決着
遅れて申し訳ございません…
柄にもなく雄叫びをあげながら、アンクに向かって走る。
時折見えるゆっくりになった世界がまた見え始めた。
アンクとの距離は残り3m程。
あと1歩か2歩踏み込めば届く距離だ。
アンクは跳び上がり、宙を蹴った。
急に距離がつまるが……予測通り。
その動作は嫌という程見せてもらった!!
「うぉぉぉぉらぁぁああ!!」
アンクの動きに合わせて体を反らせる。
そのまま反動を使い、不格好だが、バットを振るように思いっきり、アンクの腹部に向けて刀を振り抜く。
「なにぃ!!ぐぁぁぁああ!!!!」
両手に確かな手応えを感じ、同時に皮膚の焦げた臭いが辺りに充満した。
嫌な感触と臭いだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
今にも倒れそうなほどの疲労感だが、まだ倒れる訳には…。
「き、貴様ぁ…!これで終わりだと…思うな……よ…」
アンクは膝から崩れ落ちそのまま床へと倒れ込む。
「そのセリフは……まぁいいや…」
倒れたのを見届けた後、咄嗟に投げ捨ててしまっていた鞘を拾い、納刀する。
すると同時に俺や刀身が纏っていた炎が消えた。
体から生命力とやらが放出されるのは止まったのだろうが、如何せん殴られ蹴られ、ボロボロだ。
安心もあり、自分の意思とは関係なく仰向けに倒れた。
「や、やった…。何とかなった……」
「ナギ、お前、切りつける瞬間刃を返して峰で打ちおったな?とんだ甘ちゃんじゃの。向こうはお前を殺す気満々だったぞ?」
師匠がいつの間にか近くまで歩いてきていた。
「か、勘弁してくださいよ…。人殺しになんてなりたくないですし……。そもそも俺はまともに喧嘩すらしたことないんですから」
「ま、儂のアドバイスはちゃんと守ったようじゃし?今回は見逃してやるとするかの。…よくやったな」
見た目では10歳は歳下のはずの女の子に頭を撫でられる。
「は、ははは…」
複雑な気持ちだ…。
「2人は…?」
「安心せえ。気を失っておるようじゃが、大事はないようじゃ」
「ありがとうございました…。師匠は……何ともないみたいですね」
「当たり前じゃろ。儂を誰だと思うとる!」
「あはは…。でも…無事でよかったです。ルーナもサリアちゃんも。もちろん師匠も」
「ふはは!!そう言うお前がいちばん無事じゃなさそうじゃのぉ」
「そうみたいです…。もう指1本…動きま…せ……ん…」
「ゆっくり休むが良いわ」
もう一度師匠に撫でられる感触を感じた直後、俺は意識を手放した。
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「あっ!!ナギさん!おはようございます!!!」
「ナギ!!!」
「んぁ…?あ、2人とも…おはよ……うぐぅっ!?」
どうやら俺は、孤児院の医務室のベットの上で目を覚ましたようだ。
起きた瞬間にルーナとサリアちゃんがベットに飛び込んできて、アンクから受けた傷が死ぬほど痛んだ。
しかし2人の無事な姿を見て、そんなことどうでも良くなった。
「ふぅ……2人とも、無事で本当によかった」
無理矢理にでも上体を起こし、笑顔を浮かべてみせる。
「………ナギさん!ナギさん…!!うわぁぁん!!!」
「ナギィ……うぐっ…うわぁぁん!!!」
「ちょっ、2人ともそんな泣かないでよ!もう大丈夫だから!!」
2人は堰を切ったように泣き出し、大粒の涙と鼻水を俺の服に擦り付けながら、右からはルーナ、左からはサリアちゃんが抱きついてくる。
「女子を2人も泣かせよって。罪な男じゃのぉ」
「やめてくださいよ…人聞き悪いなぁ……」
声のした方を見ると、師匠が面白がるように、にやにやと笑みを浮かべている。
平常運転の師匠には、もはや安心感を感じる。
「すみません、師匠。俺が気を失った後はどうなったんですか?」
「全く、お前がだらしないから大変じゃった。どうなったか聞きたいか?聞きたいよなぁ?」
「は、はい」
何だろう…。
ものすごい圧を感じる…。
実際師匠はじりじりとこちらに歩み寄ってきて、遂には唯一空いている俺の膝の上に登ってきた。
「ちょ、師匠!?近い!近いです!!」
師匠は対面で向かい合うように座り、キスしてしまいそうなくらいぐっと顔を近づけてくる。
正面から間近にみると、幼いながらもその整った顔立ちに、ドキッとしてしまい、思わず顔を背けた。
恐らく相当大変だったのだろう。
これはその意趣返しというわけか…!?
師匠のその行動にルーナもサリアちゃんもぽかんとしている。
そのままの体制で師匠は続ける。
「では聞かせてやろう。あの後はな…?」
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