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所謂ある日突然に

多分また失踪しますね


みなさんは転生という言葉を聞いて何を思うだろうか


…うん、仏教用語的な意味ではなく所謂小説、ラノベの一ジャンルとしての話だ。


人によって色々答えは違うと思うが、脳みそ空っぽにして読める手軽さと爽快感を求める人が多く。

作品としてもそうした類のものが多いというのは確かである。


だが娯楽作品として存在するそれらについて色々とケチをつけたい人は「過程がないで力を得るとかクソ引きこもりニート野郎が考えそうなことですね^ ^」とかまぁそこそこの罵詈雑言を浴びせたり、場合によっては排除しようとかなり圧をかけてきたりする。


じゃぁ過程があればいいのかとか色々考えるがそうすればそうしたで「テンポが悪い」「スカッとしない」「圧倒的な蹂躙が見たかったのにちまちまやってて失望しました玄人のファンやめます」「ゲオれカス」などこれまた溢れんばかりの悪意がまろび出てくるわけだが…



「さて、どうしよう」

『サッサと夢と冒険のファンタジー世界へ行くのだ』



現実逃避



さて今ここは所謂真っ白の空間、神域だとか、魂の場所とか、真理の扉とかそういうアレである。


死因は確か交通事故、何を庇うわけでもなく交差点に突っ込んできたバカに轢かれたというだけだ。


見回すまでもなく目の前にいるのは神的なサムシング、もちろん心は読める。


「転生ですな」

『うむ』


見た目は杖をついた光の巨人、ウルトラな方々ではなく純粋な光が人形をとっているだけ、イメージ的にはゲーミング巨神○だ。



さて、さてさて、なんの因果か転生する機会を得てしまったわけだが問題がある。

それは目の前の紙切れだ。


捲るたびになるかさりという音といい少しざらついたような質感、内容は契約書じみた同意書である。


スマホアプリの長ったらしい規約のようなそれには大雑把に三つの事柄が書かれている。


1つ、転生者は記憶や経験を保持して転生する代わりに神々に娯楽を与えうる試練に直面する。最悪死亡するが見込みがあれば再転生する可能性もある。


2つ、転生者は2つ特典を付与されるが特典は今までの人生経験から生み出される。そのためどれだけ特典が弱くともそれは転生者の今までによるものでこちら側は寄与しないものである。


3つ、旅立つ世界の選択は不可能、元の世界への帰還も不可能である。


なんともまぁわかりやすいというか…いや、超常存在による転生という行為の理由がしっかりしているだけあって安心というか…正直言って意識や思考を持った生命体を前にこの契約をさせようというあたり悪魔染みている。


なにせ『我々のオモチャにならないなら自我奪っちゃいますよ〜』って事である。


自律思考を持つ生命体が死を恐れているのをわかってやっているというか、改めて目の前の存在やその背後にいる似たような存在が非人間であるのだと認識してしまった。


『言っておくが不自然に冷静なのはそういうふうにしているからだ。喚かれても消し飛ばしたくなるからな』


なるほど、やはり非人間だ。


『まぁそちらにも得はある。現に今まともに思考できるのもこちらの取り計らいなのだ。』

「お気遣い痛み入るな」


とりあえず魂の洗浄、もとい死を迎え入れられるほど人生に飽き飽きしていない俺は了承の意を伝えると次は5つほどの文字列と説明が現れた。


『それが特典、言っておくが…』

「物語として盛り上がりに欠ける能力はない、もしくはそうした人物はここに来れない、ですかね」


巨人は深く頷くと音もなく胡座を組んだ。


『それがわかっているなら良い、では時間をやろう』


ではお言葉に甘えて悩むとしよう。

ここまでお膳立てさせられているのだせっかくだし来世で少しでも楽に生きられるようなものが欲しい…そう思って目を向ける。


自己完結ぼっち

経験効率上昇いたみとけいけん

器用イラスト

早熟けっこん

苦痛耐性わかれ


あぁ〜なるほど?


『そう睨むな、お前の人生における経験だ。こちらとしても凡庸な人生を視るのはつまらないのだ。』


うっかり睨んでしまったようだ。

しかしまぁうまくできている。人生を変えるような転換点や、自身が努力した事、そしてトラウマ、経験を力にとはまさにこれだろう。


「『苦痛耐性』と『経験効率上昇』を」

『ふむ…まぁわかりやすいいわゆる【努力型】だな』

「面白味が足りなかったか?」


わかりやすいと言った割に愉快そうな巨人は俺の皮肉に笑みを浮かべた。表情がないので気がするだけかもしれないがそんな気配がする。


『いや、今までは分かりやすくクズを送り込んでいたのでな、どいつもこいつも碌な経験がなかった。そういう意味ではお前のような凡人の方が良いのだと確認できた。』


まるっきりモルモット扱いである。


『まぁ、クズどもがどうにかして成り上がろうと足掻く様も面白いがやはりどいつもこいつも短命でな、長く楽しめそうで安心している。』

「光栄でございますねぇ」

『ッフ、そういうな、少しだけサービスしてやろう』


そういうと俺に文字列を三つ押し込んだ。


『では、また会おう【アガサ タツミ】貴様の幸運と試練に幸多からんことを』

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