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救世の巫女  作者: うみ。
第1章 別れ、転移、そして出会い
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アンク=グレン

本日2話目です。

「おい、あんちゃんよ、あのエスタンドほんとに来るんだろうな」



がっちりとした体格の大男が赤髪の青年に声をかける。



「あぁ、間違いなく奴は来るだろう。俺はこの1ヶ月間奴をずっと見てたからな。旦那も奴には借りがあるんだろ?もうちょっと大人しく待っとけよ」


「ふんっ。まぁ、いいだろう。どちらにせようちの商品はもどってきたんだからな」



明かりのない暗い部屋の中、2人の男が佇んでいた。


部屋の隅には気を失った、黒髪の少女と金髪の少女が縛られ、寝かされている。


赤髪の冒険者はどっかりと椅子に座り、じっと待つ。


その様子は一見冷静にも見えるが、その内面は激しい怒りで染まっている。



「早く来い!エスタンドォ!!!」




_______________________





師匠に言われた通り、先に協会の外に出た。


シスターはかなり消耗しているようなので教会に残ってもらい、ルーナとサリアちゃんを助けに行くのは俺と師匠のツーマンセルだ。


月はかなり高い位置にある。


おそらく深夜1時くらいだろうか。


のこのこと敵の待ち構えている所へ行くのは得策とは思えないが、仕方ない。


武器のひとつでも欲しいところだが、この教会に手頃そうなものがなかったので、非常に頼りないがその辺にあった木の棒を一応拾っておいた。



「待たせたの、ナギ。……お前そんな棒きれ持ってってどうするつもりなんじゃ…」


「い、いや、俺だってこんなんでどうにかなるとは思ってないですよ…。ないよりマシかなぁって…。って、師匠も何も持ってないじゃないですか。大丈夫なんですか?もう1本拾ってきましょうか?」


「いらんわ!まぁ、儂に任せとけ」


「頼りにしてます。師匠」


「うむ。大船に乗ったつもりでいろ!」



師匠はがっはっはっと女の子としてどうなのかと言った感じで笑う。


頼りがこんな幼女で本当に大丈夫なのだろうか…。


今更になってとても不安になってきた。



「では行くかの。少し急ぐとするか。着いてこい!!」


「はい!!」



そう言って師匠は走り出す。


俺もその後を追うが、その体躯に似つかわしくないスピードに驚く。



「ちょっ、待って師匠!!早っ!!」


「なんじゃ、おっそいのぉ。おぶってやろうか?」


「い、いや…それは流石に…」



本当に何者なんだこの幼女は…。



速度を俺に合わせてもらい、街の北側へ向かう。


時間が時間なだけに、人通りもほとんどなく、スムーズにそれらしき屋敷までたどり着いた。



「ふむ。ここじゃな?さて、行くか。……おい、ナギよ。お前まずは体力を付けるところから始めんといけないのぉ」


「い、いや……し、師匠。こんだけ走って…息も切れてない方が…異常……です」



俺は激しく息切れし、喋るのも苦しいくらいだと言うのに、師匠は涼しい顔をしている。


何とか息を整え、屋敷に目をやる。



「ここにルーナとサリアちゃんがいるんですかね?」


「さぁの?行ってみればわかるじゃろ」


「ちょ、師匠!そんな無防備に行って大丈夫なんですか!?何かこう、裏口探すとかあるんじゃ…」


「そんなまどろっこしいことしてられるか。いいからさっさと着いてこい!」



男らしい…。


幼女なのに……。



俺に構わず突き進む師匠に従って俺も屋敷に入っていった。



屋敷の中は明かりが一つもない。


その上廊下は軋むし、ちょっとしたホラーだ。


俺はそういうのは別に平気な方なのでなんて事ないが。



「止まれ!この先の部屋に気配がある」



師匠に言われ、ゴクリと生唾を飲み込み、息を殺す。



「待ってたぜ、入ってこいよ」



突然扉の向こうから声がする。


この声はあの赤髪の声だ。



「お呼びじゃぞ」


「わかってますよ」



木の枝を握り直し、覚悟を決めて扉を開ける。



「よぉ、久しぶりだな。ナギ」



随分と親しげに声をかけてくるもんだ。


俺からすれば一方的に絡まれた思い出しかない。



「ルーナとサリアちゃんは無事なのか?」


「さぁな、そっちは旦那のとこにいるよ。上の階だ。お前さえ来てくれればそっちはどうだっていい」



こちらとしてはむしろお前に用はないのだが…。


そういう訳にもいかないか…。



「師匠、こいつは俺に用があるみたいですんで、ルーナとサリアちゃんの方はお任せしてもいいですか?」


「ふむ、それはいいのじゃが、お前は大丈夫なのか?」


「いえ…出来れば速攻助けに戻ってきてもらえると助かります」


「ふははっ!潔いやつじゃな!良かろう。とりあえず小娘達は儂に任せろ」


「お願いします」



俺は赤髪に逃がして貰えそうにもないので、ルーナとサリアちゃんは師匠に任せることにする。


師匠の実力は未知数だが、只者ではないことは道中十分にわかった。俺が行くより安心できるだろう。



「話はすんだか?そこのガキには用はない。さっさと行け」


「うちの師匠をあんまり刺激しないでくれ」



多分だがその言葉は地雷だ。


現に子供がしちゃいけないような形相で赤髪を睨んでいる。



「し、師匠、ここは堪えて…」


「ふん!後で覚えとけよ小僧」



悪態をつきながらも師匠は部屋を出てルーナとサリアちゃんの救出に向かってくれた。


…弟子というのも楽じゃないらしい。



「ナギ、やっとお前とゆっくり話が出来るな。俺はアンク=グレンだ。ギルドで会ったから知ってるだろうが、冒険者をしている」


「これはどうもご丁寧に。俺は水彩…ナギ=スイサイだ。って言ってもそっちはご存知のようだけど」


「あぁ、知ってるよ」



アンクは嬉しそうに笑う。


はっきり言って不気味だ。



「アンク、どうしてこんなことをした?」


「くっ、くくっ、どうしてだと?俺は依頼をこなしただけだぜ?脱走した奴隷を捕まえてくれっていうな」


「なっ!?ってことは師匠の方にはあの男がいるってことか!!」


「あぁ、師匠だかなんだか知らねぇが、あのガキ…死ぬぜ?」



確かにあの男は恐ろしい。


吹っ飛ばされてた時のことは今でもはっきりと覚えている。


しかし何故だろう…。


師匠がどうにかなるって想像は全くできない。


あるいはしたくないだけか…。



「はっ!うちの師匠なめんなよ?」


「…ふん。どうでもいい事だ。俺にとってはな。俺はお前を憎んでいる。殺したいくらいな。それだけだ」


「殺されるほどの恨みを買った覚えはないんだけどな」


「覚えがない…だと…?」


「俺がお前に直接何かしたってことは無いだろ。むしろお前が勝手に突っかかってきただけだ」


「黙れ!!!貴様!あの後俺がギルドでどんな仕打ちを受けたか…!!!お前の訳分からない加護のせいで、俺はギルド中の笑い者だ!!信用も失った!!!」



自業自得じゃんか…。



「何か勘違いしているようだけど、俺に加護はないよ。それに…」


「うるさいうるさいうるさい!!!加護がないだと!?!?バカにするのも大概にしろぉぉぉおおお!!!!!」


「がっ!?!?!?」



アンクは前にギルドでやって見せたのと同じように、空中に跳び上がると、そのまま宙を蹴り、俺を思いっきり殴りつけた。


俺は壁まで吹き飛び、背中を強打する。



ぐっ…息がっ……!?



背中を強打したことで息ができない。


それだけではなく、口の中に鉄のような嫌な味が広がる。



アンクはゆっくりと歩み寄ってきて俺の胸ぐらを乱暴につかみあげた。



「どちらにせよ俺は…俺たちは!エスタントに恨みがあるんだよ!!」



瞬間、左頬に何度も鋭い痛みが走る。


頼みの木の枝も、案の定役に立つことなく、初めに殴り飛ばされた時に落としてしまった…。



「ぐはっ!!!」



何度も殴りつけられた後、再び壁へと投げつけられる。



くそっ!師匠はもうルーナとサリアちゃんを助けたのか!?



「なぁ、ナギ。わかったか?俺の怒りが…!憎しみが…!!」


「はぁ…はぁ…はぁ…。し…るかよ…。お前に…かまってやってる……暇はないん…だ。助けに…助けにいかないと……!」


「……助けに行くだと…?何を寝ぼけたことを言ってる?俺はお前を殺すと言っているんだ。あのガキ共もまとめて奴隷にしてやるよ!!」



アンクは再び跳び上がり、宙を蹴る。


咄嗟に両腕で体を庇うが、お構い無しに上から殴りつけられ、吹き飛んだ。


その勢いのまま扉を突き破り、廊下に転げ出る。




このままだと本当にまずい……。


どうする…!どうする……!?

読んでいただきありがとうございました!

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