12 もう帰りましょう。
こんにちは。こんばんは。
この作品には、不適切。また不快な表現が多数出てくると思いますので、ご容赦ください。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
魔女キュービックを打倒するべく、戦力としての協力を得るべく訪れた『壱里家』にて。
「しかし、モウカのヤツに聞いていたはいたが・・・まさかこういう事だったとはね」
モウカ?
ああ、『壱里モウカ』ですね?
東京を中心として事業を拡大させている企業『壱里エレクトロニクス』の現社長。
タツルが開発した発電機・・・だったような発明品により、これまで魔力によるエネルギー供給で行われていた物が電気で賄えるようになったことで、会社が急成長しているわけですが・・・。
実際、何をどうしたのかは知りません。興味無いですし。
ただ、タツルの活躍によって魔力不足な家庭でも冷蔵庫などが使えるようになったのだと言う話はニュースなどで見ましたね。
まぁ、タツルの名前は一切出ていませんが、紹介されていた製品がタツル製の電気製品でしたから間違いないでしょう。
そういえば、数年前に成形家を訪れて何やら契約をしていましたね。あの社長。
アレの母親ということで、駆除ってしまいそうになったのをよく覚えています。タツルに制止され、キリアに羽交い絞めにされてしまったので、失敗しましたが・・・。
「モウカ社長に、何をお聞きになっていたのでしょう?」
「・・・まぁ、よく成長している。とね」
「なるほど、幼い頃の姿から順当に成長した姿を想像しておられたわけですか」
「ぅむ・・・む・・・」
「母の件も合わせて、ご当主とモウカ社長には多くの便宜を図っていただいているばかりか、支援もしていただいている身です。今後も、よろしくお願いいたします」
「あ、ああ・・・こちらこそ頼む・・・と、さっそくなんだが・・・」
アメツ東京・壱里家の現当主『キョウカ』は一度言葉を切ると、こちらから顔を逸らして閉じてる襖へと声を掛けます。
「トウカ。入って来な」
「はい」
襖越しの返事が聞こえた後、すぅーっと静かに開かれる襖の向こうから、忍び装束に身を包む少女が正座からの一礼・・・そして静かな足取りで中へと入ってくる。
そうして、当主たるキョウカに一礼すると、こちらに身体を向けてから一礼。
「お久しぶりです。タツ―――」
その顔を正面から見た瞬間、私は飛び出そうと動きます。が、私の眼前に突き出されたタツルの手に阻まれて、その行動は止められてしまいました。
しかし、その顔は忘れません。我が大敵!『壱里オウカ』!!
「ご当主。いくら彼女がオウカお嬢さんの影として教育されてきたからと、変化の術を使わせるのはいかがなものかと思いますが?」
「・・・ふむ。お前さんの反応を確かめたかったんだ。悪いことしたね。門の修理費用はこちらが全額負担しよう。それでどうだい?」
「かしこまりました」
・・・ん? ん?
どういうことです? つまりはどういうことなんです?
『つまりはどういうことなんです? そこのオウカを駆除ってイイということでイイのです?』
「ダメだ」
「やめてくれぃ」
「ご勘弁ください!」
三人から否定されてしまったので、私は『説明を求む』と訴えます。
どうやら、キョウカはタツルがオウカを恨んでいるという前提で、オウカの顔を見た時にどのような反応を示すのか?を確認したくて、オウカの妹であるトウカに変装してもらい、こうして挨拶に出てきてもらったのだそうな・・・。
タツルを試したってことですか? 何様のつもりだババア・・・。
・・・つか、トウカ? そんな妹がいたのか?
はて? 私の記憶にそんなヤツがいただろうか・・・あ、いや居たな・・・オウカの後ろをついて歩くミニオウカみたいなクズゴミが・・・。
そうです。
我がタツルの顔を焼いた大敵『オウカ』のせいで、我が記憶から横に置き忘れられていた存在ですね。別にいいか。
・・・ん? そういえば、キリアに着替えを持っていく際、町中を経由すると度々遭遇していたような気がする。
まぁ、少し止まって挨拶する程度の事はしていたような?
そうそう、妙にタツルに懐いていましたね・・・ここで駆除っておくか?
「ところで、どうしてトウカお嬢さんがこちらに? 現在は壱里家の影として、忍者修行のために西京にある本家へ行っていたのでは?」
「家庭内事情って奴だ」
「そうなんです! お姉ちゃんが本家に嫁入りすることになったので、私ってばこの家を継ぐことになったんですよ!」
「トウカ!」
「あ! 今のは聞かなかったことに!」
・・・なーるほどー。忍者は無理だなコイツ。
「その様子だと、忍者の素質が無いので帰された。というのもありそうですね」
「・・・その通りだ。トウカには魔女の才も無い。神通力の才も無い。そして忍者の才も無い。世間一般で言うところの落ちこぼれでね・・・」
「お、おばあちゃん! そればかりじゃないでしょッ! 本家も神通力の覚醒者が男児のみで、才能に恵まれなかったから、一族で唯一の女性覚醒者として本家がお姉ちゃんを欲しがった!って理由が一番なんですから!!」
「・・・トウカ。それも秘密事項なんだがねぇ?」
「あぁぁ・・・今のは、どうか、どぅぉおか・・・聞かなかったことにぃぃぃ!!!」
ダメだコイツ・・・。
「事情は分かりました。つまり、魔女キュービックの件はトウカお嬢さんを矢面に立たせたいのですね?」
「・・・その通りだ。話が早くて助かるよ」
・・・ん? ん?
つまりどういうことです?
「お祖母ちゃん? つまりどういうことです?」
・・・ちょ、おまえまで何を・・・アレ!? コレだと私とコイツが同レベルみたいになりません!? あり得ないですよ! 私、世界最高性能の魔造知能なんですよ!?
「どうもなにも・・・東京における壱里家次期当主として、おまえさんに箔をつけるため、魔女キュービックの事件解決に参加しろって言ってんだよ」
「ええッ!? こ、国連の魔女部隊が全滅したってニュースでやってたあの事件に!? 私が!? ムリムリ! 私、魔法術はもちろん使えないし、忍術くらいしか使えないんだよ!?」
・・・魔法術が使えないのであれば、おそらく忍術と言っても体術が主だったものとなるはず。
魔力はあるようですから、常人よりは忍者っぽく振舞えるでしょうが、戦力として考えた場合には価値が無いですね。
ここへ協力を求めに来たのは、無駄足だったということでしょう。
「ご当主。私が今日、ここへ参りましたのは―――」
「皆まで言うな・・・我が壱里家の分家に代々継承される創作召喚獣『火達磨』を戦力として加えたいからだろう?」
壱里家の分家に代々受け継がれている創作召喚獣『火達磨』
読んで字のごとく、火で燃えている男の姿をした召喚獣で・・・まぁ、その・・・悪趣味な召喚獣ではあるんですね・・・顔は達磨という化け物っぷり。
しかし、そんな召喚獣を求めて、現当主のキョウカを訊ねたのではないのですよ。
「ご当主・・・火達磨もそうですが、私はあなたが独自改良を重ねた『火達磨八郎』に、戦力として加わっていただきたいのです」
そう。
タツルが戦力に欲するほどの高性能な創作召喚獣『火達磨八郎』は、壱里キョウカが改造に改良を繰り返した事で現段階で歴代最強の創作召喚獣と完成されている一品。
この世界最高性能と名高い私が、唯一、倒し切れなかった召喚獣の男なのです。
・・・いや、あれは見た目からして卑怯過ぎて・・・こう、負けたのが今もずっと悔しいんですよね。カスミが健在だった頃なので、数年ぶりですか。
「悪いが、おまえの望む『火達磨八郎』は、もういない」
「ッ!?」
タツルがめっちゃ驚いている!!
「まさか、ご当主・・・さらなる改良に成功したのですか!?」
「そうだ!! 我が召喚獣『火達磨』は!! つい去年に『火達磨十三』へとアップデートに成功した!!」
「おめでとうございます!!!」
タツルが拍手喝采しているぅ・・・マジかよ。
「たぶん。八郎の時は引き分けだったが、十三ならエメルに勝てるだろうね」
『上等だよ。クソババア!! 相手してやるから出して見ろよ!!』
売られた喧嘩は言い値で買う!
そして倍々倍々の値に釣り上げて押し売りしてやろうじゃないですか!!
「来なッ! 火達磨十三!!」
キョウカの背後で火柱が立ち上ると、それは身長3mはあるだろう大男の姿に形作られ、そして片目しか黒目が無い達磨の顔をした筋肉がはち切れんばかりに脈動? 流動? 鳴動? しているブーメランパンツ一丁のド変態召喚獣が姿を現すのです!
『いい加減に服を着せろよ! 八郎から何も進歩がないじゃないか!!』
「バカを言うんじゃない! 男の筋肉美を堪能せずに何を堪能しろと!!? この燃え盛る炎に照らされる陰影こそが、筋肉をより美しく形作り! 全身を焼く赤のグラデーションに彩られた筋肉が、炎の揺れによって色の濃淡が常に変動するこの躍動感を産み出すのだッ!! ああぁッ! 筋肉と炎のフルコーラスがここに発声され!! 戦闘というオーケストラと融合し!!! 火達磨は芸術を昇華させていくのだぁあ!!!!!!」
「ご当主の筋肉フェチがレベルアップしているようで・・・」
「これさえ無ければ、本家もお祖母ちゃんを褒めたたえるんだけどなー。コレが無ければ・・・」
『あの頃から何も成長していない・・・』
私がスケッチブックに言いたいことを書いて、見せてやる。と、キョウカが眼を輝かせて叫んだ。
「ならば見せてやろうじゃないか!! ババア渾身の!!」
着用している和服・・・その袖から腕を抜いて上半身をはだけさせると、筋肉が浮き上がって見えた。
「かあああああああああああああ!!!!」
そんな声を震わせながら、筋肉が膨らんで・・・火達磨十三と共にマッスルポーズでフィニッシュだ!!
ポーズ名? 私が知るわけないだろ・・・。
「さてエメル? 今の私は、あの頃から成長していないかい?」
『してねーよ。町のお祭りに町が関係しないマッスル召喚獣大会を開催しようとすんな! ババア!!』
「んぐ・・・」
かつて、私に手伝って欲しいと言っていた町の祭りの催し物・・・それは『燃え上がれッ! マッスル!! 筋肉美の創作召喚獣大会』ですからね。
本当になんの成長もしていない老人ですよ!
あの頃だって、くだらな過ぎる上に町となんの関係もない大会でカスミがドン引きしていたくらいですよ!?
それでも私の貸し出し料金はふんだくるために無駄話をしていたわけですがッ!!
「・・・やはり、ご当主が参加してくださいませんか?」
とうに諦めたような顔をしているタツルですが、やはり戦力としては無視できない人物なので声だけはかけてみるようです。
「そうだよ。お祖母ちゃん・・・私、まだ置物の達磨に火が付いたような『火達磨』しか召喚出来ないし・・・戦力とかムリだって」
はー? マジで戦力にならない娘ですね!! いらねぇー!!
「筋肉が足りんからだよ。もっと鍛えな!!」
「えぇ・・・だって、筋肉モリモリじゃ可愛くないし・・・」
チラチラとタツルを見ているのは、きっと「タツルさんの好みじゃないと思うし」という言葉を言うかどうかで悩んでいるのでしょう。
ぶっころっと蹴飛ばすぞ!? 小娘がッ!
「私の旦那は、私の筋肉に一目惚れした!と言って猛烈な告白ラッシュだったぞ・・・まぁ、子供作る時が大変だったが・・・あいつ、私の筋肉を嘗め回すように凝視するだけで、ぜんぜん―――」
「そういう話はいらないです」
『そういう話は止めろッ』
「そういう話はお母さんにしてよ」
「・・・子供にする話しじゃなかったね。ぅおっほん」
咳払いをしたキョウカは、そしてはだけた服を直して『火達磨十三』を背後に立たせて待機させる。
そうして、話し合いは再開することとなる。
「まぁ、安心しな。壱里家の秘術で、私の『火達磨十三』をトウカに貸し与えてやるから」
「え!? そんなのことできるの!? 私知らないよ! お祖母ちゃん!!」
「秘術なんだから当たり前だろ。当主以外には教えないんだよ」
「あ、そっか! 私が次期当主なんだし、教えて!」
「おまえが当主になってから、私が教えるんだよ! 順序ってもんがあるんだ!」
「そっか!」
コレが次の当主って、本当に大丈夫です?
『もう帰りましょう。タツル』
「今は我慢してくれ」
そろそろキレそうですよ・・・。
次回は、特に決まっていないです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




