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電気オタクと錬金術  作者: 御手洗 千加志
三章
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3-6 収束と終息


よじ登ったワイヤーロープの真下に殺到した採掘夫たちは山のように積み重なり、僕は彼らを制圧することに成功したようだった。


「"コネクト"とか言ってたな。」


しがみついていたワイヤーロープから滑り降りながら僕は訊ねた。


『てめえ・・・』


「どうせ訊いてもまともに答えてくれそうにないし、僕が説明してみせようか?どういう仕組みかわからないけど生き物を自由に操れるんだろ?でも単純な命令しか出せない。そして僕はどういうわけかその"コネクト"の状態を解除できる、違うか?」


『てめえのその力は一体なんなんだ?!答えろ!!』


「ターニャに合成獣を使役させていたのもそのコネクトとかいう技術なんだろ?」


『ターニャ・・・?ターニャと言ったか?!!てめえ会ったのか?あの実験動物に!!』


「ターニャは実験動物なんかじゃない!ていうかお前も会っただろ、ついさっき。」


『はァ・・・?ケヒャハハハ!!まさかあのフードの女か?ケッサクなこともあったもんだなァ!!』


このルキオという男、ターニャの存在を知っている。

しかし、ターニャがポンチョのフードを被っていたからか気づかなかったようだ。

ターニャ自身がさっき事務所でこの男の正体を見破れなかったことを考えると、一方的に知られているだけみたいだが。


僕もこの男に自分の力のことを明かす気はないし、このままお互いに質問返しを続けていても埒が明かない。


「確信したよ。お前は間違いなくフューラーとかいう女に関係している。」


僕の言葉を聞いた途端、ルキオはニヤニヤ笑いをやめた。


『・・・・殺す。てめえはここで殺す。』


「それはぜひ考え直してほしいね。言っておくけれど今度は僕ひとりじゃないからな。」


そう言って僕はさきほどトロッコのレールを使って感電させた採掘夫たちの方を顎で指した。

地に伏していた採掘夫の何人かはやっと意識を取り戻し、立ち上がろうとしているところだった。


『チッ。てめえは絶対殺す。ほかの三人も殺す。あの方の邪魔をする奴は全員殺す。でも今だけは生かしておいてやるよ。』


ルキオはそう凄むと採掘場の鉄柵の外に走ってきた馬にまたがり、どこかへ走り去ってしまった。








僕は腰が抜けてその場にどすんと尻もちをついた。


「はぁ・・・はぁっ・・・危なかった。もう、エナが・・・っ。」


僕はひとつの博打を打っていた。

ルキオがうっかり口を滑らせた"コネクト"という生き物を操る力は本当に得体が知れない。

そこで僕は仮説を立てた。

ルキオの態度を見るに、フューラーという女は彼を使役する立場にあることは自明だ。

そして、フューラーはターニャにも同じ力を与えたことを鑑みると、その力はフューラーだけが行使できるものではないかと推定した。

現在のターニャにそんな力が残っていない以上、もしかしたらルキオも自分自身の意志では使えない力なのではないかということだ。

もし、彼自身がその"コネクト"という力を使えるのなら全てご破算だ。

さっきやり過ごした屈強な採掘夫がまた僕を追い詰めるだろうし、そうなればひとたまりもない。

しかし彼自身が生き物を操る力を持つのだとしたら、わざわざ採掘夫を使って僕を襲わせたことの説明がつかない。

僕自身を操って自害でもさせればいいことだからだ。

そして、案の定、彼は引き上げていった。

ルキオのとった行動自体が僕の仮説を立証するのに十分なものに思えた。







『ケイ!!』


かすむ視界の中で、三人の女の子がこちらへ走ってくる姿が見えた。


「よかった、無事でいてくれたんだな。」


『よかったぁ・・・生きてる・・・!』


アルメルは僕の手を握りながらその場に座り込んだ。


『これは・・・いったい何が起きているんですか?』

クロメルはそこらじゅうに倒れている採掘夫の姿を見ながら言った。


「詳しいことは後で説明するよ、いろいろと分かったことがある。君たちの方は危険な目に合わなかったか?」


『案内役の二人がいきなり襲い掛かってきて・・・でもターニャが守ってくれたの!』


「そうか、ありがとうなターニャ。」


『べ、べつに当然のことをしただけにゃ・・・お前こそ大丈夫かにゃ?』


「なんとか・・・ね。」




採掘場で気を失っていた採掘夫たちは続々と目を覚まし、あたりはざわざわと騒がしくなっていた。

自らが置かれている状況が理解できないのだから無理からぬことだ。

どうやら僕の動電術はルキオの言うコネクトを無効化することが出来るらしいことには先ほどから気が付いていたし、鱗犬を怯ませるために使った程度でもいいのならここの採掘夫を助けられるかもしれないと考え、かなり小さく出力を絞って使用していたことが功を奏していた。

僕たち四人は困惑する採掘夫を集めて、洗脳状態にあったことだけを説明した。

ほどなくして、ルイスも現場に到着し彼らは保護され、錬金術省の職員数人に率いられて行った。



『ケイくん、いったい何があったのか説明できるかい?』


「ここは人目につく。むこうへ行こう。」


だいぶ身体に力が戻ってきた僕は、調査が途中だった事務所周辺の建屋へ歩いて向かいながら採掘場で起きたことや、僕の力のことをルイスや他の三人を含めて話した。


僕が動電術を使用できること。

ルキオはフューラーと関わりがある人間と思われること。

ターニャの存在を知っていたこと。

コネクトと呼ばれる力で採掘夫を操っていたこと。

そして、その洗脳状態を僕が解除できること。



『にわかには信じがたいな・・・人が人を操るなんて。』

ルイスは顎に手を当てながら呟いた。


『わたしはあんにゃやつ見たことにゃいけどにゃぁ?』


「彼も事務所で顔を合わせた時に気づけなかったようだし、誰かから聞き及んでいるだけじゃないのかな?だからこそルキオはフューラーと関係性があると確信したんだ。」


『ターニャが合成獣を使役できたというのもその力のせいなのでしょうか?』


「僕はそう考えているよ。」


『でも言っちゃってよかったの?ケイの動電術のこと。』


「仕方ないよ、さすがにこの事件は(おおやけ)になる。真実が世間に伝わることはないと思うけど、すくなくとも今回の話の帰結として錬金術省には僕の力のことを明かさざるを得ないと思うんだ。」


『最初会った時から何かあるとは思っていたけれど、まさか君にそんな力がね・・・』


「あのいけ好かない大臣に謁見した時は、実験体にされるとか脅かされていたから隠さざるを得なかったんだ。」


『もうその心配もないでしょう。この一件はケイの動電術がなくては解決できるものではありませんでした。色々と聴き取りはあると思いますが、錬金術省にとっても必要不可欠な力のはずです。』


「そうだといいな。」



僕たちが片足を突っ込んでしまった事件は一旦"収束"の様相を呈したが、それは決して"終息"を意味するわけではないことを誰もが予感していた。

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