ギルドマスター
今日2話目です。まだの方は1つ前からどうぞ!
「て、てめぇ!!!何しやがったっっ!!!!」
赤髪は再び大きく跳び上り―そのまま墜ちた。
当たり前だ。
物理法則に従えば、当然そうなるに決まっている。
しかし俺は先程、赤髪が跳び上がり、その後、俺の知っている物理法則では、到底ありえない動きをしたのをはっきりと見ている。
つまり、赤髪にとって、ジャンプし、そのまま落下するという、俺にとってごく当たり前の現象は、ありえない出来事だということだ。
実際俺も見ているし、赤髪の顔にはっきりと驚きの色が見える。
当然、俺は何もしていない。
というか、この状況において俺が出来ることは殆ど何も無い。
赤髪はその後も何回も跳び上がり、空を蹴るが、文字通り゛空を蹴っている゛だけだ。
「か、加護が使えない…!?どうしてだ!!?」
赤髪の顔は驚きの表情からだんだん焦りに変わっていく。
「お、お前……!お前のせいなのか…!?」
違う。
全然違う。
さっきから変わらず、何もしていないし、出来ない。
……バッタのようにその場でぴょんぴょん跳ねる赤髪を見ていると、なんだか少し…なんとなくだが…申し訳ない気もしてくる。
また幾度となく赤髪が跳ね―
「うるせぇぇぇえええ!!!!!!」
…心臓が止まるかと思った。
赤髪が跳ねるのを見ていると、唐突に鼓膜が破れるかと思うくらいの怒声がギルド内に響き渡る。
そしてカウンターの奥から床の軋む音がし、1人の男が現れた。
男は大きな傷が走り、髭がたっぷりとたくわえられた顔、茶髪に碧眼、ゆうに2mはありそうな巨躯に、丸太のような四肢。
見た目だけで只者ではないオーラを放っている。
「おい、アンク…。さっきから何がしゃんがしゃんとバカみてぇに跳ねてやがる…?バッタにでもなりてぇってか!?あぁん!?!?」
「マ、マスター…。違うんです!!ここに*****がっ…!それに……」
どうやらアンクというのが赤髪の名前らしい。
マスターと呼ばれた男は額に青筋をうかべ、赤髪を射殺さんばかりに睨みつけている。
明らかに赤髪は怯えている様子だった。
いや、まぁ、あれに睨まれちゃ、誰でもそうなるか…。
俺に向いていた周りの視線がそちらにそれたので、さっと外套のフードを被り直す。
あわよくばこの隙にギルドから出てしまいたいところなのだが…。
そんなことを考えていると、マスターが突然こちらに振り返る。
「おい!そこの*****!!お前らは何しにきやがった?」
「あっ!?えっっ!?日本語…!!?」
「うるせぇ、いいから用件を言え!」
「あっ、はい!冒険者になりたくて来ました!!」
マスターは見た目的には日本人ではないが、なんと日本語を話せるようで、日本語で話しかけてきた。
それもルーナ以上に聞き取りやすく、流暢ともいえる日本語でだ。
マスターは俺が冒険者になりに来た旨を伝えると、一瞬眉をひそめたが、ふんっと鼻を鳴らし、何かをギルド内に全体に響く大きな声で言った後、赤髪をもう一睨みし、カウンターの奥へと戻って行った。
「ルーナ、マスターさん、なんて言ってた?」
「え、えっと、次騒いだら殺す。だそうです…」
「それって、俺らのこと見逃してくれる?って事でいいのかな?」
「た、多分…そう……ですかね…?」
マスターが居なくなり、赤髪がこちらを物凄い形相で睨んでいるのを視界の端に捉えるが、どうやら襲いかかっては来ないようで安心した。
「とりあえず、冒険者登録しましょうか」
「そう…だね」
非常に居心地は悪いが、マスターの鶴の一声で、先程のようなことにはならなそうだ。
どうあれ、今夜の宿のためにも稼がなきゃいけない。
俺とルーナはカウンターで冒険者登録を済ませ、俺でも出来そうな薬草集めの依頼を受けてから、そそくさと冒険者ギルドを立ち去った。
読んでいただきありがとうございました!
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