表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルルイの魔導士  作者: カウイ
6/13

06 ふーん。

 こんにちは。こんばんは。


 この作品には、不適切。また、不快な表現が多数出てくると思いますので、ご容赦ください。


 最後までお楽しみいただけたら、幸いです。

「エメル。アレを制圧しろ」

 任せておきなさい!

 

 爆発物の性能実験を行う部屋に備えられた管制室?とかなんかそんな名前の小部屋より飛び出して、タツルが作った魔導人形の『松竹梅』を壊したトラップを制圧するために飛び掛かります。

 まぁ? 所詮はトラップですからね。

 すでに発動したのであれば、再発動とは行かないでしょう。


 針が飛び出したままの段ボール箱を掴んだら、私の胸に新たな針が激突してきたのです。


 ぐぇーッ・・・と、人間なら声を出すのでしょうが、私には発生器官が無いので声はでません。

 針が飛び出す勢いのままに、この体が実験室の壁に叩きつけられ、針は尚もその長さを伸ばし続けるように私の胸を圧迫してくるのです。

 うーん。

 この程度で破損する我がナイスボディではないんですけども・・・ぅん?


 ミシミシ。


 ・・・え? なんか嫌な音が?

 アレ? 嘘? まさか、私の身体から出ている? そんなバカな! コレにそれほどのパワーが!?

 ま、マズいです。

 ええい! 手足が宙ぶらりんで、上手い具合にパワーが乗りません!

 叩いても払えないし、蹴りも上手い具合に決まらない! ちょっと私の足ってば短くないですか!?

 

 みしみしみしみしみし。


 ひぃー! なんかどんどん音が大きくなって・・・あ、壁が凹み始めているじゃないですか。

 なんだ。実験室の壁が圧で変形し始めている音でしたか。

 びっくりしたー。


「君は何をしているんだ」

 と、私に言いつつ、タツルは段ボールから飛び出している物に五寸釘を立てて、魔封槌で打ち付けます。

 カーン。カーン。コーン。

 叩く音が変わったと同時に、針は力を失って引っ込んでいきます。

 そうして、段ボール箱の中から取り出されるサイコロのような立方体。タツルは汚いモノを摘まむようにして持ちます。


『カスミが造った簡易魔法術封じの小道具が役に立ちましたね!』

「そうだな。君より役にたった」

『はぁ? それは喧嘩売ってんですか? 私の方がマルチに役立つでしょうが!?』

「しかし、あのザマではね」

『・・・』

 本当に言い返せません。

 おのれ・・・絶対に許さないぞ! 謎の魔女キュービック!


「それはそれとして、君はコレがなんだか分かるか?」

『サイコロの目を書き忘れたサイコロ』

 タツルは冷たい目で私を数秒ほど見つめると、そのまま真っ白なサイコロを手に実験室を後にします。

 私もその後ろに付いていくだけです。


 そうしてタツルの研究室にやってきました。

 ここにはカスミとは異なる魔導術を用いた機械が大量に置かれており、度々やって来ては何かをやっているのですが、私にはまったく分からないことですね。

 何かの肉を斬り刻んで機械に放り込んだら、スタートボタンを押して何かが始まる。

 そうしてモニターに数値やらグラフやらが表示されて、タツルが特に顔色を変えることなくデータをメモしたりする。

 それらのデータを元にして、なにか調整を行うと・・・また違う機械で何かし始める。

 そういう部屋です。


「さて・・・まずは何から調べるべきか」

 などと言いながら、サイコロを五寸釘ごと肉叩きで叩き始めます。

 面白い事に、このサイコロは叩けば叩くほど潰れて横幅が拡がっていく。五寸釘ごと変形していくものの、タツルが叩くのを止めたらグチャーッと広がっていたサイコロが、またサイコロに戻るのです。


 ふむ。っと、ただ一言だけを声に出すと、次はナイフで一部を切り取りました。

 すると、切り取った部位をゴミ箱へ捨てます。

 しかし、捨てる様子を観察し、捨てた後もゴミ箱から眼を離さない。と、ゴミ箱に入ったサイコロの切り取られた一部がフワ―ッと出てきて、サイコロに合流しました。


 ふむ。っと、再度同じ声を出して、次の作業に。

 カセットコンロに火を点け、直接炙る・・・チーズみたいにとろけてくるんでしょうか?

 しばらく火にかけてジッと見つめていましたが、特に融ける様子も無く・・・と、タツルが火から取り上げてサイコロを触りました。

 熱した物を直に触るのは、火傷するでしょうに!


「熱くないな・・・火で炙った直後なのに・・・焦げ目もないとはな」

 ・・・どういう物体なのでしょうね?


 その後も、薬物に漬けたり、パン生地のように伸ばして見たり、フライパンで炒めて見たり、蒸して見たり、凍らせて見たり、ミキサーにかけて見たり。

 端から見ていると、何をしているんだ?って首を傾げてしまうような事ばかりしています。

 そうして、ある機械で検査などもやったり。

 

 こうなったタツルは、もう止まりません。

 何やってんのか分かりませんし、私は家事でもやってくるとしますかね。


 おーい。ウルシー。タツルの事よろしくー。

――承りました――

 

 そうして、私は秘密基地を出て自宅に戻り、キリアのヤツから回収した三日分の着替えを洗濯する。

 それから、タツルの御夕飯をしたくして、お風呂も掃除し、埃が溜まった場所を掃除。タツルの祖父母の写真立てを綺麗に拭いて、お供え物の交換。

 仏壇も綺麗にせねばなりません。

 ・・・タツルの祖父母・・・カスミとキリアの両親は、カスミが中学生の時に魔女犯罪に巻き込まれて死亡しているそうです。

 それからは、ここら一帯の大地主である『壱里家』の現当主が保護者となって、今日まで生活してこれた。という経緯があったり。

 聞くところによると、カスミは生まれた時から人間離れした精神性を持っており、大人も舌を巻くほどの知性を獲得していた天才だったとか。

 ・・・まぁ? 私を作ったのですから、あながち間違いでもない気がしますが・・・うーん。

 知っている者からすれば『ただの人』でしかなかったですがね・・・。


 世界魔女ランキングで2位という世界でも異様な快挙を成し遂げていましたが、本人は魔女としての実力は並み。

 むしろ、魔女と正面から戦っても勝てないからと『魔法術を封じる魔法術』を研究テーマとして、対魔女魔法術を開発していったモノ好きです。

 普通、そんな術は研究しません。

 過去に、そういうテーマを研究していた魔女は、実験中のミスで自身が魔法術を使えなくなる状態になり、人生が詰んだという話もあるそうで。

 メリットよりもデメリットの方が大きい研究テーマなのです。


 まぁ、わずかなメリットを掴み取ったことで、大抵の魔女は魔法術封じで完封勝利してしまうわけですが。


 そんな成功者だったからこそ、魔女社会を乱す可能性があるということで、政治家どもの陰謀により暗殺されてしまったわけです。

 当人は「ちょうどいいから、死んだふりしてあの人と結婚してくるわ」と、外国に出て行ったんですけどね。

 で、今では外国人として第六陸島・アメツに堂々と観光客でやって来て、あっちで産んだ子供とか連れてきたりするんですよ。

 ・・・ち。

 やってくると旦那との惚気話ばかりするし、子供は可愛いので許すが、子供自慢は鬱陶しい。タツルもニコニコしているから、水を差すような真似はしませんけど。

 

 ・・・そういえば、旦那さんの写真を見せてもらったことないな。


 ええい、この苛立ちはッ夕飯にぶつけるとしよう!

 オムライスだ! オムライスを作ってケチャップで爆撃ラブハートしてやる! タツルに私の愛を食べてもらうんだ! なんせ、私たちは事実上の熟練夫婦みたいなもんですからね!

 と、私がタツルとイチャイチャしている妄想を暴走させている中で、チキンライスを作り、卵でオムレツを作り、チキンライスに乗せて真ん中で切って被せてやります。

 その上に、トマトケチャップ(市販品)でラブマークを書き・・・。

 

「エメル。すぐに警視庁まで出かけ―――」

 えぇ!? 我が渾身の爆撃ラブハートオムライスが出来たというのに!?


「・・・また、ずいぶんと山盛りの丼ものを大皿にひっくり返して乗せたようなオムライスを作ったもんだな」

『タツルの御夕飯です』

「ありがとう」

『爆撃ラブハート☆彡オムライスです。召し上がれ』

「多方面で重すぎる・・・とりあえず大型冷蔵庫に入れて置いてくれ」

 えー。


「それよりも、すぐに警視庁に行くぞ」

『どうかしたのですか?』

「キュービックからの荷物にあった立方体・・・アレは、人間の呪術変異形体だ」

 ふーん。





『つまりは、人間なのですね?』

「そうだ。このサイコロ・・・いや、キューブと呼ぶが・・・このキューブから人間の遺伝子が採取できたこと・・・そして、生体反応があるという点が恐ろしい」

 ふーん。


「驚くべきことに、このキューブはこのサイズで魔力を精製する炉として機能している。ただ素体となった人間の魔力量・・・魔法術を使う能力値が低いのだろう。出力は大したことが無い」

 ふーん。


「しかし、これ一つをスマホのバッテリーに使用すれば、充填不要で使い続けることができるようになる。それだけの驚異的魔法術だ。分かるか? コレは世紀の大発明になる。コレを完成させた魔女は天才だ。間違いなく数百年は生きているのだろう。抗老化で長寿を実現しているのか?定かではないが、仮にキュービックという魔女がコレを開発したというのであれば、ぜひとも技術を学ばせてもらいたいものだ」

 ものすっごい一息で語ってるぅ。


「コレよりもさらに高性能なキューブがあれば、より高性能な魔導術人形の開発も進めやすくなる。例えば、航空機だ。戦闘が可能な飛行機は――――――」

 うんぬんかんぬん。

 なんだか久々に熱くなっていますね・・・この状態で下手な水の差し方をすると、とっても怖いのでやりません。

 でも、コレを聞いているのも辛いんですよね。

 興味ないですし・・・。


 現在、再びアメツ東京・警視庁を目指して移動中なわけですが、またも高速道路を使っての移動となりました。

 合流から高速道路に乗るべく、ウインカー出して合流したときです。

 後ろから速度制限を無視したスポーツカーが警笛を鳴らしながら一切のブレーキも踏まず、ハンドルを切って避ける動作もしないまま突進してきます。

 

「ライダール。コンバット」

 次の瞬間、ライダールに丼形状のボディが装着されると、両腕と両脚が転送されつつ装着されて視界が一気に高い位置へと持ち上げられました。

 そして、後方へと向き直ってスポーツカーへと右掌を振り下ろし、押し花のように道路へと叩き潰したのです。

 飛び散る車を構成する部品の残骸と、人間だったものの体液もろもろが周囲へと飛び散ります。


「ふむ・・・システム正常。各部負荷は許容範囲。右手のフレームダメージが想定より高いが・・・簡易メンテナンスで対応可能か・・・うん。悪くない」

 ・・・普段はやたらめったら殺すなとか言うくせに・・・いえ、何も言うまい。


「はーい。そこのお二人さーん」

 うん? もう警察が来た?


「まいどまいど。仕事を増やすのやめてくれない?」

「・・・お勤めご苦労様です。今回はあっちが体当たりをしてきたので、処理しただけですよ」

「それは見てたので分かってる。あのスピード違反者を追っていたわけだしね」

 高速道路交通警察隊ですね。

 国の法律で、車の運転は専用の魔法術人形を使うように義務付けているわけですが、世の中にはモータースポーツというモノもあります。

 こういうスポーツと名が付く事柄においては、人形ではなく人間が直に行うものとなるわけです。

 そんなスポーツに憧れるなどして、公道で自ら運転する人間は今も多く存在し、先ほどのスポーツカーもそういう手合いなのでしょうね。

 っと、そんな感じで車を暴走させるバカが湯水のごとく湧き出てくるのが高速道路という道路。

 こんな無法共を野放しにしておくのは、危険どころかアメツ東京の首都計画に支障が出る。と、発足された部隊。

 なんと、構成員はモータースポーツでパイロットなりドライバーなりを現役で務めていたり、引退したけど乗りたいと思っている人材が集まっているのです。

 で、例によって私たちは高速道路を使う機会が多いので、こういう事故に巻き込まれがち。

 すでに顔なじみになっている隊員が半数以上。

 これが、話すと気持ちのいい方が多いんですよ。スポーツは健全な精神を育むなどと聞いたこともありますが、マジなんですかね?


「ああ、もちろん。君たちは罪に問われないので大丈夫。さっきの車は人形による運転ではなかったので、完全に自己責任だから・・・ただ、一応は事故発生時の目撃者として、事情聴取はしないといけないのよね」

「いつも通りということでしょう? 結構、急いでいるので、手早く済ませていただきたいのです」

「おや? 珍しい。わかったわ。すぐに書類を書くからね」

 いつもの紙を取り出して、ペンを走らせながら事故状況を訊ねてくる隊員。

 特に話すことも無いけれど、しっかりと答えるタツル。

 うんうん。これならすぐに終わりますね。


―――上空より魔力反応。急速接近。―――


 私の高性能センサーにギリギリまで感知されず、それは上空から飛来して交通警察隊の女性を刺し貫いたのでした。


 


 次回は、襲撃者との戦闘。を予定しています。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ