赤髪の冒険者
本日2本投稿です。よろしくお願いします!
物々しく、もし俺1人だったら開けるのに1、2時間は迷いそうな扉を、ルーナは慣れたように軽々しく開ける。
「おぉ…!」
内装は決して豪華とはいえないが、雑多に歩いたり、テーブルに着いて談笑するごつい冒険者に、無数に依頼が張り出されたボード、仕事の出来そうな眼鏡をかけた受付嬢のいるカウンター。
その全てをもって、ここがまさに冒険者ギルドという出で立ちだ。
思わず感動してしまう。
そこら中から威勢のいい声が、そして笑い声が飛び交う。
「ナギさん、凄いですよね!ここが冒険者ギルドです!!」
「あぁ!!」
「冒険者になるにはあっちのカウンターで冒険者登録をしなきゃいけません!行きましょう!!」
「あっ、ちょっと待ってって!ルーナ!!」
また手を勢いよく引っ張られる。
その拍子に俺の外套のフードが脱げた。
瞬間―
騒がしかったギルド内が一気に静寂に包まれる。
冒険者達の威勢のいい声や笑い声は一瞬でなりを潜めた。
え?どうした?何かあったのか…?
俺はその不自然さに思わず周りをきょろきょろと見渡す。
周囲の視線は俺に集まっているようだ。
あ、あれぇ……。俺なんかしたぁ…!?
静かだった冒険者達がだんだんざわつき始める。
「*、**!!***!***……!」
赤髪の冒険者に分からない言葉で何か言われる。
あぁ…。よくわからんけど、これ、なんかやばいよなぁ…!?
尋常ならざる雰囲気を感じて、自然と踵を返し、入ってきたドアの方へ向かおうとするが、そちらは既に別の冒険者が立ち塞がっている。
やはり冒険者達はみな一様に俺を睨んでいるようだ。
嫌な汗がじんわりと滲む。
「ルーナ、通訳頼める?」
俺は小声でルーナに話しかけ、彼女は小さく頷く。
赤髪の冒険者が再び話しかけてくる。
「お前、その髪、瞳、*****人で間違いないな?」
内容、そして*****の発音、この世界の日本で間違いなさそうだ。
つまり
お前は日本人か?
そう問われているようだ。
「え、えぇ、そういうことに……なるんですかね…」
つい日本語で答えたが相手に伝わるはずないことに言ったあとで気づいた。
なので俺は黙ったまま頷いた。
その途端、赤髪の冒険者の目に明らかな憎しみが宿る。
俺が、普通に、、もし、普通に、これまで通り、現代社会で生きていたとしたら、おおよそ向けられることの無い量の負の感情。
汗の量が増え、滴り落ちるのを、体が強ばるのを感じる…!
「この****がっ…。お前らは!!こういうことされても!!!文句は言えねぇよなっ!!!!」
まただ…!
鳴神が飛び降りた時にも感じた、時間が何倍にも引き伸ばされたような感覚…。
その感覚でもって、俺は目の前の男が自分に飛びかかってくるのをはっきりと知覚する。
…っ!?!?
引き伸ばされた時間の中で俺ははっきりとありえないものを見る。
赤髪は大きく跳び上がった後、明らかに空を蹴り加速したのだ!!
見える景色は果てしなくゆっくりだが、同時に俺の動きも鈍重極まりなく、とても躱せそうにない…!
くっそ…!!
赤髪の振るう拳がもう目の前まで来た次の瞬間―
「ナギさんっ!!!」
ルーナが俺を押し倒し、間一髪その拳を躱す。
俺とルーナは床に激しく倒れ込んだが、赤髪も勢い余って奥のテーブルへと突っ込んでいった。
「…っ…はっはっはっ…!!」
あまりに唐突な出来事に呼吸もままならなかったため、通常の時間の流れに戻った瞬間、ずっと水中にいたかのような息苦しさに見舞われる。
ルーナが助けてくれたおかげで殴り飛ばされずには済んだようだ。
しかし状況が好転したわけではない。
赤髪はテーブルをぐちゃぐちゃにしながらも起き上がり再びこちらに向かおうとしている。
「てめぇ、避けてんじゃねぇよ」
「いや、避けるだろそりゃ…」
言葉は通じてないが、何となく言ってることはわかった気がしたので、同じく通じてないであろう言葉で返す。
「何度でもやってやるよ…!!!」
赤髪は叫ぶと、さっきと同様に大きく跳び上がり、空を蹴ると―。
そのまま元いた場所へと墜ちていった。
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