第1話 てめぇ人の部屋の窓から土足で入り込むとは何事じゃい!
現代では、女神さまが召喚された「異世界人」で溢れかえっていた。
女神さまの祝福によって、人並外れた力を手にした勇者たちは、原住民が手も足も出なかった魔物どもをものの1分で討伐した。
「異世界人」は「勇者」と呼ばれ、世界はこれを歓迎した・・・。
???
「勇者か・・・。ありがたい存在だよなまったく」
町の外れ、民家と同じ大きさのアパート。そのアパートの1部屋203号室。
1人の男が筆を走らせ、ため息をこぼしていた。
???
「こっちは商売あがったりだっつーの」
その男。名はザット。今作の主人公である。
ザット AGE39 男
CLASS 回復術士
世界を救った勇者の影響はなにもいいことだけでは無かった。
ザットも、その影響を受けた一人である。
勇者が現れる以前、各国は自兵によって国の防衛、領土内での魔物討伐を行っていた。
しかし、魔物の大群襲来、危険度SSSのモンスター来襲等、自兵だけでは対応できない事態も頻繁に起きていた。そこで発足したのが冒険者協会だ。これによって国に属していなくとも、各国は兵力の強化手段を手に入れることが出来たのだった。
そして現在、召喚された勇者によって魔物は狩りつくされ、魔王も追い込まれている状況だ。
魔物の脅威は次第にすくなくなり、それと同じように冒険者という職も衰退していった。
ザット10数年前、そこそこ名の売れた回復術士だった。
勇者が現れてからも2年ほど活動していたが、今から3年前、回復術士を引退した。
今は勇者が異世界から持ち込んだという「すまーとふぉん」というものを使って、家でできるアルバイト!というものをしている。
何の意味があるのかわからないが、これくらいしか生きていくすべがなかった。
ザット
「勇者は女神さまのありがたい力で、我々すべての人々をお救いなさるっと・・・」
スマートフォンを古い木製のテーブルにごとっと放り、椅子をくるくると回した。
天井の木目を見上げながら、ほこりくさい空気に声をなじませる。
ザット
「だったら俺も救ってくれませんかねぇ、勇者サマ」
数秒の静寂。
勇者が窓を開けてくることも、空から金が降ってくることもなかった。
ザット
「・・・ほらな、救えてねぇじゃんか」
???
「今、勇者と言ったか」
窓の外から、子どもの声が聞こえた。
ガバッと声の聞こえた方を振り向くと、窓が開いていて。
月色の長髪をなびかせた子どもが、窓から俺を見下ろしていた。
ザット
「お前は・・・」
よくある設定かもしれませんがおっさんキャラクター好きなんで!
宜しくお願いします!