第十七話
うーん。どうしよう?
今、私は良い子ちゃんの顔を張り付けて生活している。割と苦労している。
だって、礼儀作法とか、マナーとか、前世ではなかなか体験することもないようなことだし。
でも、そろそろいいかな?というわけで…
「母さん、俺、研究とかやりたい。」
「え!?」
「世界は広いんだよ、母さん。俺、もっとそういうことを知りたいんだ。」
「いやあなた、それ以前に『母さん』とか『俺』とか言わなかっ…」
「そういえば、そうだったかも知れないね!でも、家族なんだし。じゃあね!」
よし!
これで大丈夫!
~ side レティア ~
私の名前はレティア・サレプス。主人公の母である。
え?なんの主人公かって?
それは、私の前世まで遡る。
私は男であった。それもごくごく普通の男子高校生である。
私は男でありながら、いわゆる、『乙女ゲーム』というものが好きだった。
周囲から隠れながら、有名どころは全て、クリアしつくした。
一応いっておくが、女装の趣味はないから衣装とかで親にばれることはない。パッケージを見ても親は分からないだろうし、中身も見ない。紙を張り付けているしね。それも、強力なやつで。安心してくれ。
それで、私は高校から新作の乙女ゲーをプレイするのを楽しみにしながら帰っていると、上から人が落ちてきた。
そのままの意味である。そこから巻き込まれたのだろうか、私は目が覚めたら二十才ほどの女性になっていた。
程なくして気がついた。ここは、乙女ゲームの世界だ、と。
マニア向けの乙女ゲーム、『モナ・ムール』。意味は忘れたが、確かフランス語だったはずだ。
そして主人公は、男である。
え?乙女ゲーなのに?と思うだろう。しかしこれは本当に男なのである。
シェクリア・サレプスは、男の娘である。
男でありながら、男性を愛し、その美貌により見る人(男性)の心を奪わせる。ヒーローたちは、男。
ストーリーはこうだ。
高い身分に生まれながらも、男であるにも関わらず、男性を愛する主人公がヒーローたちとラブロマンスを繰り広げる。そういう話。最終的に結婚して養子を取り、孫もでき、主人公の周囲は幸せに亡くなる。
その中で、主人公たちの結婚を邪魔する立ち位置にいるのが主人公の母、レティア・サレプスである。
私は絶望したね。だって、普通にしててもこういうのはゲームの強制力によって死亡するって本で読んだことがある気がするんだ。
私は見えないゲームの強制力に怯えながらも、最愛の人と出会った。出会ってしまった。桜の木の下で金色の髪をなびかせながら凛々しく立つあの人に一目惚れしてしまった。
見合いの相手だったし、なにもしなくても出会っていただろうけど。自分は男だろうと言う葛藤がありながらも結婚して、子供を産み、育てた。
それでも私はここまで生きてこれた。ゲームの強制力とやらはないらしい。
それに気づいたとき、私はこれ以上にないくらいの安堵の溜め息をついたね。
でも、そのせいかは知らないけど、主人公である私の息子はゲームと違って良い子供だ。
いうこともちゃんと聞くし、しっかりしている。
と、昨日までの自分はそう思っていた。
何故だ?何処で育て方を間違えた?
私が廊下を歩いていると、リア(シェクリア)に、研究道具がほしいと言われた。
ついつい、いつもはない甘えにそばに控えていたメイドに用意するように伝え、あの子の部屋には私にはわからない道具がいくつか揃ってしまったが、何故だ?
屋敷内では、リアは実は研究馬鹿なのではないかという噂が広がっていた。誰よ、そんな噂を流した奴は。
でも、間違ってはいないのかもしれない。だって、そうでもなければいきなり研究道具が欲しいとか、いうわけがない。しかも、はじめてのおねだりだし。
可能性があるとしたら、あの子が転生者ということくらいかな。
そうでなければ突然、『研究道具が欲しい。』と、突拍子もなくいうわけがない。
これからあの子にどう接すれば良いのかしら?




