりませんよ」

「まぁ・・・分かっていても、相手の顔を立ててやることも仕事の一環だからね・・・私はすぐに警視庁まで戻るつもりだし」

「見届けないと?」

「課長という職は、仕事が多いのよ?」

「なるほど」

 そうして、私たちはそれぞれに走ります。

 雪風万里は警視庁の方角へととんぼ返りし、私たちは自宅のある山へと。


 そうして、国連の魔女集団はあっさり全滅したのでした。





《続いてのニュースです。昨日に発生した、高速道路にて魔女による犯罪行動で橋が落ちた事件で、今日、警視庁は犯人を発表しました。名を『魔女キュービック』といい。半年ほどまでに第二陸島アバジレンダにて出現した事を皮切りに、各地で姿が目撃されていた魔女による犯行であるとのことです》


 おー。ニュースになっていますね。

 国連による魔女キュービックの討伐部隊がアメツに来ていたが、一時間とかからずに全滅した上、魔女たちの姿が忽然と消えてしまったとのこと。

 キューブにされてしまったのでしょう。

 まぁ、眼に見えていた結果だからこそ、雪風万里もとっとと撤退していったわけですしね。


「おーい、エメル~♪ 今日の朝食はなぁあにぃ~?」

 ・・・なんでキリアはケロッと元気にしているんでしょうね。

 胸元を見れば、昨日刺した短剣が刺さったまま・・・一切の処置もしていないとか、バカですか?

 などと思っても意味などありません。

 この女、どうしようもないほどバカですからね。なんで?とか考えるだけ無駄無駄。

 コイツのために作った物では無いですが、昨夜タツルが食べなかった夕飯である爆撃ラブハートオムライスでも出してやりますかね。

 くっくっくー。

 胸に短剣が刺さったままでは食べづらかろう?

 

「おーッ! オムライスじゃないの! さっすがエメル! 美味しいわ!」

 ガツガツムシャムシャガツガツガチャガチャ・・・バカな!? なんでそんな速度で食べ込めるんですか!?

 普通、胸に短剣が刺さっていたら食べられないでしょうに・・・。


「キリアさん。胸に短剣を刺したまま朝ごはんを食べるのは止めてくださいよ」

 タツルが来た・・・。

 早くこの化け物をどうにかしてくださいよ。 短剣突き刺さったままなのに、なんであんな元気なんですか? 食欲まで旺盛とか・・・どうなっているんですか?

 いや、マジで・・・。


「いいじゃないのよ。魔力が使えないから自前の筋肉で動く必要があるでしょう? いい感じに腹が減るのよね! エメル。おかわり頂戴! できれば同じサイズで二皿!」

『おまえのために作った食事じゃねーんだよ』

 私がキレ気味にスケッチブックへ書いた言葉を見せてやると、笑い出すキリア。


「ラブに星マークまであったもんな! タツルに代わって感想を述べよう! 美味かった! さすがエメルだ!」

 ・・・へへ。よしてくださいよ。別にあんたなんかに褒められたって嬉しくないんですから。

 さて、オムライスはちょっと手間がかかるので即席袋ラーメンでも50人前茹でてあげるとしましょうか。

 ふんふふ~ん♪


「エメル。嬉々として袋ラーメンを茹でる準備をするな。キリアさんも、それ以上の食事はダメですよ」

「えぇ・・・しばらく食べられなくなるだろうから、ガッツリ食べ溜めておきたいのに?」

「ダメです。昨晩説明した通り、これからキューブになってもらうのですから、余計なモノを胃に詰めたままにするのは好ましくありません」

「・・・じゃあ? 吐く?」

「食べたモノを吐くのは止めてださいよ・・・まったく、あーいえばこーいう人だな」

「ふっふっふ。それが私、成形キリアよッ」

「・・・ふぅ。とりあえず、いろいろと準備も終えましたから、まずは魔導術人形を見ておくといいですよ」

「そうね。そうさせてもらおうか」

 えー?

 そういえば、昨日・・・帰宅後に『秘密基地』でキリアの診察やら状態回復の解析なり処置なりを試行錯誤していましたけど・・・。

 キリアがキューブになる?

 

 へぇ~? それはとっても見ものですねぇ~え♪


 人間がキューブになる様子はすでに見たので、その対象をキリアに置き換えて想像すると・・・くふふ。実にみっともない顔をすることでしょう。

 そんな期待をしつつ、タツルに連れられて秘密基地へと移動するキリア。

 私も見学するために家事を中断して付いていくのです。

 しかし・・・この場所は・・・。


「タツル? ここはアンタが出入り禁止にしている部屋の一つじゃないの・・・いいの?」

「今回は仕方ありません。キリアさんをキューブ化するに辺り、敵に干渉されるのを防ぐ必要がありますからね」

 そう。

 ここは秘密基地内でも私でさえ立ち入りが禁止されている部屋の一つ。

 私が何度か侵入を試みたこともありましたが、タツルがガチギレしてくるので止めたわけです。

 ガチギレしたタツルってば、私をバラバラに分解してくるから困りものです。カスミめ・・・緊急安全装置として全身の関節部パージ機能とかつけやがってからに・・・。

 

 案内される部屋の奥に、棺桶のような機械の箱が立てて設置してあるのですが、コレの横にある端末を操作すると蓋が開きます。

 そうして中から出てきた物は・・・。


「現在開発中のエメル型魔導術人形『G11Tジーイレブンティー』ウルシ仕様です」


 私をまんまコピーして毛や服を漆黒に塗りつぶし、肌を白く染めただけの人形が出てきたのでした。

 ・・・え? 私のコピー品!?


「エメル。君のコピーじゃない。君のボディ性能を機械で再現することを目的にした人形だ」

 ・・・ふーん。


 機械で私を再現するという違いあれど、結局は私のコピーなのでは?

 だって、見た目は同じですし・・・。

 色が違うだけで・・・ね。

 


 


 次回は、キュービックを倒すためにどうするか? を予定しています。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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