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ルルイの魔導士  作者: カウイ
14/14

14 そうして倒壊した。

こんにちは。こんばんは。


この作品は、不適切。また不快な表現が多数出てくると思われますので、ご容赦ください。


今回のお話は、前回の続きとなります。


最後まで、お楽しみただけたら幸いです。

「お、お出でくださいッ! 火達磨十三さんッだけッ!」

 

 トウカの奴が、その両手を叩き合わせてから指を動かして『印』というモノを形作り、コレを即座に別の『印』に変えて組み合わせていく。

 タツルが言うには、魔法術の詠唱を指で行っているのだそうで、『手』その物が字を象るらしい。

 手と手を合わせることで魔力を循環?させ、左右の字を象る指が接触する瞬間に生じるエネルギー?を用いることで、魔法術っぽい技を扱うことができる?のだとか?

 円環がどうのこうの、属性がうんぬん・・・。

 ・・・何を言っているのかわかんないですねー。


 ま? 要するに、なんかワシャーとパントマイムすれば忍術は使えるってことでいいでしょ?


「くぅぅぅ! やっぱりぃ、私の火達磨まで召喚されてしまいますッ!!」

≪うぇー・・・置物の達磨に火が点いたような火達磨じゃん≫


 キョウカより借り受けた『火達磨十三』の召喚。

 なんとも間抜けな話ですが、トウカはキョウカより教えられた創作召喚獣の召喚法を実践しても召喚することができなかったのです。

 なんということでしょう・・・魔法術の才が無い。という話もしていたらしいのですが、私は特に覚えていませんね。

 タツルが、とりあえず火達磨十三の創作召喚魔法術を解析し、キョウカより施されたという秘術を解析し、そうして数十分ほどで忍術で使えるように改造してくれました。

 そうして、召喚してみれば・・・無事に『火達磨十三』は召喚できたものの、なんと自身の火達磨まで引っ張られるように召喚されてしまう事態に。


「正直、これはもうどうしようもないね」

「そんな!?」


 希望的なことを一切捨てて、タツルはハッキリキッパリ告げます。

 そうして、そのまま戦力外として追い返してしまえばいいのですが・・・。


「丁度いいので、その置物火達磨を武器にしてしまおうか・・・ご当主の火達磨十三なら、サッカーボールやバスケットボールみたいに扱えるはずだ」


 などと、タツルが助言した直後から、火達磨十三が足元に転がっている火達磨を蹴り上げると、オーバヘッドキックで壁へと蹴り付け・・・跳ねて戻って来たソレを掴むと地面に投げつけて跳ね返って来たソレをまた地面に叩きつけ・・・そのまま軽快に走り始める。

 するとどうだろう?

 キリアが前へ飛び出して ≪でぃーふぇんす! ディーフェンス!≫ とか言いながら火達磨十三の妨害を始め、これを軽やかなステップで避けると、さらに踵で蹴りかかってくるウルシさえも華麗に回避し、そのまま部屋の壁に火達磨を叩きつけた。

 その衝撃によって、特殊合金製の壁が凹ッと凹む。


「・・・うん。武器として役立ちそうだ」

「・・・・・・え、これでいいんですか?」


 タツルもトウカも、なんだか思考停止状態みたいに無表情で、凹んだ壁をジッと見つめている。


「相手はキュービックだ。現段階で判明している攻撃手段は『熱線』だから・・・創作筋肉召喚獣である『火達磨十三』が戦うには、遠距離戦対応の武器が必要だ・・・が、君の置物召喚獣『火達磨』で解決した」

「いやぁ~・・・私ってば、天才のソレでしたかぁ~」


 いや、タツルは褒めてないぞ?


「よし。とりあえず、火達磨十三に用意するはずだった遠距離戦装備は必要無くなったので、予定を繰り上げてしまいましょう。キリアさん。ウルシ。君たち二人で『火達磨十三』と戦闘訓練をおねがいします」

≪おっけー! まだまだ身体の感覚がズレてるからね。相手がキョウカさまの召喚獣なら、良い訓練相手になるってもんよ≫

≪マスター。隙を見てトウカを殺・・・攻撃してもよろしいですか?≫

「ダメだ。火達磨十三の召喚と戦闘による魔力消費に慣れてもらう訓練でもあるからな」

「っていうか、あの子まだ私の命を狙っているんですかッ!?」


 なーんでそこまで執着してんのかな?


「ウルシ。これはコレ。それはソレ。として、いい加減に割り切れ。できないのなら、初期―――」

≪かしこまりましたマスターッ! とりあえずは当面の目標を達成するまでは、二度と言葉にしないことをお約束いたします!≫


 ・・・こいつ。


「・・・さて、エメルは俺と一緒に来てくれ」

 ん?


「警視庁へ。出かけるよ」

 は?





 まさか、このタイミングでアメツ東京・警視庁へ出かけることになるとは・・・。

 キリアからは「課長によろしくー」と、呑気にも手を振って送り出してくれるし、ウルシは「お早いお帰りをー」と笑顔・・・いや、顔だけ見ても分からないか。

 私たち、人形ですからね。


『しかしタツル? どうして警視庁へ行くのですか?』

「雪風課長に用ができたんだ」


 雪風万里に?

 いったいどのような用事ができたというのでしょうか?



 先日の戦闘・・・キュービックとの戦いによって、高速道路が通行不可になっている。

 通行不可の看板が設置されていたので下道を走っていると・・・高速道路の下を通っていた道路まで潰れているのでさらに迂回することに・・・。


『帰りましょう』

「ダメだ。警視庁へ急いでくれ」


 うぇーん。ただでさえ東京の端っこにある山の中だというのにぃ・・・めんどくさーい。

 などと泣き言を言っているわけには・・・口が無いので考えているだけですがね。

 言いたい文句は山ほどありますけれど、トウカのヤツをしばらく泊めるわけですし・・・食料の買い足しはしておきたいところですからね。

 おのれキュービック・・・交通の便を悪くしてくれやがってからにぃ・・・。



 こうして、なんやかんやと時間がいつもより掛かりましたが、東京へ無事に到達するわけですね。



どぉぉぉぉぉん


 ヤダー。

 今日ってお祭りでしたっけー? クリスマスには早すぎますねー。


「・・・警視庁の方角から煙が噴き上がっているな」

『では、帰りましょう。目的地は木端微塵になった。ということで!』

「ダメだ」

『そんなー』


 まるで図ったかのように、私たちが到着すると同時に爆発が起こるなんて・・・何者かが私たちの行動を見ているとしか思えません!


「ずいぶんと派手に暴れているが・・・テンテルテは、ちゃがまんに苦戦しているのか?」

『は?』


 私は首だけを回してタツルを見ます。

 煙が噴き上がっている警視庁の様子を眺めつつ、口の端がわずかに笑みを形作っている。


 っていうか、テンテルテってキュービックを作った魔女であり、今回の事件じゃ黒幕的な存在じゃないですか・・・。

 まぁ、すでにタツルが暴いちゃっているので、黒幕っていう感じはしないですけどね。

 

『タツル? なぜ分かったんですか?』

「ん? 警視庁には虫型機械人形を撒いてあるんだ。キリアさんに届けている着替えと一緒に忍ばせて、潜入させてあるんだよ」

 

 なにそれッ!?

 私、初耳・・・。


「そんな虫型人形に仕込んだ、とうちょ・・・集音器にテンテルテの独り言が引っ掛かったので、急いで出て来たんだ」

『あー、そうだったんですねー』

「どうやら、キリアさんにバラされたキュービックの補修に、警視庁の刑事たちを使うつもりのようでね。丁度いいので、こちらも便乗させてもらおう。と・・・」


 便乗?

 え? そこは「ここでケリを着ける!」的な感じになるかと思えば・・・『便乗』?

 タツルが何を考えているのか分かりません。

 しかし、何に便乗するのかはさておいて、テンテルテを目的に警視庁を目指しているわけではない。という事は、なんとなく察しました。


「エメル。すまないが先行してくれ・・・ちゃがまん。雪風万里捜査一課長をキューブにされるのは痛手になる」

『えー・・・アイツ一人なんてどうとでもなるでしょう?』


 ちゃがまん。

 この第六陸島・アメツでも随一の防御力を持つアメツ東京・警視庁所属の捜査一課課長『雪風万里』の茶釜のタヌキをモデルにした創作召喚獣。

 護りに関しては圧倒的なスペックを持ち、溶鉱炉に落としても中身を守る守護獣。

 確かに、アレならキュービックの熱線を浴びても耐えきれるでしょうし、キューブによる刺突も通さないでしょう。

 そして、召喚獣・・・つまりは四足の獣なので機動力もあるという優れもの。

 しかしながら、最大の欠点は攻撃力が無い。ということでしょうね・・・。


 防戦のスペシャリストであり、サンドバック召喚獣とも言われているのが、ヤツの『ちゃがまん』


 ただ、防戦になったら攻略法がほぼ皆無ということで、並みの魔女では文字通りに歯が立たないのである。

 ちなみに、キリアがキュービックにやった連打にも耐えられる優れもの・・・ゆえに?アメツ東京・警視庁の『盾と矛』などと呼ばれたり?している?って、前に自慢していたような気がする。


「エメル。雪風課長を助けて『恩』を売って来てくれ。そうしたら、即座に回収する。だから頼んだよ?」

『任せてください! 恩の押し売りは大好きですッ!!』


 私は、そして『飛脚丸』から飛び出して、身体に負担とならない程度の最高速度で道路を駆ける。

 警視庁から爆発が生じたことで、自動車や歩道を歩く人間共は足を止めている。邪魔だが、動かれているよりは止まっていてくれる方が走りやすい。

 邪魔な車の屋根を飛び、人垣を飛び越えるのに頭を足場にして駆ける。

 それでも道が途絶えるならば、ビルを駆け上って屋上から跳ぶ・・・そうして、10分は掛からずに警視庁へと到着するのです。


 うーん。

 私って、やっぱり世界最高性能の魔法術人形ですよねッ!

 喋ることができないだけで、その他もろもろは間違いなく世界最高性能でアンサーッ!!



どどぉぉん



 どどーんッだって。

 また随分と派手に暴れているようですが・・・熱線が煙に穴を開けて空へ飛び出していきましたよ。

 私の高性能な眼が、警視庁の高層階を駆け回る『ちゃがまん』と・・・これは?キュービック?にしてはなんだか微妙な反応ですけど・・・。

 とにかく、創作召喚獣の反応と、キュービックっぽい?反応が戦闘をしているのを捉える。

 

 さて、それはそれとして・・・私は雪風万里に加勢することとなりますね。

 タツルからのお願いですので、ここは真面目に仕事をするとしましょうかねー。

  

「だ、誰か・・・たす・・・」


 ん?

 声が聞こえたので、そちらを見やる。と?


「た、たすけて・・・」


 瓦礫に下半身が埋もれて、今にも死にそうな女が居ますね・・・顔には包帯を巻いてって?

 あーッ!?

 こいつ、テンテルテに襲撃された件でタツルの事情聴取をしていた・・・そう、魔力弾でタツルの顔を攻撃した刑事ゴミじゃないんですかッ!!



「お、おねがい・・・たすけて・・・」

 いぃぃぃぃまぁぁぁぁぁははははははははッ!! たぁぁぁあああすけてぇぇぇ駆除るよぉぉぉぉ!!

 


 私は、付近に転がっていたイイ感じに大きい瓦礫を拾い上げ、そして女の頭にダンクシュートッ!!

 んぐしゃーって感じで頭が潰れて死にました! いい気味だッ!

 この駆除り方なら、崩落した瓦礫が頭に直撃したように見えることでしょうッ!!


『タツルを攻撃するゴミは駆除るのがモットーですのでッ!』


 って、スケッチブックに書いても意味なかったわ!?

 見せる対象を先に駆除ってしまったのでッ!!

 あははははははははははは!!っと、仕事に戻るとしましょうか。 


 熱線によって融解し、崩れる建物の壁を駆け上り・・・今も激戦?が続く戦場となっている高層階へと到着したのです。

 ふふ。

 さすが私だ・・・って?


「エメルッ!? なんでここにッ!?」


 ちゃがまんが熱線を避けた直後に私を見て驚くと、その口から雪風万里の声で問われる。


『何故も何も、タツルの指示ですよ』


 スケッチブックに返答を書いて見せ、砂埃の奥から飛んで来た熱線を避けてちゃがまんと合流する。


「タツル君が?・・・いや、なんでもいいわ。加勢してくれるってことでいいのねッ?」

『それでOKですよ』


「な、なんでここにあの人形が・・・くそっ」


 おや?

 テンテルテの愚痴を私の聴覚が拾いました。

 同時に、ヤツが隠れている位置もある程度絞り込めましたね。

 人間で言うならば、脳裏に階の見取り図がイメージされるように、私の思考回路内にて別ウインドウとして現在地となる階の見取り図が表示されます。

 その見取り図にテンテルテの推定位置情報が表示されるものの、この状況では正確な位置とは言えず・・・あくまでも隠れている候補となる。

 しかし、高層ビル内なので隠れていようと関係ないですね。


「エメル! まだ逃げ遅れている者もいるから、広範囲魔法術の使用は止めて頂戴ねッ!」

『えー』


 ちぃ・・・加勢に来た以上は、雪風万里の要求を無碍にできませんね。

 ここは封魔・法具で・・・って、使用許可をタツルに貰い忘れていた!!

 ええぃ・・・上等ですよ!!


 私は警視庁の倒壊によって発生している砂埃の向こう側にいるキュービックへと飛びこむ。

 そうして私の視界に現れたのは、まるで御粗末なホラー映画に使われるゾンビ人形の作りかけ・・・みたいな状態で半壊している姿だった。

 キリアのヤツが非常識な連続パンチで分解していたのを思い出し、これの修復が間に合っていないのだと理解します。

 

 しかし、全身に網目のような光を発したと思えば、私に向けて熱線のシャワーを浴びせてきました。

 即座に足元の床を殴り砕いて階下へと滑り込むことで回避に成功したが・・・キュービックのヤツは宙に浮いたまま私を無視してちゃがまんへと攻撃を続行するようだ。

 させるかよーってことで、私はすぐさま階下から飛び上がって『ただいまーッキック!!』をキュービックにぶち込んでやるのです。


 と!?

 私の攻撃を予測していたのか!?

 半壊状態のキュービックがバララァア!っと全身を形作るキューブを分解して私の蹴りを回避する。

 これと同時に、私を包囲するキューブ一つ一つが熱線の発射準備を整えていた。


「エメルッ!?」


 雪風万里の悲鳴のような怒声が私の名を呼んでくる。

 うぉぉぉぉぉぉ!!

 動けッ! 世界最高性能の魔法術人形でしょうがッ!! キリアやウルシが使っている『G11T』なぞ、私に及ばないという事を示す時ッ!!!


 ピカッ!と光る熱線の中を、私は全身の関節を強引に駆動させて私自身が嵐のように動くことで熱線の集中砲火を弾き、捌き、逸らして、流し、魔力で衝撃波を周囲へと発射することで、熱線を放つキューブへと反撃する。


「「んなッ!?」」


 その声が、雪風万里の声なのか? 隠れているテンテルテの声なのか?は、分からなかったが・・・。

 私は、そして床に崩れ落ちた。


―― 各関節に重大な問題が発生。早急に取り換えを行ってください。――


 マジかー・・・ちょーっと今は間が悪いんですよねぇー。

 全身の関節部が摩擦熱で焼け焦げたようです・・・キュービックの熱も加わったことで、焼けた上に変形した様で・・・あぁ・・・無茶をしてしまったなぁ。


 私の脳裏に緊急事態のコールが鳴り響き、私の身体に生じている問題を示すウインドウが展開されて、私の全身像が表示されると関節部に矢印記号が刺さって『動作不能』と赤文字がピカピカと光っている。

 さらには、腕や脚を含めた全身に熱ダメージが許容範囲を超えている。とも出ていた。

 

 そんな状態の私に、キュービックはバラけた身体を元の姿へ戻し・・・って、なんかさっきよりも酷い状態になっているような?

 なんて思う間に、そのボロボロとキューブが崩れる右手をこちらへ向けて来ると・・・熱線の発射準備をし始めた。


「よく足止めしてくれた」

 タツルーッ!!


 キュービックの背後から、丼に手足が生えたような機械人形姿になった飛脚丸・・・いや、飛脚丸はビッグスクーターの名前ってことで分ければ分かり易いのでは?

 ってことで、人型モードの飛脚丸をライダールと読んで上げましょう。

 

 そのライダールが、キュービックの背後となる警視庁の外壁から飛び出してくると、胸部の装甲がスライドして開き、何やら霧状の液体を散布し始める。


ぶしゅぅぅぅぅぅゔばばばばばばばばッ


 直後、キュービックがその手に準備していた熱線がバチバチと音を鳴らし始めて、熱が周囲に散布された霧に吸収されていく。

 同時に、ライダールの巨大な手がキュービックを払い除けるように振るわれて、テンテルテが隠れている辺りへと叩き飛ばした。

 

「来てくれたのね? タツルくん」

「ええ。雪風課長に用事が出来ましたので」


 タツルの返事に、雪風万里は「?」という顔になると同時に、とても嫌な予感がする。という様子で顔を強張らせた。


「詳しい話は後にしましょう。まずはキュービックとテンテルテの処理を優先します」

「て、てん!? え? テンテルテッ!!?」


 ・・・あー。

 そうか、テンテルテがキュービックを使っている魔女だと教えたのは壱里家のキョウカだけでしたね。

 アイツから各政府関係者に連絡が行ったかな?って思ったけれど、まだ届いていないのか? それとも連絡事態していないのか?

 はてさて?


「・・・バレてる? まさか、私の計画は完璧だった・・・どこでバレた? 他の連中と一緒にキュービックに負けたよう・・・偽装も完璧だったはず・・・」


 ・・・あー。

 魔法術に対する偽装は、完璧にできていたのかもしれません。

 しかし、機械技術を用いる魔導術への対策は皆無だったのでしょう・・・ただのカメラに撮影されていたとは、思ってもいないのでしょうね。

 まぁ、タツルの作るカメラが・・・一般に出回っている物を超越している。というのは、予想できないでしょうけど。

 

「・・・なるほど、キュービックの修復は不完全のようだ。ここで畳み掛けてしまおうか」


 おお!

 その言葉を待っていましたよッ!!

 ここで決着をつけてやる!


 しかし、私がやる気になると同時に警視庁そのものが激しく震動する。

 そうして、タツルがライダールの右手で私を掴み・・・左手で『ちゃがまん』の尻尾を掴んで外へと飛び出す。

 直後、四方八方からキューブ化の呪い攻撃であるキューブの白い針が無数に飛び出してきた。

 警視庁という施設が、一瞬にして針山となってしまうと・・・逃げ遅れていた者や、避難できていたものの周辺に留まっていた者たちから続々と悲鳴が上がる。


「くそ・・・欲張ってはダメね」


 テンテルテが憎々し気に舌打ちをしながら呟くと・・・悲鳴はピタッと止まった。

 同時に、針山となった警視庁から白い針は消え失せ・・・無数の穴だらけとなった警視庁は、そうして倒壊した。

 

「警視庁周辺に居た者たちは、軒並みキューブにされて連れ去られたようですよ」

「なんてこと・・・くそ」


 脅威が去ったことで、雪風万里は『ちゃがまん』から外へ出る。

 そうして、召喚獣を還して途方に暮れたような顔になった。


「雪風さん。これからどうされますか?」

「どう・・・って、とりあえずは近隣の省庁へ行って事の報告をすることになるわね」


 と、タツルはライダールを操作して、その無骨で大きな手を開き・・・雪風万里を掴んだ。と、同時に指の装甲がバガーッと開いて光を発する。


「た、タツルくん!?」

「丁度いいので、協力してください。あなたの『ちゃがまん』が必要なんです」

「はぁ!?」


 ちゃがまんを還したことで、無防備な状態の雪風万里からすれば・・・その巨大で無骨な機械の手に握り潰されそうな状況で『丁度いいので、協力してください』は困惑もするでしょうね。

 そうして、指の装甲が開いて光がパパッと明滅するのだから・・・死を覚悟するしかない。

 しかし、次の瞬間には・・・そう、雪風万里の姿は消えていた。


「よし。キューブ化できたな」

 んーッ?


 なにやら不穏な事を言いながら、雪風万里を掴んでいた手を開くタツルは・・・そして私に言う。


「すまないが、ライダールの手にあるキューブを取ってくれないか?」


 なんのことか?って思ったら・・・タツルが言うように、ライダールの手にはキューブが一つ。

 ・・・ん? え? どいうこと?

 私もまた困惑しつつ、ライダールの手にあるキューブを取る。

 体は動かないので、髪に魔力を通して手のように動かし、無骨な手の中に「ちょこーん」とある雪風万里だったキューブを落したりしないよう注意深く掴むのです。


『タツル? このキューブは・・・』

「ああ、キリアさんのキューブ化に際して、身体の変化を可能な限り解析しつつ観察できたので、キューブ化を再現できるようになったんだよ」

『・・・それで・・・なんで雪風万里をキューブに?』

「彼女の創作召喚獣『ちゃがまん』は。トウカちゃんを護るにはうってつけだろう? だからだよ」


 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・あ、便乗するっていうのは、こういうことだったんだ。


 テンテルテが警視庁を襲撃すると知り、ヤツが職員をキューブにして持ち去るのに便乗して『雪風万里捜査一課長をキューブにして持ち帰ろう』ってことだったんですね。

 トウカの護り・・・忍術が使えるとはいえ、あの様子ではキュービックとの戦闘でキューブにされかねませんしね。

 

『しかし、いつのまにそんなモノを?』

「いつの間に?・・・って、ウルシが使っている『G11T 二号機』の動力は、俺製のキューブだぞ?」

 なんとッ!?


「キューブを作った魔女は天才だ。魔法術が使えない俺ではまず作れないからな・・・しかし、仕組みさえ分かれば再現するなど簡単なことだよ? エメル」

 ・・・あー、その得意気な顔は、母親によく似ていますねぇ。


「さて、用も済んだので帰るとしよう」

『待ってください。トウカの分だけ食料を買い足したいのですが!』

「そうか? なら、商店街に行くとしようか」

『はいッ!』



〇 翌日。



 新聞の見出し。

『第六陸島 アメツ に迫る危機!! アメツ東京・警視庁。壊滅ッ!!? やはり東はダメダメか? アメツの首都は、西京で決まりッ!!!』


 庭にて、新聞を読んでいる『G5T ちゃがまん・カスタム』が渋い顔をしている。

 ・・・タツルが5歳くらいの時に開発・研究をしていたのが『G5T』の系列で、主に自動車。オートバイ。機関車。などの陸路を移動する機械である。

 我が道路の相棒『飛脚丸』も、この『G5T』シリーズのスクーターになる。


≪今は、こんな煽り合いをしている場合じゃ無いでしょうに・・・はぁ・・・≫

 

 帰宅後、タツルが準備していたトウカを守るための乗物シリーズ『G5T』の『トウカ用カスタム』は、一晩で『ちゃがまん仕様』に改修された。

 当初はタツルが使う人型戦闘形態ライダールっぽい乗物になる予定だったそうで・・・。


 一人乗り自動車のタイヤを動物の脚に変え、狸の頭と尻尾を再現したユニットを取り付けた特別製。

 さらに、装甲には特殊合金。胴体となる茶釜型運転席にはタツルが開発した未発表の魔導鋼材を贅沢に使用したモノとなる。

 これに、キューブ化した雪風万里を動力炉として組み込むと・・・あら不思議。

 雪風万里の声で喋る機械人形の『G5T ちゃがまん・カスタム』が動き出しました。


 私たち以上に生物っぽくない外観のせいで、ただただ不気味なだけなんですがね?

 コレがどういうわけか、私たち以上に生物っぽい動作をするんです・・・目の錯覚か? 装甲が伸縮している様に見えます。びよーん。というか、うにょーん。というか・・・。


 まぁ、そんなこんなで、起動した『G5T ちゃがまん・カスタム』こと『雪風万里』が、とにかく説明を求めて来たので、ここまでの『あらすじ』を語って聞かせます。

 最初こそ、怒りを露わにしていましたが・・・これまでに溜まっていたツケの清算を。ということで協力を取り付けることに成功し、こうして庭で新聞を読んでいる現在。

 レジャーシートを敷いて、正座しながら新聞を読む機械人形の茶釜タヌキ・・・って、文字にしたらどうにもシュール?な光景ですが・・・。


 ・・・どいつもこいつも、人形なのに喋りやがってさぁ。


「仕方ありません。ここ アメツ という国は、世界でも稀な首都が定まっていない国なわけですからね」


 そう。

 長きに渡る東西の首都争いにより、この国は首都が定まっていないのである。

 これによって、世界各国の要人が訪問し辛い問題が多発している。西と東・・・諸外国の要人たちが、どちらへ先に訪問したか?で競ったりして、客人を激怒させたことも。

 そのため、国の危機よりも西と東は互いを攻撃できる好機だけは逃さない。


≪はー。ワイドショーでもやり合い始めたわ≫

≪人間っていうのは、暇なんですかねー?≫

「首都を決めるって、そんなに大事なんですか?」



 テレビのワイドショー。

≪上等だよ。西の!! あんたらが大事にしているカビ臭いだけの都を、火の海にしてやるわッ!≫

≪ほほほほほほ。ウエハースのように脆いだけのビルを並べた都モドキなんて、すぐさま更地にしてあげますわぁ~≫


 こうして、キュービックそっちのけで、東西・首都合戦が始まった。


「・・・何をやっているんだか」

 まったくですね。




次回は、未定です。


『G5T』は車タイプ。『G6T』は船タイプ。『G7T』は飛行機タイプ。

ちなみに、自動車系は『弐瀬モータース』。船系と飛行機系は『陸峰重工』。という企業も後々登場を予定しています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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