第六話
思えば私の人生はつまらなかった。
家族に愛されていたわけでもない。
何かの偉業を成し遂げたわけでもない。
ただ、普通に生きていた。
普通の人と違うことといえば、『魔法』に対する憧れが強かったことくらい。
なんにも、成長しなかった。
はは。
私はこんなちっぽけな人生を歩んできたなのか。
そう思うと、涙が溢れてくる。
辛い。
世界中を探し回ったとして、私程度の辛さを感じる人なんて、沢山いるというのはわかっている。
でも、誰か。
―私の気持ちを、辛さを、分かってほしい。
私は、私のことを慰めて、叱って、ときには一緒に笑い合えることのできるような人が、欲しい。
それは、ただ、切実な願い。
彼女は、誰にも愛されなかった。
故に、悲しみを分かち合えるような人を、心のどこかで求めていた。
そして彼女は、無意識の間に、ベランダから、転落した。
(あっ)
と思ったが、そのまま落ちて、深い眠りについてしまった。
この人生で、何も成し遂げることが出来なかったことを悔やみながら。
そして、彼女の家族や、彼女を知る者は、
―誰一人として、彼女の死を悲しまなかった。
彼女が死んでしまっても、何も変わらなかった。
彼女の死後、この事は、皆、忘れてしまった。
思い出したとしても、
「あぁ、そういやそんなやついたな。」
くらいのことで。
そして彼女は、死後の世界へと
…は、旅立たなかった。
『転生』というやつである。