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電気オタクと錬金術  作者: 御手洗 千加志
三章
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3-3 狗頭羊肉


僕達五人は《鉄鉱石を不正に横流しする者がいる》という一点に焦点を移し替えて、再び調査をおこなうことになった。

調査担当区分は、僕とアルメル、ターニャとクロメルの二班にわけて聞き込み調査を、ルイスは法人関係書類上の不審点などの洗い出しという布陣だ。






─────西エヴァン─────



『~~♪』


「なんだよ、鼻歌なんて歌っちゃって。」


『んー?昨日の晩御飯美味しかったなぁって。』


「まだ言ってるのか。」


昨日僕とアルメルが作った夕食をみんな美味しいと言って食べてくれたのだが、それは奇跡かもしれなかった。


三ヶ月前にアドル邸で彼女が僕達に作ってくれた料理は美味しいと言い切るのは難しいクオリティだった。

ターニャなどはハッキリと『不味い』と言ってしまっていたし、落ち込んだアルメルを励ますのに大変苦労したことを覚えている。

昨晩はその芳しくない味の料理はどうやって作られたのかという興味もあって相棒を名乗り出たのだ。

その結果判明したのは、この子はシンプルな味付けでいい所を、隠し味と言って後から色々と余計なものを足してしまうタイプだということだった。

昨日は『コクが足りないかもっ』と言いながらムニエルにヤギのミルクをぶっかけようとしていた。




『それにさ、今日から、、、ふふふ。やっぱりなんでもなーいっ!』


アルメルは隣を歩く僕の顔を見上げながらにっこり笑った。


「はあ?おかしなやつだな。」


『さ、お仕事お仕事!しっかり頼みますよ、助手のシオタくん。』










─────東エヴァン─────



『いいですか、ターニャ。鉄が秘密裏に横流しされているということは・・・』


『横(にゃが)しってにゃんにゃ?』


『横流しというのは正規の手続きを踏まずに流通させることを言います。今回の場合だと税金を払わずに鉄を売っている誰かがいるというわけです。』


『にゃるほど。』


『特別な方法でどこかに運び出したか、あるいはどこか秘密の場所に溜め込んでいるかもしれません。』


『わたしたちはそれを聞き込みしにゃがら探すってことでいいのかにゃ?』


『その通りです、ターニャ。よく理解出来ていて偉いですよ。』


クロメルは自分より背の高いターニャの頭を撫でると、ターニャは気持ちよさそうにぎゅっと両目を瞑った。








ルイスは単独で色々な公的機関に出向き、そこに提出された書類の数々を錬金術省特権で閲覧して調査にあたっていた。

僕達四人は互いに情報を共有し合い、なし崩しに調査を行っていたが、一週間あまり経過した今も有益な情報は出てきていなかった。





『何か収穫はあったかい?』

ルイスは疲れきった顔で僕らに訊ねた。


『今日もだめ~!』


『こちらもです・・・』


『僕の方も怪しい動きをしている採掘会社がないか探してみたんだけれど、別のものしか見つからなくてねぇ・・・』


「別のもの?」


『全然今回の件とは関係ないんだけど、労働関係法令違反をしている企業がいくつか見つかってね。監督署に報告しておいたよ。』


「ははは!そりゃ事業主にしてみれば迷惑な話だな!」


どうやら、どこの世界でも労働者の立場は弱いらしい。


『ちょっといいかにゃ?』


『なんだい、ターニャ。』


『鉄以外のものには税金はかかってにゃいのか?』


『鉄を含めた金属類は流通させる際に希少価値に応じた税がかけられているけど、他のものは特に無いはずだよ。』


『じゃあ錬金術で石ころにして、汽車で運んじゃえばいいにゃ!』


『ターニャ、錬金術はそんなに万能ではないのです。形を自由に変えられたりはしますが、全く違う物質に変化させることは出来ません。』

クロメルは冷静な口調で指摘した。


『そうにゃのかぁ。じゃあだめだにゃぁ・・・』


『待てよ・・・()()()()()()()()、か!ありがとうターニャ。もしかしたら君は今、大変な活躍をしたかもしれないよ!』


ルイスは興奮気味にそう言うと、外に飛び出していった。


「な、なんだあ?」


『なにか閃いたのかもしれませんね。』




僕達は彼の帰りを待ったが結局、その日のうちにルイスが戻ることは無かった。

彼が戻ってきたのは一夜明けて翌日の昼過ぎのことだ。

そして戻るなり彼は『聞いてほしい』と切り出したのだった。



『ターニャ、やっぱり君はお手柄だったよ。』


ルイスは両目をしばたきながらターニャを称えた。

恐らく眠っていないのだろう。


『にゃんでにゃ?』


『最初から話そう。まず、僕は税を納めずに横流しされた大量の鉄はどこへ行ったのかと考えたんだ。するとやはりどこかの採掘会社が隠し持っているか、何か特別なルートを使ってこの都市の外へ運び出されたか、という考えにたどり着いた。』


『ええ。私もそこまでは考えていました。』


『エヴァン都市内に地下道があるとか、採掘会社が巨大な秘密倉庫を持っているとか、そんなことを思いながら調査していたから全く気が回らなかったんだけども、これを見てほしい。』


ルイスは鞄からヒラリと数枚の紙を取り出してテーブルに広げた。


『これはとある石材店が鉄道会社の貨物列車に石材の輸送を依頼した履歴なんだ。』


そこには日付、内容物、重量、大きさなどが詳しく記載されていて、かなり高頻度に輸送を依頼している印象を受けた。


「これの何がおかしいんだ?」


『この石材店はものすごく小さな会社で、従業員も二名。これだけの高頻度で鉄道会社に輸送を依頼するほどの取引ができるとは思えないんだ。人員的にも経済的にもね。』


『つまりどういうこと?』


『この石材店は表向きは単体の会社だけどその実、ある採掘会社と癒着(ゆちゃく)があることがわかったんだ。つまり、このあたりで結論を明かしておくと"この石材店を利用して鉄を不正に横流ししている採掘会社があるんじゃないか"ということさ。』


「その小さな石材店を隠れ(みの)にエヴァンから不正に鉄を運び出していたわけか。」


『うん、その解釈で間違っていないよ。』

ルイスは落ち着いた様子で僕を肯定した。


「でも石材店だろうが採掘会社だろうが鉄を秘密裏に運び出すこと自体が難しいってことは、かわらないんじゃないのか?」


『それがそうでもないんだ。ここからがターニャのお手柄なところなんだけれど、彼らは恐らく()()()()()()()()()運び出している。』


『ちょっとまってください。昨日もいいましたが、そんなことは出来るはずが・・・』

クロメルは少々前のめりにそう反論した。


『僕も当然、貨物列車で鉄が輸送された記録なんかは真っ先に確認していたんだけど、特に怪しいところはなかった。そもそも貨物列車で金属資源を輸送する際には、税を払った資源かどうかを検閲する工程がある。そこで課税済みの証明が取れないと貨物列車に載せられないことになるわけだ。でも、検閲は金属資源に対してだけ。もしその鉄が仮に、見た目と触り心地と重量が石ころと同じだったらどうなると思う?』


『そんにゃのって、はっきり言って鉄じゃにゃくてただの石ころにゃんじゃにゃいのか?』


『その通りだよ、それを知らない人間にとってはね。誰も思わないさ。ただの石ころを見て、錬金術を使って鉄の表面を石材で覆ってそっくりに加工しているかもしれないなんてね。』



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