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ルルイの魔導士  作者: カウイ
8/13

08 このデブーーーーーーッ!!!

 こんにちは。こんばんは。


 この作品は、不適切。また、不快な表現が多数出てくると思うので、ご容赦ください。


 最後までお楽しみただけたら、幸いです。

 全身を駆け巡る魔力の光りは、網の目状に広がって見えるその姿。

 人間であれば在り得ない光り方をしていることから、奴の正体は知れました。


「マズいな。逃げるぞ」

 え? 逃げるんですか!?

 私の持つ対魔女戦闘用兵装『封魔・法具』があれば、あんなキューブの寄せ集めなどサクッと倒してごらんに入れましょう。


「エメル! アレはキューブで作られた魔法術人形だ! さっきも言ったろう!? キューブは魔力炉としての活用が可能なんだ。それを人型になるよう積み重ねて作られているという事は、魔力だけならエメルを凌駕しているということになる!」

 そんなバカなことありませんて・・・。

 私は世界最高性能の魔法術人形『エメル』ですよ? こんなサイコロの寄せ集めみたいな魔女風人形に後れを取るわけないじゃないですかー。


 などと余裕でいたのですけど、キュービックの全身が光りを瞬かせたと思ったら、全身から熱線を放射して私へと攻撃をしてきました。

 さすがに熱線一本や二本なら、この両手両足に装備している『封魔・法具』で捌いて見せますけれど、全身から人の形をした熱線を放射されてはムリです。

 ムリムリ!

 ここは素直に逃げることにしますよ!


「おい! だから逃げるぞって言ったじゃないか!」

 私は世界最高性能の魔法術人形なのですよ!?

 こんなポッとでの魔法術人形なんかに後れを取るなどナイナイ!って思うのは当然でしょうに!

 おのれぇ! この私に逃げを選択させるなど!!

 きっとこの人形を作った魔女は世界魔女ランキングの上位にある人で間違いない! まさか、カスミを超える魔女が現れてしまったということですか?

 厄介なッ!


 タツルと一緒に高速道路を走って逃げるわけですが、あのキュービックはどういうつもりか? 私ばかりを執拗に攻撃してきます。

 すぐ隣にタツルが居るというのに!

 いや、私を狙ってもらわないと困るのは確かです。タツルは私の護衛対象ですから、狙われるのは困るのです。

 でも。ですよ?

 こうして敵が二人いるのですから、普通は二人同時か、交互に攻撃してくるものでしょう?

 なんで私ばかりに攻撃を集中してくるんだ!!って話しなんですよ!

 おかげで、隙を狙って反撃する間を得られません!!


『援護してください!』

 予め、そういう言葉をスケッチブックに書いて置き、いざという時にタツルへ即座に伝えられるように召喚できるようにしておくことで、召喚してから書くという手間を省きます。

 が、召喚してすぐにキュービックが熱線で蜂の巣にしやがりました。

 なんでそんなに殺意高いのッ!?


「援護はムリだッ! ライダールに装着させた砲戦装備の転送で、スマホのバッテリーが尽きたからな」

 何やってんですかッあなたはッ!

 もっと大容量のバッテリーを開発して取り付けておきなさいよ! できるでしょ!!?

 いや! それよりも、そんな貴重なバッテリーを大して役にたたない装備の転送に使うなど、状況判断能力が無さ過ぎじゃないですか!?

 こういうピンチを何とかするために使うモノでしょうがッ!!

 ええい!

 どうすればいいんだって話しになってしまいますよッ!! だれかーッ! 裸の女が私を追ってきますーッ! 助けて―ッ!!

 声が出ないんだから叫んだって意味無いだろ私ッ! なんで発声器官を付け忘れたんだカスミッ! あのバーカバーカ!


 と、後方から熱線を束ねた剣を振るってきたキュービックの一撃を、封魔・双牙で受け流します。

 魔力で剣の形状を作っているために、封魔・双牙に接触した時点で魔力が消失し、熱線を束ねた剣は霧散するわけですね。

 しかし、熱はそのままなので、霧散するということは周囲に飛び散ると言い換えてもいいかもしれない状況なわけで・・・。

 あっちちちっちち! あついあつい! 私の身体が融けてしまうじゃないですか! ふざけんなよおまえ! 私を融かしてどうするつもりだよ!?

 

 あ、そもそも剣が届く間合いにいるってことは・・・。

 キュービックが私の目の前に迫っており、その全身から熱線が――――。


「妙だな」

 そんな言葉と共に、タツルが横からキュービックの顔を殴りつけました。

 なんかもう、ぽーん。って感じで吹っ飛んで行ったキュービックは、高速道路を二、三度バウンドして転げ回ってから身を起こして周囲に顔を振っています。


「・・・俺が見えていないのか?」

 とか言いながら、キュービックへと大きく迂回しつつ接近するタツル。

 その巨体が轟かせる地響きのような足音があるにも関わらず、キュービックは自分が殴られた方角へ向けて熱線攻撃を仕掛けます。

 あと、ついでのように私へ向けても熱線を放ってきます。ムカつく。


「見えていないようだな」

 そうして回り込んだタツルの拳を再び顔に受けたキュービックは、またも高速道路を二、三度バウンドしてから転げ回って、しかし今度は『ガバッ!』て感じで身を起こすと、即座に殴られた方向へと熱線を放っています。

 でもムダ。

 すでにタツルはキュービックの背後に回り込んでいるんですよね。


「なるほど、眼と鼻と耳は飾りか? 現状では機能していないのか?」

 その脳天に拳骨を振り下ろして高速道路に顔面を埋め込むタツル。

 ・・・なるほど、これはもう我らの勝ちは決まったも同然ですか。


「どうやら、魔力反応だけを追っているようだ」

 という事は、隠密戦闘状態に移行すれば追い掛け回されることも無くなるってことですかね?

 いや、これは試して見る価値ありますね。

 ならばさっそく、隠密戦闘状態へ移行します。

 私の魔力炉に機能制限を設け、身体能力を低下させて魔力の放出を遮断。ボディ内部に魔力の層を形成し、防御力のみを強化。

 封魔・法具は魔法術を封じる兵装であるため、魔力反応そのものが出ないからそのままで大丈夫。

 

 これで、キュービックは私を見失った事になります。

 

 ジッと見ていると、キュービックは急ぎ私の方へ顔を向けてきました。

 魔力反応を見失ったのでしょう。頭を左右に振って反応を確かめるべく動いている様子。そうして立ち上がると、その場でぐるりと一回転して周囲を確認。

 どうやら、私を完全に見失った様子・・・。

 

 えっへっへっへっへっへ・・・ちゃあぁあんす♪

 さっきまではよくも私を追い掛け回してくれましたねぇ・・・ここからは一方的な暴力であなたをフルフルボッコのボッコボコにして差し上げようじゃないですかぁ~♪


 と、ゲスな考えでヤツへと攻撃をしようと思っていると・・・不意に飛び上がりました。

 そいえば、空を飛べるんでしたね・・・ちょっと忘れていましたよ。

 さらに、全身がさっきまでより遥かに眩しいほどの光を放ち始めると、それは雨のように降り注ぐのです。

 そう。

 全身のキューブが個々に光り輝いて、熱の弾丸を周囲に撒き散らし始めるのです。


「逃げろ!」

 言われずとも逃げますよ!

 二人で高速道路を必死に走って逃げます。

 キュービックは周囲に撒いた攻撃が私たちに命中していない事を確認するように体を回転させて、私たちが倒せていないという確信を得たように走るような速さで移動しつつ熱弾を絶えず発射し続けます。

 こう、後ろから熱弾の密集した壁が迫ってくるような圧迫感で、とにかく高速道路を走ります。

 

『なにか策は無いんですか!?』

「とりあえず、スマホのバッテリーを充填してくれ。装備を転送しない事には策など立てられない」

 あーもーッ! スマホを私に寄越しなさい!

 髪の毛を一房ほどタツルへ伸ばし、差し出されるスマホを受け取ります。

 そのまま髪の毛先を充填口に挿し込み、魔力の充填作業を開始。こういう時、自分が魔法術人形で良かったと思えますよ。


「じゃ、囮は任せたぞ」

 え?

 私が一瞬だけ呆けた直後、キュービックの熱線が私目掛けて照射されてきたのです。

 なんで見つかった!? 隠密状態で魔力放出は遮断されているはずなのに!!?ってパニックになりかけましたが、直近でスマホに魔力充填し始めたことを思い出して、タツルにしてやられたのだと理解します。


『このデブーーーーーーッ!!!』

 スケッチブックの一ページを召喚してタツルに見せつつ、あっと言う間に熱線で焼失する私の文句。 


 そんな事より、さっきよりも殺気が感じられるほどの殺意が熱線に乗って迫ってくるんです。

 マジでヤバいですって! 私が世界最高性能と言えど、両手両足は合計四本だけしかないのですから、全身を構成する無数のキューブから放たれる熱線を捌き切れるわけもなし!

 頑張って回避を繰り返すも、とにかく逃げるしかない現状! なんつーッ魔法術人形ですか!? 誰だよこんな移動熱線砲台作ったバカは!?


 ひーぃやー!

 ちょっとなんでそんな熱線をバカスカ撃って魔力が切れないんですか!? ありえないでしょ!!

 私だったら、とっくに魔力消費量が許容限界で制限がかかり、動けなくなるところだというのに! ズルいズルい! 私にも大容量魔力精製炉の搭載を希望します!

 つか、外付けでいいから作って!!


「エメルーッ! もう少しだーッ!」

 え? もう少し? なにが!?


「キリアさんが来るぞーッ!」

 はぁ? あんなのが来たって意味なんか無いでしょうが!


 不意に、上空から妙な風切り音を検出すると、キリアの反応が音速で接近していることをセンサーが報告してくれます。

 生身で音速越えとか・・・人間かアイツ?

 と、私を追っていたキュービックの攻撃が止み、キリアが迫る上空へと熱線を束ねた極太熱線を照射して迎撃。

 しかし・・・。


「あっついだろうが!」

 全身を熱線で照射されているというのに、真正面から熱線に突入して、真正面からキュービックへと踵落としを決めるキリア。

 ・・・アレ? いつ人間を辞めたんでしたっけ?

 

 そして、高速道路に落下してきたキュービックは、分厚い道路の橋に激突すると粉砕しながら貫通して地面へと姿を消していきました。

 

 いや、加減しろよ・・・。

 いやーッ! 高速道路が崩壊連鎖で続々と沈んでいくじゃないですか!!


「・・・やっべ。やりすぎちゃった」

 ふざけんなよ! このバカ!! マジでふざけんな! 私とタツルまでお陀仏するところだったじゃないですか!!


「お? タツルもエメルも無事だな? よしよし」

「よし。じゃないですよ・・・危うく生き埋めになるところでした」

『バーカ。バーカ』

「それより、アレがキュービック?」

「そうですね。魔女風に仕上がっている人形ですよ」

「それは蹴飛ばした時に分かってる。つか、ちょっと火傷したわ。いってーな」

 ちょっと?

 パッと見だと無傷にしか見えませんがね?


 無駄話をしていると、瓦礫の山となった高速道路の橋が爆発するように吹っ飛んで、全身を網状に光り輝かせているキュービックが飛び出してきました。

 その眼がこちらをしっかりと睨んでおり、視線は・・・どうやらキリアに絞り込まれている様子。

 体を構成するキューブが一斉に熱線を放つと、それらの軌道を操作してキリアに集中攻撃を仕掛けてきました。

 私なら逃げる数の熱線ですが・・・。


「おらぁあ!!」

 気合いの籠った声と共に、右ストレートのパンチを繰り出します。

 別に、キュービックとの間合いを詰めたわけではなく、キリアとヤツの間には100m以上は離れているだろうに。

 次の瞬間には、熱線が霧散してキュービックの全身が凹っと変形すると殴られたような様子で吹っ飛んでいきます。

 なんつー攻撃ですかねぇ・・・。

 魔力を乗せた一撃では無く、空気を殴って押し出すような感じで衝撃波を叩きこんでいる・・・とかなんとか、キリアが前に説明してくれた技ですが・・・なんなんでしょうね?

 この一撃、私のセンサーでも捉えられないので、気付いたら喰らっていた。ってことが多いんですよね。


「一気にキメるかッ」

 そんな一言と同時に、特に間合いを詰めることもせず・・・この場で連続パンチをし始めるのです。

 正直、端から見ると「何やってんだ?」となる行動なのですが・・・。

 吹っ飛んでいくキュービックを見れば、全身が殴られているような衝撃が連続して発生し、その身体を構成するキューブがボロボロと崩れていく様子が見えました。

 ・・・マジで、どんな理屈で放たれている連続パンチなんでしょう?

 相変わらず、何かが狂ったような戦闘能力ですね・・・元々はろくに魔法術も使えなかった。とはとても思えないですよ。


≪助けてッ!! キリアさん!!≫


「タツル!!?」

 私もそうですが、キリアは命の危険にあるような声音で助けを呼んだタツルの方へ顔を向けました。

 そして、タツルは特にピンチでもなく私たちから少し離れた位置でこちらを見ていたのです。

 はて? なら今の声は?


「しまった!!」

 キリアの素っ頓狂な声と同時に、その背を貫通して胸元より飛び出したのは、キューブによる呪いの白い針攻撃でした。


 あー、してやられましたねぇ・・・。



 次回は、援軍到着。を予定しています。


 エメルは会話ができないため、スケッチブックを召喚して筆談という形でタツルとコミュニケーションを取っています。

『なにか策は無いんですか!?』の時にスケッチブックを召喚しているため、この時点でキュービックに魔力反応を捕捉されているという状況です。

 なので、タツルが囮にする判断をした。という流れです。

 エメルは気づいていないです。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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