10 ・・・良くしゃべる人形ですね。
こんにちは。こんばんは。
最後までお楽しみいただけたら、幸いです。
≪ふむ。悪くないけど、反応が少し遅めッ!≫
そんな事を言いながら、私に蹴りを放ってくるキリア。
これに私も蹴りで防いで見せることで、性能の差ってヤツを示してやるわけですが・・・。
・・・。
・・・・・・今! 喋った!!?
『タツル! 今、この私コピー人形が喋りませんでしたか!?』
スケッチブックを召喚して、マジックペンを走らせて質問を書き、コレをタツルへと見せました。
「そりゃ、君の欠陥を改善するのは当然だろう? とはいえ、厳密に言うと喋っているわけじゃない」
キューブとなって私コピー人形に組み込まれたキリアを指さすと、タツルはため息を吐く。
≪ふははは! 羨ましいか!? 羨ましいかぁあ!?≫
下唇が顎ごとスライドして開くと、スピーカーが露出してキリアの声音が放たれるというギミック。これは腹話術みたいな感じなのでしょうか?
うーん。
ケラケラ笑っているつもりなのでしょうが、表情は私と同じで動かないため・・・なんだかとっても不気味ですね。
お化け屋敷で≪いらっしゃ~い≫とか言われたら、客の大半が逃げ出すだろう不気味さです。
・・・ん? つまり、これは私も同様ということ?
いや、口が開かないだけ愛嬌は私の方が勝るはず。いやいや、基礎スペックは当然私の方が勝っているんですから、何を勝ち負けなど気にする必要はないはず。
むーん。と考え事している間に、タツルは『G11T』の調整をどんどんと済ませていく。
「まぁ、こんなものでしょう」
≪で? なんだって私をキューブにしてまで、この体に組み込んだわけ?≫
ハッとなり、私はすぐさま二人の会話に聞き耳を立てます。
「単に、エメル型のボディをエメルと同等に動かすための動力機関を小型化できなかったんですよ。代わりになる最適なモノが見つからなかったのですが・・・」
キューブ。
人間を呪いによって変化させた物体。
そういえば、コレを使うと動力炉になるとかなんとか言っていたような? 興味無いので、ちょっと覚えていませんが。
「まぁ、それは横に置きましょう。今はヤツを叩き潰すための戦力を整える必要がありますから」
≪私がある程度まで痛めつけたんだし、一気に畳みかけてしまえばよかったんじゃない?≫
「そういうわけにも行きません。あの場には黒幕が立ち会っていたわけですし、ここぞで邪魔されていたことでしょう」
・・・え?
≪ちょっと待った! あの現場に、キュービックを操る黒幕が居たと!?≫
「ええ。国連の部隊に混ざり込んで、こっちを見ていたじゃないですか。エメルに蹴飛ばされた怪我も完治していない状態でしたけど」
んー?
私が蹴飛ばして、怪我させた? はて? 誰かいましたか?
≪エメルと戦闘をして怪我した魔女で、国連に混ざれるって・・・まさか、テンテルテ?≫
「そうです。アレが黒幕です。あまりにも分かりやすすぎて、黒幕って言うのも不適当なほどですが」
≪いや、ちょっと待て・・・なんでテンテルテが犯人だと?≫
「説明するのも面倒ですし、こちらをどうぞ」
そう言って、タツルはテレビを引っ張り出すと・・・動画を再生した。
≪あーあ・・・まさかここまで分解されるとは予想してなかった! くそ! ここまで組むのに何百年掛けたと思ってるんだい! その上、最後のキューブである成形キリアを回収できないとか・・・くそ!≫
・・・うわぁ・・・なんか証拠映像があるぅ。
≪え? これ・・・≫
「俺がなんの考えもなく撤退するわけないでしょう? 犯罪計画が杜撰なので、きっとボロを出してくれると思って、ウルシに遠隔操作式偵察人形を使ってもらったんですよ」
・・・こういうのって、もっと盛り上がる場面で公開するべきなのでは?
私とキリアが絶句していると、タツルは続けます。
「犯罪の大多数は行き当たりばったりです。計画を立てたとしても、それは自分の都合しか考えていないモノになりがちで、自分以外がどう動くのか?を予想した上での計画立案というのは、とても難しいんですよ」
タツルが言うには、どんなに優れた演算能力を持っていても、未来を予測して的中させるのは至難の技なのだそうだ。
予知能力者でもない限り、計画通りに事を進めるには協力者が大量に必要なのだそう。
「そもそも、今日までに第六陸島アメツまで事件の噂すら届かなかったことを考えれば、大した実力の魔女ではないことは予想がつく」
『なぜです?』
「キリアさんクラスの実力者と戦っていないからだ。世界魔女ランキングに名を連ねている魔女でも、500位から下は、ほぼ空気だ。世界中の魔女でも実力者1000人てだけで凄い事だけど、注目を浴びるとすれば上位陣に限られる。だから、下位がどれだけ敗北しても、行方不明になっても、マスコミを含めて多くの魔女が『気にも留めない』んだ」
世界中に魔女が数十億人いる中で、実力者1000人に名を連ねるのは、まさに名誉ではありますけれど・・・確かに500位より下の魔女となると、話題にはなかなか・・・。
≪くそ! せっかく六代目に身体へ乗り換えて、万全を期したはずなのに・・・どうしてここで上手く行かなくなる!≫
六代目テンテルテの身体へ乗り換える?
まさか、憑依転生などの古代系使用禁止魔法術を使っている? しかし、アレは古代にも使用禁止されたことで、魔法術事態が紛失しているはず・・・。
「どうやら世襲制にしていたのは、自分が体を奪って技術を維持するためのようだ。二代目から現在の六代目まで・・・弟子を取るという形だったが・・・おそらくは・・・」
≪誘拐などをして、準備した・・・ってところか≫
そうなるのでしょうね。
優れた魔女となる素質は、生まれた時から分かる・・・いや、分かる人には分かる。というレベルでして、きっとテンテルテにはそれが分かるセンスがあったのでしょう。
病院などで生まれたばかりの赤ん坊を見て回って、自分が使う次の身体にちょうどいい子供を探しては、弟子として来た。
・・・これだから魔女犯罪というのはッ! 自分がやるのは正当なのでいいけれど、他人がやるのはダメ。っていう奴が多くて困りますね!
警察もダメダメなので、余計に調子に乗る魔女が増えるんですよ。
≪はぁ・・・これ、クリスマスイベントまでに修復できるかなぁ・・・はぁ・・・≫
クリスマスイベント?
それはつまり、12月25日・・・・いや、前日のイブ。ホワイトクリスマス計画!
「と、いうことで・・・奴が次に動くのはクリスマスイブだ。それまでに戦力を整える必要がありますので、キリアさんには身体を使いこなせるように訓練してもらいたいのです」
≪なるほどね・・・まぁ、そういうことならしゃーなしだ。訓練相手はエメル?≫
「いいえ、ウルシにやってもらいます。ウルシ。おいで」
≪ドウモ。キリアさん。マスターによって製造されていた『G11T二号機』で、お相手させてもらいます≫
・・・今度は真っ白い髪の毛と真っ白い服を着て、肌が小麦色になっている私のコピー人形が出てきた!?
≪え? なんで二号機なんてもんがあるのよ?≫
「普通あるでしょう? 試作機が一機だけのわけないでしょうが? キリアさんが使っているのは、一号機です。キューブを組み込んでしっかりと起動出来たので、二号機ではキューブを模した小型動力炉を追加で組み込んだ実験も兼ねているんですよ」
・・・キューブを模した小型動力を追加で組み込んだ?
・・・え? いつの間にそんなの造ったんでしょう? どのタイミングで? たった一晩で?
≪いったい、いつの間にそんなの造った・・・つか、キューブを知ってから小型動力炉を造るの早過ぎじゃない?≫
「え? 一度構造を調べれば、再現なぞ簡単でしょう? 魔女の使う魔法術だって、今日までに魔導術で大多数を再現してきたじゃないですか」
・・・それ、タツルだからできることなんですよね。
母親であるキリアが「生まれるのは男児」と断言していたので、容姿と知能にステータス全振りした結果なんですよ。
異次元レベルの天才になってしまって、頭脳だけは周囲が追い付けない領域に飛び去っていますからね。
この世界最高性能と名高い私の演算処理能力を超越する思考能力を持っているのですから、さすが私のタツルです。
「今、滞っていた対魔女兵器の開発を急ピッチで進めています。テンテルテの使う創作召喚獣用の大型兵器と、キュービックを相手するための戦闘兵装などなど・・・しかし、問題なのは人員なんですよ」
人員?
人手不足という事でしょうか?
「本当は、キリアさんを前面に押し出して、キュービックの討伐にテンテルテの検挙を狙っていたのですが・・・こうしてあっけなく狂ってしまったので、誰を矢面に立たせるか?と、悩んでいます」
≪それなら、雪風課長でいいじゃないの?≫
「アレはダメです。捜査一課長という役職上、上に指示を仰がなくては行動できません。つまり、情報が漏洩するということです」
それは由々しき問題ですね。
結局は、組織に属している人間を使うのはダメってことですね。
≪なら、私だって刑事なのだし・・・ダメだろ?≫
「キリアさんは良いんです。そもそも、上の指示とかお構いなしに現場に突撃しては色んなものをぶっ壊して凶悪魔女犯罪を解決している問題児なんですからね」
≪・・・そすか≫
あー・・・つまり、キリアを前面へと押し出して、後方からド派手に新兵器を大量投入しつつデータ収集を行いながらテンテルテとキュービックを処理したかったわけですか・・・。
≪では、マスター。私から一人、提案させてもらってもいいでしょうか?≫
私のコピーボディを使うウルシが、手をパチンと叩き合わせながら声を弾ませて言う。という行動が気持ち悪い。
『ウルシ。あなた、そんな性格でしたっけ?』
≪ん?いえ別に。せっかく自由に動かせる身体をいただけたわけですし? 顔の表情は固定されているので、ジェスチャーで感情表現をしていく必要はあるかと思いまして≫
「あまり大げさな動作は必要ないぞ。声が出るのだから最低限度の感情は声音で表現できるからな」
≪私としては、キャラ付けの練習も兼ねたいと思ってのジェスチャーなのですが?≫
「却下」
≪却下を却下します。 マスター。いずれは私の兄弟姉妹も増えることでしょうし、今のうちに長女として確固たるキャラを得ておきたいと思います≫
「・・・いらないだろ?」
≪いります≫
・・・良くしゃべる人形ですね。
・・・。
・・・・・・羨ましくないですよ。えぇ・・・もちろん。
タツルも、頭を抱えて項垂れてしまいました。
「君は、なんでそんな性格になったんだ? 男性型になるよう教育をしてきたはずなのに・・・」
≪人生は楽しんだモノが勝つ。ならば私は勝ちましょう。 魔女社会での勝ち組は女性なのですから、私はステキで最高なお姉ちゃんとなり、これからマスターによって作られる兄弟姉妹・・・すなわち次世代人工知能たちの先達として教育するためにも、キャラ付けは必要だと判断しました≫
「・・・わかった。もういい。それはもう君に任せる。けれど、性格破綻者にはしないでくれよ? キリアさんみたいな感じになられても困る」
≪ちょいまて、私の性格が破綻しているって言いたいの?≫
「・・・」
≪・・・≫
『・・・』
≪ちょ! なんか言ってよ!≫
私は、スケッチブックに点を三つ。それはもう丁寧に書いて見せました。
≪マスター。キリアみたいにならないよう気を付けます≫
「ああ、頼む」
って、いい感じに話が終わってしまいそうなんですが?
『で? ウルシの言う「提案」は、なんなのですか?』
≪あ・・・ そうですね。 話が脱線していました。ということで、私から提案しますのは、『この辺り一帯の地主様』に協力してもらうのはいかがでしょう?と、いうことです≫
・・・まさか、九大霊家・・・西京と分かれて東京に移り住んだ分家にしてここらの大地主。
九大霊家で『壱』の位を預かる第六陸島アメツで最上位の魔女一族・・・『壱里』家。の分家。本家は西京にあるんです。
「・・・なるほど、ご当主なら権力者から文句も出ないか」
あーっと、乗り気になった!?
その、ご当主・・・かつてタツルの顔を焼いた娘の祖母ですよ? いいんですか!?
『あの駆除対象の祖母ですよ? 駆除りましょう。ね?』
「今は仕方ない。ひさしぶりに訪ねるとしよう」
そう言って、まずは念話器で連絡を取るタツル。
アポイントメントはとっても大事です。社会人になるなら、覚えておくべきですね。
うーん。
アレに遭う確率が高すぎるので、私は大反対なのですがね・・・隙を見て駆除るしかない。
うーん。
次回は、壱里家訪問。を予定しています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




