師との会話
「ところで師匠、あの2人はどうしたらいいんでしょう?」
相変わらず膝の上に居座る師匠に尋ねる。
「ほっとけばいい…と言いたいところじゃが、また余計なことされてもうざいしのぉ。そもそも何でこいつらはあんな事したか、お前心当たりあるのか?」
「まぁ、直接的な原因はひと月前くらいにギルドで揉めた事だと思うんですけど、そもそも何でアンクがそこまで俺に突っかかってくるのかはわからないですね。師匠が相手したあっちの男はルーナの…主人……とは違うのかな?詳しいことはわかんないですけど、ルーナを捜索する依頼をギルドに出してたらしいです。そこで妙な利害の一致が起きたって感じですかね?」
「つまりお前もよくわかってないってことじゃな…」
「そういうことですね」
確かに思い返してみると俺が把握出来ている事実はそう多くないようだ。
「あのルーナとかいうイチノミヤ混じりは奴隷だったみたいじゃの。全く、お前も物好きじゃなぁ?」
「い、いや、そういうんじゃないですよ…。ルーナは自力で逃げ出したんです。そこをたまたま俺が助けたというか助けられたというか」
「ふむ、まぁ、儂は面倒なことを考えるのは嫌いじゃ。お前の好きにしたらよいわ」
「うーん、そう言われてもですね…」
この世界にも警察みたいな組織はあるのだろうか?
しかし困ったことに誘拐の物的証拠は存在してないのである。
むしろこっちがかなり加害者じみている気がしないでもない。
「で、お前自身はどうするんじゃ?お前は日本とかなんとかいう異世界からエアートスを救うために来たんじゃろ?」
「あれ!?なんで師匠がそれを!?!?」
「お前がシャーロットと話しているのをたまたま聞いての。面白そうじゃと思ったんじゃ。だからお前を弟子にした」
「面白そうって…。ってか立ち聞きしないでくださいよ!」
「何を言う。言ったじゃろ、たまたまじゃ」
俺の素性を隠すことにどこまでの意味があるか今のところよくわからないが、救世の巫女に選ばれし者なんていう大層な肩書き、バラしてもろくな事にならなそうだ。
まぁ、師匠なら問題ないと思うけど。
「どうする…って言われても、今のところ何したらいいかあんまわかってないんですよね。とりあえずは鳴神っていう救世の巫女を探そうかなって思ってますけど、当てもないんで、とりあえずイチノミヤに行こうかと」
「イチノミヤ…か。まぁ、お前の話によるとナルカミとやらはイチノミヤ人らしいの。妥当か」
「あれ?そういえば師匠、俺になんか手伝って欲しいみたいなこと言ってませんでしたっけ?」
「言ったの。言ったが、それは今は気にせんでもいい。事情が変わったようじゃしの」
「はぁ…。そうですか」
「当面はイチノミヤを目指しながらお前に修行をつけてやろう。お前の加護は教えやすいしの」
「そういえば使えるようになったんでしたっけ…」
机の上に置いてある真っ白の刀に目をやる。
そう、必死だったため、実感がわかないが、どうやら俺は加護を使えるようになったらしい。
刀…か。
まだ加護の詳細はわからないが、戦闘経験ゼロの俺にとっては少し扱いづらそうというのが正直な感想だ。
しかし師匠の得物もどうやら刀のようなので、丁度いい。
「お前はこと戦いにおいては素人といいとこじゃしのぉ、教えがいがあるわ」
そりゃそうだ…。
師匠、現代日本の高校生は大抵が戦いとは無縁だよ…。
「師匠の加護ってどんなのなんですか?」
ふと気になって聞いてみる。
「1回見せてやったじゃろ?当ててみろ」
見せてもらった…?
刀に関する加護なんだと思ってたけど…。
無手の状態からいきなり刀を出したし、考えられるのはいつでも自分の刀を出し入れできるとか、あるいは穿った見方をして―
「物の大きさを自在に操れる…みたいな?」
師匠が俺の顔を見上げて目をぱちくりさせた。
この反応は外れかなぁ…?
「なんでそう思ったんじゃ?」
「あー、えっと…刀をいきなり出したようにみえましたし……あとはそんな感じの加護なら師匠の見た目の説明も多少はつくのかと」
「ほぇー、なるほどのぉ…」
「合ってます?」
「いや、全然違うが」
「えぇー…」
違うんかい!
なんかちょっと合ってそうな雰囲気醸し出した癖に!!
「いやいや、感心したんじゃよ?儂は。よくそんな事考えついたのぉ。また撫でてやろうか?」
師匠は俺の顔を見上げたままにやにやとし、頭をぐりぐりと押し付けてくる。
「い、いや!いいですから!!正解教えてくださいよ」
師匠には困ったものだ…。
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