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ザ・キューテスト・ガール  作者: リュウ
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昨日のことが50年は昔のことに思えた。ユイは目を瞑ろうとしている。眠ってはダメだ、一度眠って時間的断続を超えると、今日は終わってしまう。ベタベタした喉の奥がカメレオンの食事のように煙を求めている。キョロキョロしてせわしない目の動きのように喉が細かに動いて、大声で叫び出す0.5秒前の筋肉収縮をせつなく行っている。暖房機の湿って暖かい空気がやっと凍え切った粘膜を完全に溶かした瞬間、赤ん坊のようにひとつの初めての感覚に気づいた。おそらくそれはユイも同じだったと思う。昨日ダウンタウンの先の大きな湖に近いビールバーで友達に連れられて来たユイと初めて目があった瞬間には何も感じなかったが、こんなことになるとは思わなかった。

それは、希望についての一つの事実だ。希望は想像と妄想から生まれるということ、つまりそれは夢だ。

夢を見ることが必要だった。将来レーシングドライバーになりたいとか、そんなことじゃなくてもいい。ひとつひとつ、小さい夢を見ることだ。そういった積み重ねだけが、希望を作り出す。いま感じたのは、かつてない焦りだった。夢を見ていないことに対して、焦った。それに気づいた瞬間、今すぐこの店を出てタバコを買わなければいけないと思った。地下鉄より早く速く走らないといけない、ダウンタウンのコンビニエンスストアはもう閉まっているだろうか。

「おい、走ろう。今なら足が扇風機みたいに回る気がする。走らなきゃダメだ、ユイ。タバコを買ってやる。いまから南まで行こう。」

「そうね。そうよ。私言ったわ。大事なことが大事であるのは、今日だけ。今の私たちにとってそれは、煙よ。」

オレはユイの手を握って、カウンターの足の高い椅子から立ち上がり、フロントドアを肩で開けた。

黒人の店員がオレたちの関係とか感情とか生活とかすべてを一瞬で理解して、優秀な教育者のような笑顔を顔面に張り付けた。それは「急げ」とも読み取れたし「焦るなよ」とも読み取れたが、よくできた子供を褒めるときの微笑みだった。こいつは神様の使いかもしれない。やわらかい雪の上にマシンガンみたいに足跡を打ち込みながら、南に向かって走り出した。ダウンタウンまで1時間はかかるだろうが、休みながらでも行くしかない。ユイの目はキラリと光って、その光線が道の輪郭を切り取り、物理的な方向性を示していた。身体の満腹感はもはや何の意味を持っていなかった。生理的な次元は今となっては、この15分間の進化の過程で捨ててしまったものだ。今ある空腹感は夢の器に入っている想像と妄想の量のせいだ。それはこれから、入れていけばいい。ハンバーガーを胃に流し込んで、コーラを飲んで、ポテトフライを食べるように。ピザを食べて、アイスコーヒーを飲んで、チキンをしゃぶるのだって一緒だ。理性的、あるいは社会的な空腹を今日から満たすことを決めた二人は、足を素早く回転させながら、雪を汚く色づけて、南へ向かっている。


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